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手首・手指の痛み
グロムス腫瘍
グロムス腫瘍(Glomus tumor)とは
爪の下に発生する痛みを伴う腫瘍のもっとも代表的なものです。グロムス腫瘍の正式名称は「傍神経節腫(paraganglioma)」といわれます。グロムス腫瘍は、皮膚の血流を調節するグロムス器官から発生する血管系の良性腫瘍で、手の軟部腫瘍の1~5%を占めます。30~50歳代の女性に多く、爪の下に発生しやすいです。腫瘍の大きさは1~10mmで、通常は5mm程度です。爪甲下に暗赤色の腫瘍が透けて見えたり、爪が変形することもあります。
グロムス腫瘍の原因
指の先端などの末梢部にある動静脈吻合部の血管平滑筋細胞から発生する腫瘍です。なぜ発生するかは詳細は明らかではありません。動静脈吻合部は体温の調節に関わっているとされます。グロムス腫瘍は主に指に発生しますが、骨、胃腸、気管、縦隔などの他の部位にも発生することがあります。
グロムス腫瘍の症状
「指尖部の疼痛、圧痛、寒冷時の痛み」といったCarrollの3徴は、グロムス腫瘍の特徴です。押さえると痛み、寒くなると痛みが強くなるのが一般的です。爪の下に白色、ピンク色、青紫色の小さな円形の斑点が透けて見え、それが爪の先端に向かって線状の赤みや亀裂を生じさせることがあります。グロムス腫瘍は、40%のケースで爪の変形を伴うとされます。痛みがでるメカニズムとして、疼痛物質である「サブスタンスP」を含む神経線維が腫瘍内に存在することが関連すると考えられています。
グロムス腫瘍の検査
診断には、pin testやcold testのように、痛みのある部位を軽く押すと強い痛みを訴えるテストや、MRI検査で腫瘍を確認します。MRI検査では腫瘍がT1低信号、T2高信号を示しますが、必ずしも描出されるわけではありません。単純X線写真では、症例の約1/3で骨の侵食が見られます。超音波検査では、爪の近位側と爪母の下に境界がはっきりとした低エコー領域が認められ、カラードプラー法ではその低エコー領域内に豊富な血流信号が見られると報告されています。
グロムス腫瘍の治療
外科的切除を行います。爪甲下グロムス腫瘍の場合、直上の爪床を切開してアプローチする方法が一般的に行われます。腫瘍は柔らかく傷つきやすいため、ルーペまたは顕微鏡を用いて丁寧に剥離し切除します。慎重な手術を行うことで、爪の変形を防ぎつつ、疼痛を改善させることができます。再発の可能性は約10%あります。術中に採取した腫瘍組織の病理組織学的検査により、最終的な診断を下します。
参考文献)
・今日の整形外科治療方針
・MB Derma, 1849. -14. 2011.特集/爪疾患のすべて. 爪と爪周囲の良性腫瘍