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首の痛み
寝違え(急性疼痛性頚部拘縮)
寝違え(ねちがえ)とは
医学的には「急性疼痛性頚部拘縮」を指し、起床直後など同一姿勢のあとに急に生じる頚部痛と可動域制限を特徴とします。むち打ち損傷(頚椎捻挫)とは病態が異なり、寝起きに「首が回らない」「痛くて動かせない」といった症状が典型です。明らかな外傷は伴わず、原因は筋・靱帯・関節包などの急性炎症で、実臨床では椎間関節由来が多いと考えられます。

寝違え(ねちがえ)の原因
無意識に長時間にわたり不自然な姿勢をとることが直接的な原因です。老化による頚椎の変性や椎間板の摩耗・変性、寒い外気温や頚部への過労による筋緊張増加、咽頭・扁桃などの炎症も原因となります。
睡眠時の不自然な姿勢、首に負荷にかかりやすい姿勢は、「自身では負荷がかかる姿勢だと認識していない」ことが多いため、原因がわからないけれど寝起きに首が痛むという訴えがよく聞かれます。
両隣をお子さんに挟まれて寝ているお母さんから、「寝起きは首だけじゃなくて体があちこち痛いんです」と訴えられたことがあります。寝返りが打てずずっと同じ姿勢で寝ているため、筋肉が凝り固まってしまい寝起きにあちこちが痛くなるのではないかと考えています。

寝違え(ねちがえ)の検査
痛みがある部位の確認、しびれや麻痺などの神経症状の有無を確認します。寝違えだけではレントゲンでの異常は認められませんが、変形性頚椎症などの他の疾患の除外のため、必要に応じて検査します。
寝違え(ねちがえ)の治療
鎮痛薬の内服薬や外用剤を使用します。痛みがあるときは鎮痛薬を使用するのをためらわず、早く症状をとってしまったほうが回復が早くなり、結果的に薬の使用期間も短くなります。疼痛の改善のためにトリガーポイントブロック注射も有効です。低周波治療(電気治療)、ホットパックも併用することがあります。疼痛の強い急性期のみ、ネックカラー固定を併用することも検討します。また安静を取りすぎると疼痛が長引きやすいことが知られており、つらくない範囲内でなるべく普段通りの生活をするように心がけましょう。
通常は1週間程度で自然軽快しますが、強い炎症や筋肉の緊張を伴う場合は症状が長期化することもあります。精神的ストレス、職場で長時間不自然な姿勢をとらざるを得ない環境にあったりすると治療に難渋することもあります。
子どもの急な首の傾き・痛みは要注意なことも
子どもの首が急に傾いて痛がる“斜頸”は、大人の「寝違え」と同じではありません。多くは1週間ほどで自然に軽快しますが、発熱やのどの痛み・飲み込みにくさ、強い痛みが続く、徐々に悪化する、けがをきっかけに始まった、手足のしびれや力が入りにくいなどの症状がある場合は、ただの寝違えと思って放置せず早めに受診してください。精査が必要な感染症や腫瘍が隠れていることがあるほか、頸椎の第1・第2頸椎がねじれた位置で固まる「環軸関節回旋位固定」を起こすと、数週間の放置でその位置のまま骨が癒合し、元に戻すには大がかりな治療が必要になることがあります。症状が出て1〜2週間で改善がなければ入院のうえ牽引治療など整形外科的な対応を検討し、改善後は装具で安定化を図ります。
「寝違えだろう」と様子見にせず、早期受診がいちばんの予防策です。
参考文献)
・冨士 武史,田辺 秀樹,大川 淳(編).専門医の整形外科外来診療 ― 最新の診断・治療.南江堂;2017.ISBN: 978-4-524-25836-9.
・西須 孝.連載:子どもの整形外科 第6回 急に発症した斜頸~大人と同じに考えてはいけない首の寝違え~.チャイルドヘルス.2021;24(5):365-367.千葉こどもとおとなの整形外科.

先生から一言
寝違えはよくある症状ですが、痛みが強くつらいこともあります。トリガーポイントブロック注射やお薬など、痛みを早くとる治療を行いましょう。