整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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膝の痛み

変形性膝関節症

はじめに(当院の方針)

膝の痛みや「膝が伸びきらない」「階段がつらい」「膝がガクッとする(膝崩れ)」などの症状は、早期の評価と適切な保存治療で進行を抑えられることが多いです。当院(三国ゆう整形外科)では、画像評価+運動療法+装具・生活指導+薬物/注射を組み合わせ、患者さまの生活スタイルに合わせた計画をご提案します。人工関節などの手術加療が必要な肩は提携している医療機関にご紹介いたします。「最近つらい」「良い時と悪い時を繰り返す」という段階でも、お早めにご相談ください。

「当日すぐできること」:①レントゲン評価 ②関節注射(適応時)③運動指導(リハ空き枠があれば)/リハ予約

変形性膝関節症とは

膝のクッションである関節軟骨が、主に加齢に伴う長年の負荷で少しずつすり減り、膝の痛み・炎症・O脚などの関節の変形が起こる病気です。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の主要な原因の一つでもあります。男女比はおおむね1:3で女性に多く、閉経後はホルモンバランスの変化も関与すると考えられています。高齢者では一般的な疾患で、65歳以上の約40%が膝の症状を経験するとされ、成人の約10~15%に何らかの膝の変形が推定されています。進行に伴って関節裂隙が狭くなり、骨棘や骨硬化が生じ、半月板の変性・断裂、靱帯や筋の弱化が重なって症状が強くなります。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、年齢に伴う変化や体重・活動による負荷が土台にあり、女性(とくに閉経後)、肥満、過去の膝のけが、遺伝素因がリスクを高めます。病型は、はっきりした単一原因を特定できない一次性が多い一方で、外傷歴や下肢アライメント異常(O脚・X脚)、筋力低下、足部の過回内(かかとの内倒れ)、重労働や激しいスポーツ歴などが関与する二次性もあります。進行には、半月板の変性、軟骨下骨の変化、関節内の炎症(滑膜炎)が深く関わり、歩行時の側方不安定性(knee thrust)や膝の伸びきらなさ(伸展不全)、体重増加、長期の不動や過負荷が拍車をかけます。痛みの正体は一つではなく、滑膜炎や骨の微小損傷、半月板損傷に加え、周囲の筋・腱のこわばりなどが重なって生じます。

変形性膝関節症の症状

初期には椅子からの立ち上がりや歩き始めに痛みとこわばりを自覚し、いったん安静で軽快します。進行すると階段の昇降や正座が難しくなり、膝が伸びきらない伸展制限や関節水腫、腫れや熱感が現れ、O脚やX脚が目立って歩行距離も短くなります。筋力低下を背景に膝崩れやがに股歩行を感じることもあり、数か月単位で良い時と悪い時を繰り返しながら、長期的には少しずつ進行するのが一般的です。

変形性膝関節症の検査

診察では触診や可動域、歩容を評価し、伸展不全やknee thrustの有無、膝周囲の筋力(大腿四頭筋、股関節外転・内転筋)や足部アライメント(過回内)を確認します。画像検査は立位X線が基本で、関節裂隙狭小化、骨棘、骨硬化、骨嚢胞、下肢アライメントを把握し、進行度はKellgren–Lawrence(KL)分類で段階評価します。必要に応じてMRIで半月板や軟骨損傷、二次病変を精査します。ほかの疾患の除外のために採血や関節液検査を行うこともあります。

変形性膝関節症の保存治療(手術以外の治療)

変形性膝関節症の保存治療は、生活習慣の見直し、リハビリテーション、減量、ヒアルロン酸関節内注射、投薬を柱として組み立てます。まず生活面では、正座や深い膝の曲げ込みを避け、膝を冷やさない工夫、洋式トイレや杖・手すりの活用、滑りにくい靴の選択などで日常の負担を減らします。次にリハビリでは、膝下に枕を置いて軽く押すセッティングで伸展位を確保し、下肢伸展挙上(SLR)や股関節外転・内転筋のトレーニング、椅子スクワットを中心に実施します。足部の内反運動や壁ボール押しで過回内を整えることも有効で、痛みが強い日は負荷を下げて「少し物足りない」強度から継続することが、動かさないことによる悪循環を断ち、動ける良循環への切り替えにつながります。

減量は痛みと機能の改善に直結します。体重が1kg増えると一歩ごとに膝へ約3~4kgの負担が増えるため、食事・生活指導とリハビリを組み合わせて体重を落とすほど効果が高まります。投薬はアセトアミノフェンやNSAIDsなどの鎮痛薬や外用剤を基本とし、症状に応じて神経障害性疼痛を考慮した薬剤を選択します。ヒアルロン酸関節内注射は活動性や痛みの程度、画像所見に合わせてタイミングを調整します。当院では個々の状態に合わせて、これらを組み合わせた最適なプランをその日のうちにご提案します。なお、必要に応じて装具やインソールを併用する場合もありますが、まずは上記の基本治療を丁寧に積み重ねていくことを重視しています

装具治療について(やや専門的)

装具療法としては、軟性から側方支柱付き、金属フレームを用いる硬性まで症状や不安定性の程度に応じて選択します。O脚傾向で荷重時に外側へ動揺する場合は外側支柱を用い、大腿と下腿を引き付けるようにバンドを調整すると安定性が高まります。サイズ計測と向きの確認、ヒンジ位置合わせ、圧迫の強弱や支柱のずれの有無を点検し、必要に応じて足底板(インソール)を併用します。

グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリは効果がある?

グルコサミンやコンドロイチンについては、現時点のエビデンスでは明確な有効性が乏しく、高価なサプリメントの購入は当院として推奨していません。一方でヒアルロン酸関節内注射は疼痛緩和に一定の効果があり、適応に応じてご提案します。

減量すると変形性関節症の痛みが減る!

体重が1kg増えるだけで、歩く一歩ごとに膝には約3~4kgの余分な負担がかかります。少しの減量でも痛みや動きやすさは改善しやすく、目安として体重の5%以上落とせると効果を実感する方が増えます。無理な食事制限よりも、自転車や水中運動、ウォーキングなど関節にやさしい運動と筋力トレーニングの組み合わせが、痛みの軽減と再発予防につながります。

当院では、防風通聖散などの漢方薬の処方(体質に合わせて選択)に加えて、食事・生活指導とリハビリ(運動療法)を組み合わせ、膝に負担をかけずに続けられる減量プランを一緒に作ります。最近体重が増えて膝がつらい、減量を始めたいが続かないという方は、気軽にご相談ください。

変形性膝関節症に良い運動は?

これに対して、ウォーキング、サイクリング、弾性バンドを用いた等尺性訓練、水泳、エアロビックエクササイズなど、多岐にわたる運動訓練の有効性に関する研究も報告されています。エアロビックエクササイズは、早期(6~12週間)の疼痛緩和や機能改善をもたらすと報告されてもいます。

私は、自転車やエアロバイク、水泳、エアロビクスなど、膝の関節にやさしく、筋肉を鍛えられるような運動が良いとお伝えしています。ただし、痛みがなく、楽しんで続けられる運動であれば、ヨガ、太極拳、軽いジョギングでも、なんでもかまいません。WHOも楽しんで続けられる運動が良いと提言しています。

変形性膝関節症に対する手術治療

保存療法で十分な改善が得られない場合は、画像所見と症状、生活目標を踏まえて手術を検討します。関節鏡での半月板切除やデブリドマンは効果が限定的とされ、原則おすすめしません。関節を温存して骨配列を整える膝周囲骨切り術(HTOなど)は、適応を満たす方で有効です。病変が膝の内外いずれか一側に限られ、靱帯(とくに前十字靱帯)が保たれている場合は人工膝関節単顆置換術(UKA)が選択肢になります。UKAは侵襲が比較的少なく回復も早い一方、再手術はやや多い傾向があります。関節全体の変性や靱帯不全を伴う場合は人工膝関節全置換術(TKA)が適応で、痛みと歩行機能の大きな改善が期待できます。機種や手術法(ナビゲーション・ロボットを含む)の違いによる短期成績の差は小さく、膝蓋骨置換は再手術リスクを減らすとの報告があります。いずれの手術でも、周術期は局所浸潤鎮痛や末梢神経ブロックで痛みを抑え、術後リハビリで可動域と筋力を回復させることが大切です。

当院は地域の整形外科・人工関節センター各施設と緊密な医療連携体制を構築しており、患者さまの病状に応じて適切な医療機関へ速やかにご紹介いたします。

参考文献)

・日本整形外科学会監修『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』(南江堂,2023).

・大江 隆史,岸田 俊二.第4回 ロコモの要因とは?(3)変形性股関節症・変形性膝関節症.整形外科看護.2025;30(1):90-93.

・青木 隆明,秋山 治彦.第22回 変形性膝関節症のリハビリテーション.Loco CURE.2025;11(2):174–177.

・津村 弘.変形性膝関節症の手術療法(人工関節).Loco CURE.2024;10(1):53–58.

先生から一言

膝関節の変形による痛みは、すぐに改善するのは難しいとされています。ヒアルロン酸の関節内注射や薬物療法も効果的ですが、何より大切なのは、太ももの前面にある大腿四頭筋をはじめとする下肢の筋力トレーニングです。
膝周りの筋肉を強化することで、膝関節への負担を軽減し、痛みの長期的な改善や変形の進行を防ぐことができます。当院では、「生涯自分の足で歩く」ことを目指して、リハビリを中心としたチーム医療による集学的治療を行います。




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