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股関節の痛み
大腿骨頭すべり症
大腿骨頭すべり症(Slipped capital femoral epiphysis :SCFE)とは大腿骨近位の骨端が骨幹端に対して後内方へすべるように転位することで生じる疾患です。思春期である10歳から14歳ころの体重や活動量が急激に増加する時期に発症しやすい比較的まれな疾患であり、学童期に足を引きずるような歩行異常(跛行)を来たす原因の一つとして重要視されています。
日本における発生頻度は10万人あたり男子が2.2人、女子が0.8人とされており、男女比は3対1で男児に多くみられます。また、女児の方がより若年で発生する傾向があります。この疾患は重大な後遺障害をきたすことがあるため、早期に適切な対応をとることが不可欠です。

大腿骨頭すべり症の原因
発症には様々な要因が絡み合っていると考えられています。以前は肥満やホルモン異常による成長軟骨板の病的な脆弱性が注目されていましたが、明らかな内分泌異常を認める例は数パーセントにすぎません。
最近では、成長期において成長軟骨板への物理的負荷を増大させるスポーツ活動や体重増加が発症の重要な要因として挙げられています。さらに、8歳以下や17歳以上に発症するような非定型のケースでは、腎不全や骨盤への放射線治療歴のほか、大腿骨頚部の過小前捻や寛骨臼の後捻といった骨の形態的な特徴も関連していると考えられています。
大腿骨頭すべり症の症状
主な症状は股関節の痛みや、足が外側を向く外旋位歩行、足を引きずる跛行、そして関節の可動域制限です。症状の強さやすべりの程度を評価し、治療方針を決定するためにLoder分類という臨床分類が広く用いられます。杖を使用しても体重をかけて歩行することができない状態を不安定型と呼び、この場合は激痛を伴うため救急搬送されることが多くなります。一方、杖の有無に関わらず荷重歩行が可能な状態は安定型と呼ばれます。注意点として、痛みの部位が股関節ではなく太ももや膝に現れることもあり、特に膝の痛みのみを訴える場合は診断が遅れるリスクがあります。慢性的な症例では痛みがなく跛行のみを呈することもありますが、安定型であっても転倒やジャンプなどの軽微な外傷が加わることで突然不安定型へ移行する危険性があるため注意が必要です。
大腿骨頭すべり症の検査
診察時には、仰向けで両股関節の動きを比較し、患側の屈曲や内側に捻る動き(内旋)の制限を確認します。足を他動的に曲げていくと、自然と股関節が外に開き外側に捻れる動きをするDrehmann徴候(ドレーマン徴候)がみられ、これが診断に有用です。

画像検査の基本となるX線検査(レントゲン)では、正面像と側面像の両方を撮影して左右を比較することが必須となります。正面像において大腿骨頚部に引いた線が骨頭を通過しないTrethowan徴候(トレソワン徴候)や骨端線の不整などがみられますが、すべりの程度が軽い場合は正面像で異常がわかりにくいため、側面像での確認が特に重要です。また、反対側のすべりの前兆を確認するためのMRI検査(基幹病院へ紹介)や、手術計画のためのCT検査が行われることもあります。非定型例では代謝や内分泌疾患を疑い、血液検査を行うことも推奨されています。

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大腿骨頭すべり症の治療(基幹病院へ紹介)
大腿骨頭すべり症は原則として手術適応となる疾患であり、診断がついた時点で歩行を禁止し、速やかに安静を保つ必要があります。時間が経過することで重症化するため、本疾患を疑った段階で、直ちに小児整形外科の専門医へご紹介させていただきます。
治療の最大の目標は、骨端を早期に安定化させて最大の合併症である大腿骨頭壊死を予防し、将来の変形性股関節症への進行を防ぐことです。安定型の場合、無理に手で元の位置に戻そうとする徒手整復は禁忌とされており、骨端を現在の位置のままスクリューで固定する手術(in-situ pinning)が第一選択となることが多くなっています。一方、不安定型は極めて大腿骨頭壊死の発生頻度が高く、慎重な手術操作が求められます。すべりの程度が強い場合には大腿骨の骨切り術などが検討されますが、合併症のリスクもあるため専門的な判断が不可欠となります。安定型であっても放置すれば必ずすべりは進行し、不安定型へ移行して予後不良となる可能性があるため、いかなる状態でも慎重な対応が求められます。
参考文献)
・雨宮えりか, 川口泰彦, 斎藤充. 第2回 明日から役立つ 大腿骨頭すべり症の診断と治療法の実際. 整形外科サージカルテクニック. 2025;15(3):398-405.
・小児の歩容異常 ―外来診療でのコツと治療の考え方―. 日整会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.)97( 4 )2023.
記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)
最終校正日:2026年8月9日