整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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DISEASE DETAILS 疾患一覧

あし(下肢) の痛み・しびれ

梨状筋症候群

梨状筋症候群とは

坐骨神経が坐骨切痕を通過し、骨盤の外側に出る部分で、何らかの理由により梨状筋に圧迫または刺激が及ぶと、疼痛が引き起こされます。この状態を梨状筋症候群と呼びます。股関節が内旋し、梨状筋が伸展する際に、筋肉間で坐骨神経が圧迫されることで、痛みやしびれを感じることがあります。この症候群は比較的まれな疾患であるため、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの脊椎関連の疾患との鑑別が必要となります。

梨状筋の中を走行する坐骨神経が筋肉に挟み込まれることで痺れが出ます

梨状筋症候群の原因

梨状筋症候群は、股関節の外旋筋である梨状筋が通常とは異なる形状や走行をしているため、近接する坐骨神経を圧迫し、下肢にしびれや痛みを引き起こします。これは骨盤出口部で起こる典型的な絞扼性神経障害の一つです。この梨状筋の解剖学的形態異常は、1937年にBeatonらが死体の解剖結果から通常のTypeAからTypeFまで6型に分類し報告しています。梨状筋が2頭に分岐し、その間を坐骨神経が走行するBeatonのTypeD、変異のないTypeA、坐骨神経も2頭に分岐しているTypeBなどがあります。

 この疾患の発症誘因としては、軽度の外傷が最も多く、その次に立ち座りの動作の繰り返し、硬い椅子での長時間の座位、腰椎の手術などが挙げられます。しかし、約60%の例では明確な誘因が存在せず、日常生活中に発症します。

梨状筋症候群の症状

この疾患の主要な臨床症状は、骨盤部から下肢にかけての強烈なしびれ・痛みで、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の症状との識別が難しい疾患です。いわゆる坐骨神経痛の症状を呈し、下肢痛の部位は坐骨神経の走行経路に一致します。大腿部・下腿部では外側から後面にかけて、足部では足背・足底に痛みが現れます。この疾患の痛みの部位の特性としては、通常の腰椎疾患では足部の痛みが足背に限定されることが多いのに対し、梨状筋症候群では足底全体に痛みやしびれが発生します。

また、動作時の痛みの特性としては、腰椎疾患では歩行により痛みが増し、安静時には軽減することが多いのに対し、梨状筋症候群では座った状態で痛みが増し、痛みのある側の腎部を持ち上げることになったり、立ち上がりや座る動作時に痛みが強くなることが多いです。一方で、歩行により痛みが軽減するというパターンを示すこともあります。

神経学的所見としては、多くは感覚障害も運動障害も見られず、しびれや痛みの訴えのみで、他覚所見が乏しいことが特徴的ですが、逆にこのことが本疾患の診断根拠になり得ます。また、腰椎椎間板ヘルニアにおいては一般に見られるSLRテストが、本疾患でも陽性を示すことが多いため、椎間板ヘルニアと誤診される可能性があります。

本疾患の特性を調査するために、FreibergテストやPaceテストなどの誘発テストが存在しますが、それらの陽性率は低く、私たちの経験上、それぞれ約30%と15%にとどまります。

斎藤らは「腹臥位内旋テスト」を開発し、うつぶせにして、膝関節を90度屈曲させ、股関節を強制的に内旋させることで梨状筋の筋緊張を増すことで坐骨神経痛を誘発されると報告しています。腎部に痛みが現れたり、下肢に痛みが放散すると陽性とし、同じ姿勢を維持したまま患者の腎部の梨状筋部に強い圧痛が認められた場合は弱陽性とします。本検査は陽性率が92.4%であり、従来の誘発テストを診断率で上回る非常に有用な手法であると報告されています。

梨状筋症候群の検査

MRIやMRニューログラフィーによる検査が有用とされる報告も存在しますが、実際のところは左右の坐骨神経の比較による診断は困難であり、画像診断は確定的ではありません。

それに対して、電気生理学的な手法であるSEP(脊髄性感覚誘発電位)による診断は、陽性率が90%以上とする報告もあり、術前の確定診断に適しています。腹臥位での安静時の電位と、腹臥位内旋テスト時のストレス電位を比較し、潜時の遅延や振幅の低下をもとに診断を行います。これは非常に有用な検査法であるとされますが施行可能ね施設は限られているのが現状です。

梨状筋症候群の治療

保存治療と手術治療の2つに大別されます。

保存療法としては、安静や鎮痛剤の投与はほとんど効果が見られないことが多く、一方で温熱療法や梨状筋のストレッチが有効な場合があります。しかしながら、完全な治癒を目指す場合には、梨状筋部のブロックが唯一効果的な保存療法といえます。このブロックにより、疼痛が完全に消失したり鎮痛剤なしで日常生活が可能となる症例はわずか20%に過ぎず、手術を必要とすることも少なくありません。

手術は通常、全身麻酔下で梨状筋切除を行い、神経への圧迫を解除します。術後の結果は非常に良好であり、術後2年間のフォローアップでは、症状が消失した者から改善した者までで90%以上を占めています。ただし、この疾患の特徴として、症状が手術直後から劇的に改善するわけではなく、数ヵ月から1年かけて疼痛が徐々に軽減していく症例が多いことを事前に認識しておく必要があります。

参考文献)

・齋藤 貴徳ら. 梨状筋症候群とはどんな病気ですか?Locomotive pain Frontier voL5 No.2201

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