整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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腫瘍性骨軟化症

腫瘍性骨軟化症(TIO)とは

腫瘍性くる病/骨軟化症(tumor-induced rickets/osteomalacia:TIO)は、腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)の一つであり、腎近位尿細管リン再吸収障害による低リン血症を特徴としています。骨石灰化障害を示す疾患で、文字どおり骨の軟化を引き起こします。このうち特に骨端線閉鎖以前に発症し、成長障害や骨変形を主徴とするものを、くる病と呼びます。TIOにおける低リン血症などの病態は、原因病変の摘除により完治することから、腫瘍が産生する何らかの液性因子によってTIOが引き起こされると考えられています。

腫瘍性骨軟化症(TIO)の原因

腫瘍随伴症候群であるTIOは腫瘍が産生する液性因子によって引き起こされると考えられています。原因となる液性因子にはFGF23があります。他にもmatrix extracellular phosphoglycoprotein(MEPE)およびsecreted frizzled-related protein(sFRP-4)、およびFGF7などがあげられますが、詳細は不明な部分が多く残されています。FGFは線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)を指します。

FGF23は、リン再吸収を抑制するとともに、1,25(OH)2D濃度の低下を介して腸管リン吸収を低下させ、血中リン濃度を低下させるものと考えられます。

TIOの原因腫瘍としては、hemangiopericytomaなどの良性中胚葉系腫瘍が多く報告されています。これに加え、前立腺癌や肺癌、軟骨肉腫、線維肉腫などの悪性腫瘍、母斑や肉芽腫といった非腫瘍性病変も報告されています。また、McCune-Albright症候群に伴う線維性骨異形成でも、FGF23高値を伴う低リン血症性くる病/骨軟化症の合併が認められる場合があります。TIOを引き起こす腫瘍は一般に成長が遅く、骨中に存在することが少なくないため、その発見が困難な場合が多いです。原因病変が発見されない場合、TIO患者は原因不明の低リン血症性くる病/骨軟化症として治療されることになります。

腫瘍性骨軟化症(TIO)の症状

TIOに伴う重度の筋力低下や骨痛などの症状を認め、低リン血症に由来すると考えられています。原発腫瘍に随伴する症状を伴うこともあります。TIOをリン製剤で治療した場合、ある程度の筋力低下や痛みの軽減が認められます。TIOは成人に発症することが多いものの、10歳以下の報告もあり、その場合は下肢の変形や成長障害など、くる病の所見を呈することがあります。

腫瘍性骨軟化症(TIO)の検査

未治療の状態では、著明なリン利尿低リン血症が認められます。通常、血中リン濃度は2mg/dl以下で、しばしば1mg/dl程度となります。さらに、前述のように、血中1,25(OH)2D濃度は低値~正常低値を示し、大部分のくる病/骨軟化症と同様に骨型アルカリホスファターゼの上昇が見られます。血中カルシウム(Ca)や副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)濃度は通常基準値内にとどまるものの、軽度の低Ca血症や高PTH血症が認められる場合もあります。

しかし、これらの生化学所見はADHRやXLHなどのほかの疾患でも認められるため、これらの検査結果のみでTIOの確定診断を下すことはできません。そのため、TIOの確定診断には原因となる腫瘍病変の同定とその切除による病態の改善の確認が必要です。

TIOを引き起こす腫瘍の発見のためには、全身の触診に加え、CTやMRIなどの画像検査による腫瘍の検索が必要です。腫瘍は下肢や頭頸部に多く、これらの部位のスクリーニングがまず推奨されます。画像診断により腫瘍が発見された場合でも、実際にその腫瘍がTIOの原因であるかどうかの判断するため、腫瘍近辺の静脈血中でのFGF23濃度の上昇を確認することが確定診断に有用です。

腫瘍性骨軟化症(TIO)の治療

TIOの原因腫瘍が明らかになった場合には、腫瘍の摘除により病態は完治します。腫瘍摘除後、血中FGF23は低下し、一部の症例では感度以下にまで低下します。これに引き続き、リン利尿と低リン血症が数日かけて回復し、FGF23はその後基準値に戻ります。

腫瘍が明らかにならない場合、あるいは摘除不能の場合には、リン製剤と活性型ビタミンD3製剤による治療が行われます。リン製剤のみによる治療の場合、治療に伴い二次性副甲状腺機能亢進症が発症する可能性があります。活性型ビタミンD3製剤は、TIO患者で相対的に低い血中1,25(OH)2D濃度を補うだけでなく、この二次性副甲状腺機能亢進症の発症予防にも有効と考えられます。

TIOではビタミンD欠乏などによる骨軟化症に比べ、より多量の活性型ビタミンD3製剤を必要とする場合が多いです。これらの治療により、筋力低下や骨痛の改善は認められるものの、血中リン濃度が基準値内に戻らない例が多いと報告されています。

参考文献)

・病態と疾患からみたFGF. 腫瘍性くる病/骨軟化症. Tumor-induced rickets/osteomalacia. 福本誠二

先生から一言

腫瘍性骨軟化症(TIO)は数万人に一人程度の希少疾患で、血液検査などから偶発的に見つかることも多いようです。クリニックで診断をつけることは困難で、本支管を疑えば速やかに精査可能な病院にご紹介いたします。

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