整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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リンパ浮腫(Lymphedema)

リンパ浮腫とは

リンパ管は、体液を体の各部分から集めて心臓に返す働きをもつ細い管状の構造です。リンパ浮腫とはリンパ輸送能の低下により、組織間隙に高濃度の蛋白性間質液が貯留してむくみがでた状態のことです。浮腫(edema)とはいわゆる「むくみ」のことを指します。リンパ管の流れが何らかの原因で滞ってしまうと、毛細血管から静脈へ戻れなかった水分が貯留し、リンパ浮腫となります。

リンパ浮腫の原因

リンパの流れを滞らせている原因が明らかな「二次性リンパ浮腫」と、原因が明らかでない「原発性リンパ浮腫」に分類されます。日本で多い原因は、乳がん術後、子宮がん術後のリンパ浮腫です。

①原発性リンパ浮腫:明らかな基礎原因がなく発症するもの

②二次性リンパ浮腫:悪性腫瘍、手術、放射線治療、フィラリア感染、外傷などにより発症するもの

リンパ浮腫の症状

はじめは、皮膚を押すと凹みが一時的にみられるむくみがみられますが、罹病期間が長くなってくると皮膚を押しても凹まなくなってきます。進行すると皮膚の過角化、リンパ小胞、リンパ漏がみとめられるようになります。また、局所の細胞性免疫が低下し、患部の蜂窩織炎(皮膚軟部組織の感染症)を発症することがあります。

リンパ浮腫の病気分類は、国際リンパ学会によるステージ分類が普及しています。Stage3になるほど重症で、圧痕がみられなくなり、アカントーシス(表皮肥厚)、脂肪沈着などの皮膚変化がみられます。

©国際リンパ学会:リンパ浮腫のステージ分類

リンパ浮腫の検査

触診による圧痕の確認や、リンパのう胞、リンパ漏など皮膚の状態を確認します。隠れた腫瘍、リンパや静脈の流れを阻害するような病気がないか確認する為、CT・MRI検査を行う場合もあります。

リンパ浮腫の診断は、問診で病歴や浮腫の発症経過、日常の生活状況、体重、薬剤歴などを確認し、理学所見に矛盾がなければリンパ浮腫と診断されることが多いです。全身性または局所性の浮腫を引き起こす内科的な疾患を除外するため、血液検査やCT、MRI検査が必要となることがあります。表3には代表的な鑑別疾患が記載されています。異常がある場合は専門医の受診を勧め、もとの主治医と情報を共有し、治療を連携して進めていきます。

リンパ浮腫の確定診断にはリンパシンチグラフィが唯一保険適用となっていますが、基本的には大病院でのみ実施可能な検査です。インドシアニングリーン(ICG)を用いた蛍光リンパ管造影は、体表から約2cmの深さまでのリンパ管の走行や機能を評価でき、リンパ管静脈吻合術とともに広まってきています。また、超音波検査は外来で比較的手軽に実施でき、水分の貯留や皮膚の肥厚、線維化を視覚的に確認しやすい検査です。

リンパ浮腫の治療

保存療法には弾性着衣や弾性包帯による圧迫療法やリンパドレナージを行います。外科治療ではリンパ循環の改善を目的にリンパ管静脈吻合術やリンパ移植術を行います。

リンパ浮腫の治療は基本的に保存的治療が原則で、基本的な皮膚衛生やスキンケア、運動療法、日常生活での注意事項に関する情報提供や指導が非常に重要です。皮膚保護のため、皮膚の乾燥予防や清潔保持も重要です。炎症を引き起こす要因には、白癬症や陥入爪、胼胝、日焼けや外傷、衣服や靴、アクセサリーや弾性着衣の皺などの機械的刺激、また長時間の同じ姿勢などの局所的な要因と、過度な疲労や負荷などの全身的な要因があります。生活面で最も重要なことの一つが体重管理です。肥満は上肢リンパ浮腫発症の危険因子であり、乳がんの患者においても、肥満は乳がん再発リスク、乳がん死亡リスク、全死亡リスクを高める要因とされています。下肢リンパ浮腫と肥満に関するエビデンスは不十分ですが、脂肪細胞の慢性炎症や線維化の役割を考慮すると、肥満は避けたいところです。

弾性ストッキングは有効であり、浮腫の状況に合わせて装着します。これらに加え、用手的リンパドレナージ(manual lymphdrainage:MLD)と呼ばれる皮膚への直接的な施術と、浮腫部位に対する圧迫療法を組み合わせることで「複合的治療(complex decongestive therapy:CDT)」とし、これが標準治療とされています。

リンパ浮腫で特に多い合併症は蜂巣炎などの感染症です。炎症が生じるとリンパ管の機能がさらに低下し、リンパ浮腫が悪化すると考えられています。リンパ浮腫診療ガイドラインでは、感染や患肢への化学療法がリンパ浮腫の発症や悪化の因子として確実であるとされています。

手術療法は近年広がっており、リンパ管静脈吻合術(lymphatic-venous anastomosis:LVA)が代表的です。顕微鏡下でリンパ管と静脈をつなぐマイクロサージャリーで、侵襲は少ないとされています。他にはリンパ節移植術や脂肪吸引術、余剰皮膚の切除などがありますが、これらも術後の複合治療が必要です。

明確なエビデンスを持つ薬剤は存在せず、漫然と利尿剤を投与することは推奨されません。複合的治療に加え、漢方薬を補助的に使用して症状が軽減された報告もあります。当院ではむくみに応じた漢方薬治療、リハビリテーションを積極的に行っています。ご希望の方は医師にご相談ください。

参考文献)

・今日の整形外科治療指針. 医学書院.

・むくみの原因とピットフォール 診断と治療社.

・リンパ浮腫治療におけるリハビリテーション診療. Jpn J Rehabil Med 2024;61:535-540.

先生から一言

当院ではリンパ浮腫によるむくみに対して、漢方薬治療、リハビリテーションを積極的に行っています。ご希望の方はスタッフにご相談ください。

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