整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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首の痛み

頚肩腕症候群

頚肩腕症候群とは

頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)は、頚・肩・上腕・前腕・手指の一部または全体に「こり」「痛み」「しびれ」などが現れる病態で、レントゲンやMRIで大きな異常がみられず、変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、肩関節周囲炎(五十肩)、腱板損傷などが否定されたときに診断される“除外診断”です。定まった診断基準はなく、明確な単一原因は不明ですが、運動不足や姿勢異常、長時間の同一姿勢・反復作業といった作業負荷、精神的ストレスが重なって発症する多因子性の作業関連筋骨格系障害と考えられます。

日本産業衛生学会頚肩腕障害研究会の定義では、頚肩腕障害は「作業態様にかかわる負荷が上肢系の筋骨格系組織に作用して生じる機能的または器質的障害」であり、基礎疾患のある特異的障害と、基礎疾患のない**非特異的障害(狭義の頸肩腕症候群)**に分類されます。薬物療法が効きにくいこともあり、就労・日常生活の環境改善、とくに僧帽筋が持続的に緊張する姿勢や作業を避ける工夫が重要で、頚部・肩甲帯・上肢のストレッチや保温、牽引、軽い筋力強化などのリハビリテーションが有用とされています。

不良姿勢での長時間の作業が頚肩腕症候群の原因となる
不良姿勢での長時間の作業が頚肩腕症候群の原因となります

頚肩腕症候群の原因

原因は一つではなく、運動不足や姿勢の乱れ、反復する作業、精神的ストレスなどが重なって起こる多因子の病態と考えられます。痛む部位の周囲では筋肉の血流が悪くなり、強い緊張状態になります。神経学的に明らかな異常がなく、画像や電気生理学的検査でも異常を認めないのに、症状を訴えるケースも少なくありません。めまい・動悸・眼の不調などの自律神経症状、上肢の違和感や鈍重感、頭痛、睡眠障害が伴うこともあります。

症状は長時間のデスクワークやパソコン作業、同じ動作のくり返し、猫背や巻き肩といった不良姿勢、強い心理的ストレス、寒冷や気候変動で悪化しやすく、痛みがあるのに無理に作業や仕事を続けるとさらに増悪しがちです。

ストレスも頚肩腕症候群を悪化させる原因となります

頚肩腕症候群の症状

主な症状は、首・肩・腕の筋肉のこりや張り、押すと痛い感じ(圧痛)で、悪化すると動かしにくさや力の入りにくさ、握力低下がみられることがあります。腕や手が冷たく感じる、文字が書きにくい、力が抜けるように感じる、首や腕の重だるさ、動かすと痛みが強まるといった自覚症状が出ることもあり、症状が強い場合は頭痛を伴って脳の病気を心配して受診される方もいます。

診察では、首から肩甲部・上肢にかけての痛みやしびれに加え、筋肉のこり・緊張、硬くしこった部分(筋硬結)、圧痛が確認されます。進行すると関節の可動域が狭くなったり、腕の筋力や握力が低下することがあり、症状の出方や程度は人によってさまざまです。

頚肩腕症候群の検査

頚肩腕症候群は、首〜肩〜腕の不調が続く一方で検査で大きな異常が見つからないときに付く“除外診断”です。診断では、変形性頚椎症や椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、肩の関節疾患、手根管/肘部管症候群などの神経障害に加え、血流の問題、腫瘍、ストレス関連の痛みなどを順に除外し、画像や神経の検査で危険な病気が隠れていないかを広く確認します。

検査は、まずレントゲンで骨の並びや変化を確認し、必要に応じてMRIや神経の働きを調べる検査(神経伝導検査や筋電図)を行います。気分や睡眠などが痛みに関わっていると考えられる場合には、心理学的な評価を取り入れることもあります。これらの検査は、「危険な病気が隠れていないか」「別の病名で治療したほうがよい状況ではないか」を確かめるためのものです。

頚肩腕症候群そのものに特有の“決め手”となる所見はありません。診察では、首・肩・腕の筋肉の張りやコリ、押したときの痛み、トントンと叩いたときの響く痛み、動かしにくさ、力の入りにくさなどを丁寧に確認し、神経の異常がないかも慎重に評価します。これらを踏まえて他の病気を除外できれば、頚肩腕症候群と考えて治療やリハビリテーションを進めていきます。

頚肩腕症候群の治療

日常でできる対策

長く座りっぱなしは症状を悪化させやすいので、作業が続くときは三十分ごとに立ち上がり、二十秒だけでも首や肩をゆっくり伸ばします。小さな習慣でも続けると楽になる方が多いです。スマートフォンやパソコンの位置を目線に合わせ、肘は体に近づけ、肩がすくまない姿勢を心がけます。寒い日は首・肩を冷やさないようにし、入浴で温めると筋肉の緊張が和らぎます。

リハビリテーション(理学療法)

首・肩・腕の柔軟性を高め、血のめぐりを良くし、必要な筋力を無理なく取り戻すことを目標にします。ストレッチと軽い筋力トレーニングに加えて、ホットパックや低周波、必要に応じて頚椎牽引などの物理療法を組み合わせます。水泳やエアロバイクのように上肢を使う有酸素運動も、症状に合わせて安全に始めていきます。姿勢や動作のくせは再発の原因になるため、作業環境の調整や「楽な動き方」の練習も一緒に行います。

投薬治療

薬はあくまで補助ですが、痛みを抑えて動きやすくするために役立ちます。発症まもない時期は、ロキソプロフェンやジクロフェナク、セレコキシブなどの消炎鎮痛薬で炎症と痛みを抑えます。腎機能や胃腸のご病気がある方は量や期間を慎重に調整します。筋肉のこわばりが強い場合は、筋弛緩薬や貼り薬・塗り薬、必要に応じて補助的な鎮痛薬を使います。症状が長引く慢性期には、トラマドールやデュロキセチンなどを少量からゆっくり増やしながら用いることがあります。飲み始めは眠気やめまい、吐き気などが出ることがあるため、様子を見ながら調整します。良くなってくればお薬は減らせますので、ずっと飲み続ける必要はありません。

注射や処置が必要なとき

痛みが強くて生活に支障がある場合は、肩の滑液包に局所麻酔薬やステロイドを注射する方法を検討します。状況に応じてヒアルロン酸を使うこともあります。効果や副作用、持続期間は診察で丁寧にご説明します。

回復までの見通し

頚肩腕症候群は保存的治療が基本で、生活の整え方とリハビリを着実に続けるほど改善しやすくなります。症状の変化には個人差があり、良くなるまでに時間がかかることもありますが、焦らずに「痛みを減らす」「日常動作を楽にする」といった身近な目標を一つずつ達成していくことが近道です。当院では、お仕事や生活に合わせた計画をご提案し、無理のない範囲で伴走します。

参考文献)

・池口良輔.頸肩腕症候群.日本医事新報.2024;5234:50–51.

・中嶋秀明.2. 頸部痛:頸椎症,頸肩腕症候群,中心性脊髄損傷等の頸部・上肢痛(しびれ)への治療とリハビリテーション.ペインクリニック.2018;39(別冊春):S109–S114.

・橋口 宏.総論:頚肩腕症候群・肩関節周囲炎.MB Orthopaedics.2015;28(5):51–56.

先生から一言

頚肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)は日常的にとてもよく遭遇する疾患であるにもかかわらず、整形外科医が治療に悩む疾患でもあります。
薬物治療だけではなく、職場環境調整、生活環境改善、運動習慣の確立など,患者さん自身が積極的に治療にかかわることが大切です。完全に治ることを目標にしてしまうと途中で挫折して症状が慢性化してしまうことも多く、まずは小さな目標(一日20分運動する、パソコン作業の合間にストレッチメニューを組み込む)をたてて、少しづつ症状の改善を目指していきましょう。リハビリテーションも有効です。

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