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あし(下肢) の痛み・しびれ
ハンター管症候群(伏在神経障害)
ハンター管症候群(伏在神経障害)とは
ハンター管症候群は、ハンター管の出口での伏在神経(Saphenous nerve)の圧迫により引き起こされます。
伏在神経とは、大腿神経から分岐し、そけい部を通って下腿の内側に広がる神経です。この神経は感覚を伝えるもので、運動機能に影響を及ぼすことはありません。
この神経が障害されると、膝から下腿の内側にかけて痛みやしびれを感じることがあります。
さらに、下腿の内側の伏在神経に沿って痛み、しびれ、そして圧痛を感じることもあります。伏在神経に沿った痛みは常に存在するわけではなく、足首の内側に向かってチクチクするような痛みを時折感じたり、足首の内側が時々痺れたりすることもあります。
診断の難しい疾患であり、膝の変形性関節症や腰のヘルニア、膝の半月板損傷と誤診されやすいことが知られています。
ハンター管における伏在神経の圧迫により膝から下腿の内側にしびれや痛みが生じます
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ハンター管症候群(伏在神経障害)の原因
多くの伏在神経障害は、大腿の内側にある「ハンター管」への圧迫によって引き起こされます。この圧迫された部分を軽くたたくと、下腿の内側に感じる感覚が出てくることがあります。これをTinelサインと呼び、神経が再生する部分や圧迫されている部分で現れます。
多くの場合、ハンター管による圧迫が原因となりますが、稀に、縫工筋、鵞足部の滑液包炎、外骨腫、外傷などが原因となることがあります。
また人工関節の術後にハンター管症候群が発症したとの報告もあります。原因として、過度な四頭筋のトレーニングや手術前後の下肢のアライメント(足のかたち)の変化による伏在神経の牽引、手術後の腫れや駆血帯による神経の圧迫などが考えられます。
ハンター管症候群(伏在神経障害)の検査
画像検査や血液検査などで診断することは難しく、MRI、エコー、筋電図による典型的な所見もありません。詳細な診察が重要で、特にハンター管直上に強い圧痛を認めることが多いとされます。ただし、患者さん自身はこの部位に痛みを感じることはなく、あくまで膝の内側に痛みを感じているので、医師が注意深く圧痛ポイントを探ることが必要となります。圧痛は伏在神経が関節裂隙と交差する部分でも確認できます。
ハンター管でのリドカインブロックは診断と治療を同時に行うための有効な方法の一つです。ハンター管は大腿の深部を走っているため、通常の短い23G針では届かないこともあり、針の長いカテラン針を使用します。
ハンター管症候群(伏在神経障害)の治療
神経障害性疼痛の治療薬であるプレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)の投与が効果的です。投薬後2週間程度で徐々に改善が認められますが、改善までの期間には個人差が大きい印象があります。眠気やふらつきなどの副作用があり、注意が必要です。
投薬で改善が不十分であれば、ハンター管内にブロック注射を施行します。膝を約70度曲げ、大腿部を外旋させ、大腿骨の内上顆から約10cm近く上方、大腿部の前後のほぼ中央の圧痛の強い場所にリドカイン、ないしステロイドの混注の注射を行います。伏在神経に正確に針が当たると、足首の内側まで放散痛が得られます。そのため、痛みの放散部位が普段の症状と同じかどうかを確認することによって診断の役にも立ちます(診断的治療といいます)。
より確実な診断のために、エコーガイド下での注射を行うこともあります。
上記の保存治療で改善しない場合、神経の圧迫を除去する手術が検討されます。