DISEASE DETAILS 疾患一覧

股関節の痛み
ペルテス病
ペルテス病は、小児期・学童期に発症する、大腿骨近位骨端部(股関節の付け根)の阻血性壊死を呈する疾患です。骨端部への血行が何らかの原因で阻害されて壊死し、体重がかかることで圧壊(つぶれること)が起こります。
骨端線が存在する2歳〜14歳で発症し、平均診断年齢は7歳1か月です。男児に多く(男女比6.3対1)、ほとんどが片側性ですが、4〜10%の割合で両側に発症することもあります(同時ではなく順次発症します)。 成人の特発性大腿骨頭壊死症とは異なり、壊死部は自己組織による再生が期待できますが、治療には年単位の長期間を要します。骨頭の変形が残ってしまった場合は、将来的な変形性股関節症のリスクが高まるため注意が必要です。

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ペルテス病の症状
初期症状として典型的なのは、痛み(疼痛)、足を引きずる歩き方(跛行)、関節の動かしにくさ(可動域制限)ですが、股関節の腫れや熱感は通常認められません。痛みについては、歩行時や運動時に訴えることが多く、安静時の痛みは少ない傾向があります。股関節だけでなく、関連痛として膝や太ももの痛みを訴えることもよくあるため、診断には注意が必要です。
痛みをはっきり訴えない場合でも、96%の患児に跛行がみられ、足を引きずる様子に親御さんが気づいて受診に繋がることが多くあります。初期の跛行は痛みを避けるためのものですが、進行して骨端部の圧壊が進むと、足の長さが短くなることによる墜下性跛行に変化します。また、初期には関節炎の影響で、主に股関節を開く動きや内側に捻る動きなどが制限されます。
ペルテス病の発症原因とリスク因子
根本的な原因はいまだ解明されておらず、血管や代謝などの素因、環境因子、メカニカルストレスといった複数の要因が複雑に関与して発症すると考えられています。解剖学的に、4歳から7歳頃は「Perthes age」と呼ばれ、大腿骨頭を栄養する血流が1本の血管に依存する最も不安定な時期であることが背景にあります。
近年の疫学研究により、いくつかの発症リスク因子が報告されています。妊娠中の母親や家族からの受動喫煙により発症リスクが約2倍に上がることや、居住地域の貧困率の高さといった社会・経済的要因との関連が指摘されています。また、患児の約3分の1がADHD(注意欠如・多動症)に該当するとされ、多動傾向による微小な外傷(メカニカルストレス)がリスクになるほか、肥満は診断の遅れや重症化、治療成績不良に関連するという報告があります。
ペルテス病の検査と診断
自然に軽快する単純性股関節炎などの他の疾患と鑑別するため、当院では複数の画像検査を用いて総合的に評価します。まず超音波検査(エコー)により、滑膜炎や関節内の水分の貯留、骨端部の圧壊像などを確認します。次にX線検査(レントゲン)で両脚の正面と開いた状態を撮影し、骨端核の硬化や圧壊、軟骨下骨折などを確認しますが、初期には明らかな異常がみられないこともあります。
股関節痛が改善せず、本疾患が疑われる場合はMRI検査をご案内します。当院でMRI検査が必要と判断した場合は、設備のある連携先の他院へご紹介させていただき撮影を行います。MRI検査を行うことで、X線で異常がない初期段階であっても骨壊死像や関節水腫を早期に確認でき、確定診断や重症度判定に極めて有用な情報を得ることができます。
ペルテス病の治療
ペルテス病治療の最大の目標は、壊死した骨が吸収され新しい骨に置き換わる過程において、骨頭をできるだけ寛骨臼内に包み込み、球形に保つことです。そのため、診断後は直ちに患肢に体重をかけない免荷を徹底し、圧壊を防ぐことが何よりも重要となります。
当院のみでは長期間の専門的な治療を完遂することは困難であるため、ペルテス病と診断された場合や強く疑われる場合は、速やかに小児整形外科の専門機関へ紹介させていただきます。専門機関では、足を外側に開いた状態を保つ外転免荷装具などを使用して長期間の免荷を継続する保存療法が約80%の症例で選択されます。
一方、発症年齢が8歳から11歳以上と高い場合や、重症例、骨の変形が進んでいる場合には、大腿骨内反回転骨切り術や骨盤骨切り術などの手術療法が検討されます。なお、無治療のままでも2年から3年で疾患は沈静化しますが、大腿骨頭に変形が残存し、将来的な変形性関節症の素因となってしまいます。
治療の主な目的は、適切な管理によってこうした将来の後遺症を軽くすることにあります。また、一部では骨粗鬆症薬であるビスホスホネート系薬剤による治療が効果的との報告もありますが、さらなる研究が待たれている段階です。

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参考文献)
・岡佳伸. 第5回 ペルテス病の診断と初期治療. 整形外科サージカルテクニック. 2025;15(6):792-798.
・MSDマニュアル プロフェッショナル版「ペルテス病」
・『今日の整形外科治療指針』医学書院
・『整形外科診療 for プライマリケア診療所』羊土社
記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)
最終校正日:2026年8月9日

先生から一言
ペルテス病はまれな疾患ですが、診断したら速やかに治療を開始せねばなりません。長引く股関節痛は要注意です。放置すると後遺症を残してしまいます。