整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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リウマチと関連疾患

ジャクー関節症

ジャクー関節症(Jaccoud arthropathy:JA)は、外観上は関節リウマチ(RA)によく似た手指の著明な変形をきたしながらも、骨の破壊(骨びらん)を伴わず、変形が「可逆性(元に戻る性質)」を持つことを特徴とする関節疾患です。

1869年にフランスのS. Jaccoudが急性リウマチ熱の患者において初めて報告し、現在では全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患に伴って発症することが知られています。関節リウマチとの正確な鑑別が非常に重要となる「ミミック(模倣病態)」の代表的な疾患です。

記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)

ジャクー関節症の症状

ジャクー関節症では、関節リウマチ(RA)と酷似した手指のこわばりや関節痛、軽度の腫脹が認められ、時に症状が出現する部位を変えながら移動性に経過することもあります。また、基礎疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)などに付随する反復性口内炎などの関節外症状を合併することも珍しくありません。

最大の特徴は、尺側偏位やスワンネック変形、あるいは母指のZ変形といった外観上の著明な変形を呈しながらも、その変形が「可逆的である」という点です。固定された関節破壊を主徴とする関節リウマチとは異なり、変形した手を机の上に自然に置いたり、徒手的に軽く矯正を加えたりするだけで関節配列が整い、変形が軽減・消失します。

なお、典型的なジャクー関節症では手関節や母指の変形は軽微にとどまることが多いとされていますが、SLEに伴う症例などでは関節リウマチ同様の変形を伴うケースもあり、外観だけで他疾患と断定することは困難です。そのため、画像上の骨破壊の有無や可逆性の確認など、多角的なアプローチによる鑑別が重要となります。

ジャクー関節症の原因

関節リウマチによる変形が「骨や軟骨の破壊」によって生じるのに対し、ジャクー関節症は「軟部組織の支持機構の異常」を原因とします。

反復する関節の炎症によって、関節を包む袋(関節包)や靱帯が緩み(弛緩)、腱の走行がズレたり(偏位)、筋肉と腱のバランスが崩れたりします。その結果、関節を正しい位置に保持できなくなり、特有の変形をきたします。

本疾患は、当初「急性リウマチ熱」に伴う合併症として発見されましたが、現在では全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする様々な疾患に合併することが知られています。原因となる主な基礎疾患には以下のものがあります。

膠原病・自己免疫疾患: 全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群、オーバーラップ症候群

その他の関節炎・炎症性疾患: 急性リウマチ熱、乾癬性関節炎、偽痛風、炎症性腸疾患、蕁麻疹様血管炎

悪性腫瘍 :肺小細胞癌など

ジャクー関節症の検査・診断

ジャクー関節症の診断において最も重要なのは、外観がにている関節リウマチとの正確な鑑別です。身体所見、画像所見、血液検査の結果を多角的に組み合わせ、総合的な評価を行うことで鑑別しますが、認知度も低く診断の難しい疾患です。

まず身体診察では、手を握った際に腱のずれ(偏位)が生じていないか、また、徒手的に矯正することで変形が元に戻るかという「可逆性」の有無を慎重に確認します。

診断の大きな決め手となるのが単純X線(レントゲン)検査で、ジャクー関節症では、関節リウマチにおいて特徴的な明らかな「骨びらん」や、関節の隙間が狭くなる「関節裂隙狭小化」が目立たないことが重要な鑑別ポイントとなります。ただし、長期にわたり変形が続いたケースなどでは、関節包や靱帯に骨が引っ張られることで生じる特有の「フック状骨びらん(Hook erosion)」が中手骨頭などに認められることがあります。超音波検査やMRI検査において滑膜炎や腱周囲炎の所見を認めることもあります。

さらに血液検査においては、炎症反応(CRP)の著明な上昇が乏しく、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陰性となるのが一般的です。その一方で、背景にある全身性エリテマトーデス(SLE)などの存在を示唆する抗核抗体(ANA)や抗dsDNA抗体が陽性を示すことがあり、これらが診断の手がかりとなります。

ただし、SLEを背景に持ちながらも抗CCP抗体が陽性を示し、関節破壊(骨びらん)を伴うケースは「Rhupus(ループス)症候群」と呼ばれます。この場合はジャクー関節症とは異なり、関節リウマチに準じた治療が必要となるため注意が必要です。

ジャクー関節症の治療

ジャクー関節症の治療目標は、大きく「基礎疾患の炎症制御」と「関節機能の温存」の2つです。まず薬物療法による炎症の鎮静化においては、背景にある全身性エリテマトーデス(SLE)などの基礎疾患に対する治療が基本となります。重篤な臓器障害がみられない場合は、ヒドロキシクロロキン(HCQ)を治療の基盤に据え、活動性の関節炎や痛みが強い時期には、必要最小限のステロイドを短期間のみ併用して速やかな減量を目指します。

続いて重要なのが、装具療法やリハビリテーションによる物理的な機能補助です。本疾患による関節変形は軟部組織の緩みが本態であるため、薬物療法によって炎症が完全に治まった後でも、変形やそれに伴う機能障害が残存することがあります。したがって、装具を用いて関節を保護し、リハビリテーションを通じて機能をサポートすることが、日常生活を維持する上で現実的かつ安全性の高い対応となります。

また、治療を進める上で特に留意すべき点として、過剰治療(オーバートリートメント)の回避が挙げられます。外観上の変形が著しいからといって、関節リウマチと同様の強力な免疫抑制治療を安易に行うことは推奨されません。見た目の変化に惑わされることなく、薬物療法による適切な炎症コントロールと、物理的なサポートをバランス良く組み合わせることが、患者様の長期的な機能維持において極めて重要です。

参考文献)

・だまされるな! リウマチ性疾患のミミック -Vol.18. 第18回 “戻る変形”・ジャクー関節症:RAと紛らわしいSLE関節病変
小荒田秀一(国際医療福祉大学), 2026年.

・Fanouriakis A, Kostopoulou M, Andersen J, et al. EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus: 2023 update. Ann Rheum Dis. 2024;83:15-29.

・陶山恭博, 岸本暢将. 関節リウマチと鑑別の難しい疾患. Medical Practice. 2010;27(12):2035-2040.

・Upadhyaya S, Agarwal M, Upadhyaya A, Pathania M, Dhar M. Rhupus Syndrome: A Diagnostic Dilemma. Cureus. 2022;14(9)

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