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けが(外傷)
肋骨骨折
肋骨骨折(Rib fracture)とは
肋骨骨折は、骨粗しょう症がある人やアクティブな人々に発生しやすい骨折です。日本における鈍的胸部外傷の中で、約60%が肋骨骨折を伴い、その発生頻度は全外傷の中で10~20%とされ、非常に一般的な骨折です。骨粗しょう症では骨がもろくなるため、軽い咳、転倒、重いものを持ったりしただけで骨折が発生することがあります。
肋骨骨折の原因
原因は主に、「転倒時に胸部を机の角にぶつける」などの軽微な外力による胸部の鈍的外傷から生じることが多いです。また、交通事故や高所からの転落など、高エネルギー外傷によるケースも存在します。さらに、ゴルフのスイングのように体を捻る動作を繰り返す場合や、感冒後に咳が続く場合に発生する疲労骨折というパターンもあります。骨粗しょう症によって骨が弱ると、肋骨骨折のリスクが高くなります。
肋骨骨折の症状
深呼吸、せき、体を動かしたときに骨折部の強い痛みがあります。痛みのために寝返りが打てず、夜眠れないという症状が出ることもあります。
肋骨骨折の合併症
クリニックに徒歩で来院される方ではまず問題ないですが、交通事故で救急搬送された時など、以下のような重大な合併症がないかを調べる必要があります。
〇内臓損傷 :折れた肋骨が内臓を損傷したり、事故などの外傷に伴う臓器損傷を起こすことがあります。特に肺、肝臓、腎臓、脾臓の損傷がないかを確認する必要があります。
〇呼吸困難(肺の合併症) 疼痛のため、通常よりも浅い呼吸が持続した場合、肺炎を発症するリスクが高まるとされます。
〇気胸:胸膜が破れて肺がしぼむ病気。
二次救急病院における肋骨骨折の検討では、90例の肋骨骨折のうち、合併損傷を認めたのは83.3%であったと報告されています。特に多い合併損傷は気胸や血胸であり、胸部X線写真だけでは見逃されることがあるとも報告されています。怖い合併症としては、複数の肋骨が2箇所以上で骨折することで胸郭の不安定性が起き、吸気時に骨折部が陥凹し、呼気時に骨折部が突出する奇異呼吸を示すフレイルチェストがあります。
肋骨骨折の検査
肋骨骨折の診断に際して、X線検査が有効です。しかしX線写真では胸部CTで診断された肋骨骨折の約75%が見逃されているという報告もあります。明らかな骨折や見落としようのない合併症がないかを確認するために胸部X線写真を撮影することは奨励されますが、それだけで肋骨骨折の有無を正確に判断するのは困難でしょう。
それに対して、CT検査は感度・特異度がほぼ100%であり、ゴールドスタンダードとされています。しかし、転位のほぼない1本の肋骨骨折だけがCT検査で診断された場合、臨床的に重要な結果ではないことが多く、治療方針も大きく変わらないため、必ずしもCT検査が必要なわけではありません。
肋骨骨折の診断において、超音波検査は感度も特異度も高く有効な検査です。
肋骨骨折の治療
安静にして、深呼吸や咳を避けます。また胸郭を安定させるために肋骨固定バンド(リブバンド)を使用します。 痛みに応じて鎮痛薬を処方します。肋骨骨折は通常2~4週間で疼痛が改善し、日常生活への支障がなくなってきます。骨折部が癒合するまでには3か月程度必要ですが、その間ずっと安静を取り続ける必要はありません。治療期間は個人差が大きく、骨折のしかたによっても変わります。
肋骨骨折はほとんどが上記のような保存加療で治癒します。ごくまれに多発骨折、転位の大きな骨折、内臓損傷を合併する場合では、手術が必要となることがあります
参考文献)
・専門医の整形外科外来診療
先生から一言
肋骨骨折は外来でも最も頻度の多い骨折の一つです。けがで起こることが多いですが、骨粗しょう症を基盤として軽微な外傷や咳のみで骨折することもあります。その場合は、骨粗しょう症そのものに対する治療を継続することがカギとなります。また肋骨骨折のあとに、呼吸が苦し
くなったり、胸が痛くなったりするようなら、危険な合併症が起こっている可能性があるのですぐに再診するようにしてください。