整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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けが(外傷)

上腕骨外側顆骨折

上腕骨外側顆骨折とは

小児の肘外傷の中で上腕骨顆上骨折に次いで頻度が高く、頻度の高い骨折です。上腕骨顆上骨折は、神経損傷や血管損傷などの緊急を要する急性合併症があり、強い疼痛を伴うことが多く、救急車で搬送されることも少なくありませんが、外側顆骨折は転位が著明であっても緊急手術が必要となることは少なく、転位が少ない場合は疼痛も比較的軽いため、見逃されることがあります。しかし、外側顆骨折は成長軟骨板を通過する関節内骨折であり、骨片は前腕伸筋群に牽引され、遅発性転位が起こりやすく遷延治癒になりやすいとされ、慎重な対応が必要です。

上腕骨外側顆骨折は4〜9歳に多く、6歳前後がピークですが、骨端離開は2歳以下で多く見られます。しかし、阿部らの報告によると、1〜10歳の上腕遠位骨端離開の症例も複数確認されており、年長児でも発生することがあるため、慎重な診断が求められます。

上腕骨外側顆骨折の原因

走ったり遊んでいる際に転んで、手をついて体重がかかることで肘に負担がかかり、外側顆が骨折することが最も多いとされます。特に肘が伸びた状態で手をつくと、外側の骨に大きな力がかかり骨折しやすくなります。野球、サッカー、バスケットボールなど、運動中に転倒や衝突が起こりやすいスポーツで受傷することも多いです。公園の遊具や階段などからの転落やジャンプした際にバランスを崩し、肘から落ちてしまうことも一因です。このような場合、肘に大きな衝撃が加わり、骨折を引き起こすことがあります。

上腕骨外側顆骨折の症状

受傷直後には強い痛みが肘関節の外側に発生し、腕を動かしたり、触られるのを嫌がることが多くなります。痛みは特に肘を動かそうとしたときに増悪し、肘の屈曲や伸展が制限されるため、腕をだらんと下げた状態で保持することが典型的です。また、外見的にも肘関節の腫れがすぐに生じ、腫脹が広がって皮膚が緊張し、温かみを感じることがあります。腫れが進行すると、内出血による皮下出血が見られることもあり、肘の形が正常と異なるように見える場合もあります。

さらに、骨折の部位に触れると強い圧痛があり、腫れによって関節内での骨片のずれや異常な動きが制限されることがあります。外側顆は成長軟骨板を含むため、骨折によりこの部位の安定性が失われると、肘関節の動きが不安定になりやすいです。また、外側の骨片が前腕伸筋群に牽引されることで、遅発性転位が生じやすく、初期症状が軽くても経過とともに転位が進行することがあります。

重症例では、神経や血管が圧迫されることもあり、肘から先の手や指にしびれや冷感が生じることもあります。特に尺骨神経や橈骨神経が影響を受けると、手の感覚異常や筋力の低下が現れることがあり、細かな手の動きに支障をきたす場合もあります。このような神経症状が見られる場合は、早急な整復や手術が必要となることもあるため、速やかな診断と治療が求められます。

上腕骨外側顆骨折の検査

単純X線検査で診断が可能です。骨折の見逃しを予防するため、可能であれば単純X線検査を4方向で行います。正面像で骨折が指摘できない場合でも、斜位像は診断や転位の評価において重要で、正面像では骨折が指摘しにくい場合でも、内旋斜位像では明らかな転位を認める症例があります。

小児肘内障が疑われる場合には、X線検査に加えて超音波検査を検討します。超音波検査では、両肘を比較することで回外筋関節包複合体が腕橈関節へ巻き込まれている所見を確認できることがあります。受傷機転がはっきりしない場合は、骨折の可能性を常に念頭に置く必要があります。

小児肘外傷後のX線検査で、明確に骨折がわからない場合があります。そのような場合は 「fat pad sign」が診断に有効です。関節内骨折があった場合、関節包上の脂肪体が血腫により押し上げられて影として映ることがあります。前方fat pad signと後方fat pad signがありますが、前方は正常例でも見られることがあるので注意が必要です。前方で著明な血腫による関節包の膨張はヨットの帆のように見え、「sail sign」と呼ばれます。このような著明な関節内血腫が見られる場合は、骨折線が明らかではなくても骨折があると判断し、外固定を行います。外側顆骨折では腕尺関節に脱臼を伴う症例もあり、注意が必要です。

Wadsworth/Jacob分類が有用で、type 1が「ほぼ転位がなく関節軟骨が保たれている骨折」、type 2が「軽度の転位があり骨折線が関節軟骨まで届いている骨折」、type 3が「遠位骨片が回転した著明な転位のある骨折」とされています。type 1では保存治療が選択され、type 3では観血的手術が選択されます。さらにSongらは、単純X線正面・側面像の2方向で転位や不安定性を判断することの限界を指摘し、内旋斜位像の有効性を報告しました。単純X線4方向を用いた新しい分類=Song分類を提唱し、現在では最も治療方法に直結した分類として使用されています。

上腕骨外側顆骨折の治療

斜位を含めた4方向の単純X線検査で転位がすべて2mm以内であれば、ギプスによる保存治療の適応と考えます。受傷後1週目と2週目のX線検査で転位が増大した場合は、すぐに手術治療へ切り替えることを患者や家族に説明しています。ギプス固定は肘関節を90°、前腕を中間位で行います。Song分類stage 1、2では保存治療が行われますが、そのうち約18%の症例で遅発性転位が生じるとされています。特に最初の1週間で転位が増強する可能性が高く、4〜8日後の次回外来の際に4方向X線検査を行うことが推奨されています。ギプス固定期間は最低5週間としており、癒合状態が良くない場合は6〜7週程度固定し、仮骨形成を確認しています。小児の肘では関節拘縮が生じにくいため、偽関節を作らないことが重要です。小児の通院リハビリテーションは基本的に不要で、ギプス除去後は疼痛のない範囲での可動訓練をおこないます。また、成長障害や内反肘の経過観察のため、受傷後最低2年間はフォローアップを行います。特に変形治癒の例では関節の可動域制限を生じ、成長に伴い内反肘を引き起こすことがあり注意が必要です。

上腕骨外側顆骨折の手術治療

転位型の外側顆骨折では手術治療が適応となります。手術は全身麻酔下で行います。上腕遠位外側に約4cmの皮膚切開を行い、骨片の固定は鋼線締結固定法で行います。

参考文献)

・関節外科 Vol.42 4 月増刊号(2023). 上腕骨外側顆骨折の診断と治療 -骨折を見逃さないために,遅発性転位を見逃さないために-

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