整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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こどもの整形外科

反応性関節炎(ReA)

反応性関節炎とは

反応性関節炎(ReA)は、特定の感染後に生じる無菌性の関節炎です。1999年の国際ワークショップにより、ReAはHLA-B27と関連し脊椎関節炎症候を伴うものと再定義されました。これは泌尿生殖器や腸管、一部の気道感染によるものに限定され、古典的ReAと呼ばれます。一方、これ以外の感染後に起こる非化膿性関節炎は、感染関連関節炎と呼んで区別することが推奨されました。発症機序や治療方針が異なる両者を正しく分類することは、的確な診断と管理を行ううえでの重要な基盤となっています。

反応性関節炎の症状

反応性関節炎(ReA)は自覚症状や身体所見が多岐にわたる疾患で、発症には先行感染が重要な役割を果たします。原因となる泌尿生殖器や腸管、一部の気道における感染は、尿道炎や下痢などの典型症状を伴わない無症候性のケースもあり、検査で初めて判明することも少なくありません。通常、感染から2~4週間後に非対称性の少関節炎や結膜炎、尿道炎などが急性に発症します。患者の約半数は6か月以内に自然消退し、多くは1年以内に完治しますが、一部で重症化や長期化が見られる場合は、症状の持続期間を短縮するためにも適切な治療が必要です。

骨関節症状としては、下肢を中心とした単関節炎や少関節炎が特徴的です。多くは数週間から数か月で治癒する一過性のものですが、15~50%の症例で再発が報告されています。また、アキレス腱や足底腱膜などの付着部炎、約40%の患者にみられる指趾炎もReAを示唆する重要な所見です。仙腸関節炎や脊椎炎などの体軸病変は末梢病変に比べると頻度は低いものの、HLA-B27を保有する患者では発症しやすい傾向にあります。

関節外の症状も多彩に現れます。泌尿生殖器系では、特にクラミジア感染に続いて無菌性尿道炎や子宮頸管炎が約60%の割合で認められ、男女ともに分泌物の増加や排尿困難が生じることがあります。眼病変は患者の50~70%と高頻度で、結膜炎のほか、ぶどう膜炎などの重篤な病変によって視力低下を招く恐れがあるため、異変を感じた際は早急な眼科受診が推奨されます。そのほか、口腔潰瘍や膿漏性角化症といった皮膚粘膜症状、まれに大動脈炎などの心病変を伴うこともあります。

反応性関節炎の原因

反応性関節炎(ReA)の病態に関わる遺伝的要因として、HLA-B27が重要な役割を担っています。患者の50〜80%がこの因子を保有しており、保有率が高い集団ほど発症率も高い傾向にあります。HLA-B27保有患者は非保有者に比べて症状が重度で慢性化しやすく、関節外症状を伴いやすいのが特徴です。微生物学的要因では、クラミジアによる尿路感染やサルモネラ等の腸管感染が契機となります。感染した単球や菌の成分が血流を介して関節へ移行し、滑膜細胞内で抗原として機能することでT細胞を活性化させます。その後、Th2/Th1-Th17サイトカインのバランスが変動し、関節炎の急性発症や慢性化が引き起こされると考えられています。

反応性関節炎の検査

ReA(反応性関節炎)の診断においては、検体検査や画像検査、臨床的な鑑別診断が重要です。急性期には炎症反応としてCRPの上昇や赤血球沈降速度(ESR)の亢進が認められますが、リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性です。ReA患者の約50~80%がHLA-B27を保有しているため、この所見は診断の参考になります。特に重要なのは、ReAの発症を引き金とする先行感染を確認することです。

泌尿生殖器感染が疑われる場合には、早朝尿の培養や尿道分泌物、膣分泌物のクラミジア培養、PCR法や血清抗体価の測定が必要です。一方、腸管感染が疑われる場合には、便培養を行い、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター、エルシニアなどの病原体を確認します。さらに、HIV感染者ではAIDS発症前にReAが生じる場合があるため、HIV抗体検査も行います。

関節液の分析も診断に役立ちます。ReA患者の関節液では10,000~50,000/HPFの白血球が検出され、好中球が優位を占める所見が多くみられます。関節液中に菌体成分やDNAが存在することは報告されていますが、生菌は認められず、通常、細菌培養は陰性です。

画像検査では、単純X線撮影によって末梢関節炎や付着部炎を有する患者に軟部組織の腫脹や腱付着部の骨増殖が認められることがあります。体軸病変を有する場合には、仙腸関節のびらんや硬化がみられることがあり、多くの場合、片側性です。脊椎病変については、強直性脊椎炎にみられる縦方向の骨増殖とは異なり、水平に伸びる非対称性の骨増殖が特徴です。さらに、超音波検査やMRI検査は、滑膜炎や付着部炎を高精度で同定できるほか、仙腸関節や脊椎の骨髄浮腫の検出にも優れています。

ReAの診断には確定的な方法がなく、病歴や症状のパターンを総合的に評価して診断を行います。1996年に提唱された分類基準は存在するものの、診断基準としては確立されていません。診断の鍵となるのは、詳細な病歴の聴取に基づき、ReAの発症を引き起こした先行感染を特定することです。

また、ReAの鑑別診断も重要です。急性の単関節炎または少関節炎を引き起こす他の疾患として、化膿性関節炎、播種性淋菌感染、ウイルス性腸炎に伴う関節炎、Whipple病、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、ベーチェット病、結晶誘発性関節炎、ライム病、サルコイドーシスなどが挙げられます。これらの疾患を臨床的特徴や症状のパターンをもとに慎重に除外したうえで、最終的にReAの診断を下す必要があります。

このように、ReAの診断は多角的なアプローチを必要とし、検体検査や画像検査の結果、臨床症状を組み合わせて行われます。適切な診断が確立することで、治療方針の決定に大きく寄与することが期待されます。

反応性関節炎の治療

ReA(反応性関節炎)の効果的な管理と治療には、先行感染および関節炎症状を標的としたアプローチが求められます。まず、先行感染の治療に関して、腸管感染後のReAに対する抗菌薬治療の有効性を示すエビデンスは現在のところありません。しかし、クラミジア感染が原因となるReAの場合には、抗菌薬治療が有益である可能性が指摘されています。特にクラミジア感染では、感染の拡大や再発を防ぐために、患者本人だけでなく、セックスパートナーにも抗菌薬治療を行うことが重要です。

急性関節炎に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択肢となります。NSAIDsは疼痛管理に効果的であり、多くの患者は短期間(約2週間)の投与で十分な治療効果を得ることができます。これらの治療に反応が見られない場合や、多関節炎を伴う場合には、ステロイドの全身投与が考慮されます。軽症例ではプレドニゾロン(PSL)を1日20mg程度から投与開始し、中等度から重症の症例では40mg程度の投与が推奨されることがあります。いずれの場合も症状に応じて速やかに減量を行います。NSAIDsやステロイドが無効である場合、さらに症状が進行している場合には、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)であるサラゾスルファピリジン(SASP)やメトトレキサート(MTX)の使用が検討されます。

慢性関節炎の治療には、DMARDsが主に用いられます。NSAIDsやステロイド、SASPのいずれにも効果が見られない場合にはMTXが選択肢となりますが、ReAに対するMTXの有効性を直接支持するエビデンスは乏しいのが現状です。ただし、末梢関節病変を伴う強直性脊椎炎の治療経験に基づき、MTXが適用されることがあります。さらに、付着部炎や指趾炎を伴う慢性ReAの患者でNSAIDsが無効な場合、またはSASPやMTXを最大量使用しても3~4か月間効果が見られない場合には、TNF阻害薬が考慮されます。TNF阻害薬の有効性に関するエビデンスは症例報告や小規模な研究に限定されていますが、これらの薬剤は重症例における治療選択肢として期待されています。また、IL-6阻害薬であるトシリズマブが一部のReA患者で有効であったという報告もあります。

このように、ReAの管理と治療は、患者ごとの症状の程度や進行状況に応じて個別化される必要があります。適切な治療を選択することで、症状の軽減や疾患の進行抑制を図り、患者の生活の質を向上させることが目指されます。

参考文献)

・反応性関節炎, 谷ロ義典. 炎症と免疫vol,32 no.1 2024.

記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)

先生から一言

反応性関節炎は若年性関節リウマチやIgA血管炎に伴う関節炎など、ほかの多彩な疾患との鑑別が重要になります。単純X線検査のみならず、血液検査、関節液検査など必要に応じて追加検査を行います。小児科医への紹介を検討することもあります。

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