整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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DISEASE DETAILS 疾患一覧

膝の痛み

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病(Sinding-Larsen-Johansson disease:SLJD)とは

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病(SLJD)は、膝蓋骨下極(膝のお皿の下)に生じる骨端症であり、広義のジャンパー膝に含まれる疾患です。主に10歳前後の男児に多く見られ、運動時や膝立ち動作の際に、膝蓋骨下極から膝蓋腱の近位付着部にかけて疼痛や圧痛を伴うのが特徴です。発症のメカニズムとしては、スポーツなどによる大腿四頭筋の反復する牽引力によって膝蓋骨下極の骨化中心にメカニカルなストレスが生じ、骨端炎から骨の分節化(細片化)に至ると考えられています。

同じく成長期の代表的な膝スポーツ障害であるOsgood-Schlatter病(OSD)もこれと同様の機序で発症しますが、SLJDはOSDと比較してより若年の層で発症しやすく、発生頻度が低いという特徴を持っています。ユースサッカー選手を対象とした4年間の前向き調査においても、OSDの発生率が13.4%であったのに対し、SLJDの発生率は2.9%に留まったことが報告されています。

記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)

Sinding-Larsen-Johansson 病の症状

主な症状は、スポーツなどの反復動作によって引き起こされる膝前面の疼痛です。大腿四頭筋の強い収縮を伴う運動時に痛みが生じやすく、適切な対応をとらずにスポーツ活動を継続してしまうと、痛みが遷延して難治性となることがあります。また、近年ではこの痛みの背後に腱の変性や新生血管の発生が関与している可能性が指摘されており、痛みが長期化する原因の一つと考えられています。

痛みの発生は、急性発症例では「キック動作で踏み込んだ瞬間の急激な痛み」や「ダッシュ時の突然の疼痛発現」といった明確な契機があることが多いです。対して慢性発症例では、「スポーツ活動を終えて帰宅した後に疼痛を自覚した」「明確なきっかけはなく、徐々に痛みが現れた」など、緩徐な発症経過をたどるのが特徴です。

Sinding-Larsen-Johansson 病の原因

本疾患は、膝伸展機構のオーバーユース(使い過ぎ)によって発生します。脛骨粗面が力学的に強固な線維軟骨で構成されている時期(cartilaginous stage)に、大腿四頭筋の収縮による強い牽引力が膝蓋骨下極に集中して加わることが直接的な発症のメカニズムです。文献では、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、走る・ジャンプする・キックする動作を繰り返すスポーツを行う小児・思春期アスリートで報告されています。

発症の危険因子としては、ハムストリングスのタイトネス(体の硬さ)や脛骨後傾の増加といった内的因子のほか、早期から特定の単一競技のみに集中する「スポーツの専門化」という外的因子が挙げられます。成長期の女性アスリートを対象とした研究では、単一スポーツのみを行う選手は複数スポーツを行う選手に比べて、本疾患を含む膝前面障害の発生リスクが4倍に上昇することが報告されています。

Sinding-Larsen-Johansson 病の検査

単純X線検査では、側面像において膝蓋骨下極に不規則な骨陰影や骨の不整、骨片の分離などが観察されます。

さらに超音波(エコー)検査を用いると、膝蓋骨下極の細片化(fragmentation)や軟骨の浮腫、膝蓋腱近位部の肥厚といった形態的異常を観察できることがあります。加えて、ドップラーモードでの評価では膝蓋腱内に血流シグナルの増加が認められることがあり、この新生血管の存在が疼痛の直接的な原因に関与していることが示唆されています。なお診断を進める上では、類似した症状を呈する膝蓋骨下極のスリーブ骨折(sleeve fracture)や疲労骨折との慎重な鑑別が必要となります。

X線像で明らかな病変が確認できない初期段階であっても、MRI検査(提携病院で撮影)を用いることで、同部位の高信号領域や膝蓋骨表層の初期変化を捉えることが可能です。

膝蓋骨下極に明らかな骨片の分離(fragmentation)を認め、Sinding-Larsen-Johansson(SLJ)病の典型所見です。スリーブ骨折を疑う膝蓋骨の異常な高位(Patella alta)は認めません。(当院で撮影したレントゲン)
先ほどの症例と同様に膝蓋骨下極に分離骨片を認めます(当院で撮影したレントゲン)

Sinding-Larsen-Johansson 病の治療

SLJDは自然治癒が期待できる疾患であり、局所の安静と消炎鎮痛を目的とした保存療法を第一選択とします。具体的には、スポーツ活動の制限による安静を基本としつつ、クライオセラピー・クーリング(冷却療法)、関節モビライゼーション、筋肉のストレッチ、等尺性運動、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服などを組み合わせた包括的アプローチを行います。急性期の疼痛が強い場合は膝サポーターを併用します。

スポーツ活動への復帰に要する期間は、文献によって2ヵ月から8ヵ月と幅がありますが、Osgood-Schlatter病と比較すると一般的に治療経過が短く、比較的早期に症状の改善が得られやすい傾向にあります。当院でも本疾患は適切な初期介入によって早期回復を遂げるケースを数多く経験しております。先ほど画像を提示した患児につきましても、わずか数日で症状が改善し、速やかに運動可能な状態へと復帰を果たすことができました。

上記のような基本的な保存療法を継続しても疼痛が長期にわたり遷延する場合には、精査・外科治療を検討し基幹病院にご紹介します。

参考文献)

・山本祐司. 膝の前面痛と治療のアプローチ. 臨床スポーツ医学. 2024;41(12):1300-1304.

・平野篤. 膝スポーツ障害の治療と予防―膝伸展機構障害―. 臨床スポーツ医学. 2015;32(4):384-390.

・浦辺幸夫. 膝オーバーユース障害予防と治療における理学療法的アプローチ. 臨床スポーツ医学. 2021;38(5):560-565.

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