整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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こどもの整形外科

漏斗胸

漏斗胸とは

漏斗胸ないし鳩胸は、胸郭が過度に陥凹(漏斗胸)または突出(鳩胸)してしまう胸郭変形疾患です。その発生頻度は、漏斗胸が800〜1000人に1人、一方で鳩胸はその1/10〜1/5となっています。主に心窩部周辺が変形の中心となりますが、漏斗胸では陥凹が上下に長く広がる場合や、胸郭が非対称に陥凹する(右側が多い)場合もよく見られます。

漏斗胸の場合、小学生までは自覚症状がほとんどありませんが、中学生頃から陥凹した胸骨が心臓を圧迫し、胸痛や呼吸困難を引き起こすことがあります。一方、鳩胸は胸腔内の臓器に影響を及ぼすことはほとんどなく、見た目の問題が主です。どちらの疾患も、幼児期に積極的に外科治療を行うことは稀ですが、保存的治療の適切な時期を逃さないよう、早期からの定期的な外来診療のフォローアップが重要となります。

漏斗胸(ろうときょう)は前胸部が陥凹する疾患です

漏斗胸の原因

明確な発生メカニズムはまだ解明されていません。胸郭の成長に対して肋軟骨が過度に成長し、その余分な長さを補正するために肋軟骨が胸骨と一緒に脊柱方向またはその反対方向に曲がることで、前胸部が陥凹し(漏斗状になる)という理論が考えられています。

乳児期には陥凹が軽度で目立たないことが多く、幼児期から思春期にかけて骨の成長とともに徐々に変形が進行します。陥凹の発症や進行に、上気道閉塞や呼吸障害などが関与するとされており、高度の扁桃肥大やアデノイド増殖を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群の子どもでは、漏斗胸の合併や進行が見られることが知られています。

漏斗胸の症状

新生児期には胸郭が柔らかいため、呼吸不全や上気道閉塞疾患があると吸気時に陥凹呼吸を引き起こし、漏斗胸のように胸骨が陥凹することがありますが、呼吸が改善すると胸骨の陥凹も改善することが多いです。

新生児期や乳幼児期に漏斗胸を確認し、呼吸症状(多呼吸、陥凹呼吸、咳)を伴う患者の中には、心疾患や先天性囊胞性腺腫様奇形、縦隔腫瘍、気胸、横隔膜弛緩症、横隔膜ヘルニアなどの基礎疾患が潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。

その他、開胸手術後(心疾患、先天性食道閉鎖症、先天性肺気道奇形など)、神経筋疾患(エーラース=ダンロス症候群)、マルファン症候群、ポーランド症候群などの先天異常が漏斗胸を合併することが知られています。

以上のような事項を考慮に入れると、漏斗胸の確認とその治療法選択は、単に見た目の問題だけでなく、全体的な健康状態、呼吸症状、そして関連可能性のある他の疾患についても評価する必要があります。そのため、適切な医療アドバイスと早期の介入が重要であると言えます。

漏斗胸の検査

乳幼児期には、健康診断で見つかったり、ご家族が気づいて心配されて受診することが多いです。乳幼児で漏斗胸が見つかった場合、出生時の体重や週数、呼吸に関連するケアの有無、また喘息や上気道炎の過去の病歴などを確認します。診察では、呼吸による胸骨の陥凹があるかどうかを観察します。睡眠中にいびきや無呼吸の症状がある場合には、耳鼻科医と相談し、扁桃腺やアデノイドの肥大の評価を行い、場合によっては手術を行うこともあります。

学童期以降は、身長が伸びて胸の陥凹が深くなったり、他人から指摘されて自分自身が気にするようになって受診することが多いです。診察時には、風邪を繰り返し引く、運動時の胸痛や胸の不快感、動悸、運動能力の低下などの訴えが子どもやご家族から多く聞かれますが、これらの症状と漏斗胸の陥凹との直接的な関連性は明らかではありません。しかし、手術後にこれらの症状が改善したとの報告をよく受けます。

漏斗胸の子どもは、痩せ型で背が高く、大胸筋などがあまり発達しておらず、猫背の傾向があります。陥凹が深くて極端に背が高い、腕や指が細長く、関節が柔らかいなどの特徴がある場合、マルファン症候群の可能性が考えられます。その場合、小児科での正確な診断と、小児循環器科や眼科での検査を行います。

漏斗胸の診断には、胸部のCT検査が非常に有用です。漏斗胸の評価には「Haller指数」がよく使われます。これは、胸腔の左右の幅を胸骨の最も陥凹した部分から脊柱までの長さで割った数値で、Haller指数が3.2以上である場合、手術が適応とされます。胸郭の形状を十分に評価した上で、保存的な治療(手術をしないで様子を見る治療)や外科的な治療(手術による治療)を選択する必要があります。

以上の情報を理解し、医療チームと良好なコミュニケーションを取りながら、最適な治療法を選択することが重要です。不明点や心配事があれば、遠慮なく医療スタッフにご相談ください。

漏斗胸の治療

1) 理学療法(2歳~7歳頃)
体の姿勢を整えることで、胸の凹みを修正することが可能な場合があります。漏斗胸体操(例えば、オットセイ体操、ブリッジ、ヨガのラクダポーズなど)を日々実践し、また筋力や体力を上げるために、特に上半身を使うスポーツ(水泳、ダンス、器械体操など)を推奨しています。

2) 吸引療法(6歳~15歳頃)
胸の凹み部分に「バキュームベル」という吸盤のような装置を使い、その部分を吸引する方法です。吸引は1日に1~2回、15~30分程度行います。特に小学生の間に行うと効果が期待できます。ただし、治療の目的を理解し、自分から進んで治療に取り組む気持ちが大切です。保険が適用されないため、装置の購入費用が必要です。しかし、この方法によって状態が改善すれば、手術を回避できる可能性もあります。

3) 手術(12歳頃~)
胸の凹みが改善しない場合や、思春期になって初めて気になり始めた場合などには、手術を考えることがあります。手術の指針として、「Haller index」が3.2以上の場合がありますが、この数値だけではなく、個々の患者さんの気持ちや生活の状況を総合的に考慮します。胸骨を挙上するNuss法は、現在一般的に行われる手術方法で、形態改善だけでなく心肺機能の改善も期待できます。

手術を受ける最適な時期は、以前は6歳頃とされていましたが、再発や手術後の胸の変形を避けるため、現在では思春期(12歳以降)が一般的になっています。また、軽度の側弯症がある場合も、思春期に漏斗胸の手術を行うと、側弯症に対しても良い影響があると報告されています。

手術後は、痛みを抑えるために積極的に鎮痛薬を使用します。おおよそ1週間後には退院できる場合が多く、運動は手術から約3か月後から再開できます。その後は、3~6か月ごとに病院に通って、手術で入れたバーがずれていないかをX線で確認します。

バーは約3年間体内に残す必要がありますので、激しい運動は避ける必要があります。学校の授業や部活動など、患者さんの日常生活を考慮しながら、手術の時期を決定します。

この手術後の胸の見た目の改善により、患者さん自身の満足度は非常に高いとされています。体のイメージや体力、他人からの反応についても、手術後には肯定的な変化が見られることが、日本人の調査結果でも明らかにされています。

手術加療により肉眼的な陥凹を是正することができますが、外科治療の適応となることは多くありません

参考文献)

・越智崇徳ら. 漏斗胸,鳩胸の治療はある? 小児内科 Vol. 54 No. 6,2022‒6

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