整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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デスモイド型線維腫症

デスモイド型線維腫症とは

デスモイド型線維腫症(desmoid fibromatosis:DF)は軟部腫瘍のひとつです。局所浸潤性が非常に強いものの、遠隔転移しません。2020年のWHO腫瘍分類では、その局所浸潤性の強さから良性と悪性の間に位置する中間型悪性腫瘍に分類されています。欧米では年間100万人中4人以下に発症する希少疾患とされ、日本では2017年度骨軟部腫瘍登録で年間139例の患者が登録されています。

デスモイド型線維腫症は遠隔転移することはなく、腫瘍自体の存在が患者の生命に直接的に関わることはないとされています。ただし、腹腔内に発生した腫瘍によって腸閉塞や穿孔を生じる場合や、頭頸部に発生した切除困難な腫瘍が気管周囲に浸潤し窒息するリスクもあります。

デスモイド型線維腫症の疫学・特徴

発生は女性に多く、10~40歳代の若年成人に好発します。主に腹腔内と腹腔外に発生し、全体の30~40%が四肢に発生しますが、腹腔外腫瘍は腹壁(20%)、胸壁(10%)などにも好発します。10%程度の患者には外傷や手術の既往歴があり、腹壁発生のデスモイド型線維腫症では15%程度で過去5年以内の妊娠歴があると報告されています。またデスモイド型線維腫症の5~10%は家族性大腸ポリポーシスを発症するGardner症候群に好発することが知られています。

デスモイド型線維腫症の原因

デスモイド型線維腫症の発症要因としては、体細胞突然変異(somatic mutation)のCTNNB1(βカテニン遺伝子)変異が知られており、変異のサブタイプによる予後の差も報告されています。また、Gardner症候群では生殖細胞突然変異(germline mutation)としてのAPC変異が認められます。

デスモイド型線維腫症の症状

デスモイド型線維腫症は深部に発生する痛みのない、辺縁が不明瞭な硬い腫瘤として見つかることが多いとされます。しかし一部では痛みや熱感などを訴えることもあります。

デスモイド型線維腫症の検査

MRI検査では浸潤性増殖を示すことが多く、悪性軟部腫瘍との鑑別が必要な場合もあります。このため、正確な診断には生検での病理組織学的診断が必須であり、多くのデスモイド型線維腫症では腫瘍細胞の核においてβカテニンが強く発現しています。ただし、臨床症状やその病勢が個人によって大きく異なるため、正確な病勢予測が困難なこともあります。

デスモイド型線維腫症の治療

2019年に日本で腹腔外発生デスモイド型線維腫症診療ガイドラインが発刊されました。以前は広範切除による手術が治療の第一選択と考えられていました。しかし、近年では術後の高い再発率や機能障害が考慮されるようになり、「wait and see」と呼ばれる慎重な経過観察や、薬物治療などの保存的な治療法が選択されることが多くなってきています。

1. Wait and See(慎重な経過観察)

以前は手術療法が治療の中心でしたが、高い局所再発率や術後の機能障害が問題でした。そこで近年では、特に症状のないデスモイド型線維腫症に対して治療介入せずに慎重に経過を観察する「wait and see」と呼ばれる方法を選択する施設が増えています。ただし、診断時に痛みなどの症状が強く経過観察が困難な場合や、切除後の機能障害が少ないと予想される場合には、薬物療法や外科的切除も考慮されます。

2. 薬物療法

デスモイド型線維腫症には、過去の報告からCOX2阻害薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗ホルモン薬であるタモキシフェンに加えて、抗がん薬としてメトトレキサート+ビンブラスチン療法(MTX/VBL)、ドキソルビシン、幾つかの分子標的薬の有効性が報告されています。近年、臨床試験によって分子標的薬であるソラフェニブおよびパゾパニブ、MTX/VBLの有効性が検討されました。これらの薬剤は、専門施設において慎重に投与基準を検討する必要があります。

3. 手術療法

痛みの強い症例、術後機能障害が少ないと考えられる場合には、外科的切除が施行されています。また、妊娠に伴うデスモイド型線維腫症の増大も知られており、出産を望む女性における腹壁発生のデスモイド型線維腫症では腹壁欠損への再建も考慮した切除が検討されることもあります。デスモイド型線維腫症は発生部位によって術後の再発率に差があり、特に四肢発生の場合には他の部位に比べて治療成績が不良であることが報告されています。また、腹壁に生じた場合には他の部位よりも治療成績が良好であることも報告されており、これらを考慮した上で手術適応の是非を検討すべきです。現時点ではガイドラインにて辺縁切除を行うことが推奨されており、術後の機能障害を少なくする手術が主流となっています。

参考文献)

・デスモイド型線維腫症(Desmoid fibromatosis), 小林英介.Nihonrinsho Vol 79,SupPll,2021.

・今日の整形外科治療指針.

先生から一言

デスモイド腫瘍は、MRIなどの画像検査のみで診断することはできません。本疾患が疑われた場合は、速やかに腫瘍専門医にご紹介します。

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