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肩の痛み
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)とは
石灰沈着性腱板炎は、肩の腱板内にリン酸カルシウム(石灰)が原因不明のまま沈着して炎症を起こし、強い肩の痛みと可動域制限を生じる病気です。30~50歳代に多く、とくに女性に多いとされます。しばしば夜間に突然の激痛で発症し、痛みで眠れなかったり肩を動かせなくなることがあります。臨床的には、石灰が形成されて目立たない時期から、吸収が進んで強い炎症と痛みが出る時期、炎症が落ち着いて組織が修復される時期へと移行していくのが典型的な経過です。
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)の原因
腱の損傷や血流の悪化、腱の老化などが要因と考えられています。
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)の症状
肩腱板内に沈着した石灰によって急性の炎症が生じる事によって起こる肩の痛みが主な症状です。疼痛のために夜眠れないこともあります。運動の制限もでてきて、自動挙上は30°以下にあることが多いです。石灰病変の発生部位は、棘上筋肩部が80%、棘下筋腱部が15%、肩甲下筋腱部が5%といわれています。私の外来での印象では圧倒的に棘上筋腱部に多い印象を受けます。棘上筋と棘下筋の境界部に多いとの報告もあります。ときに腫脹、発赤がみられ、C反応性蛋白(CRP)が陽性となり、化膿性肩関節炎(感染症)を疑わせることがあります。

石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)の検査
単純X線で石灰沈着の有無を確認します。撮影は正面像・肩甲骨Y像・腋窩位を併用するのが望ましく、初期は石灰が小さく診断が難しいことがあります。なお、石灰が写っても必ず石灰沈着性腱板炎とは限らず、いわゆる四十肩の症状と重なっている場合もあります。必要に応じてエコー検査(超音波)で腱板断裂の合併などを評価します。
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)の治療
治療はまず安静の確保と痛みのコントロールを優先します。内服で不十分な場合は、透視下またはエコー下でステロイド含有の局所麻酔薬を注射し、炎症と疼痛の軽減を図ります。圧痛部に局所麻酔薬を注入して石灰の吸引を試みることもありますが、実際には吸引できない例が多く、できれば幸運といえる程度です。
痛みが落ち着いても可動域の低下が残る場合は、リハビリテーションを追加して肩の動きを回復させます。慢性期には、肩峰下への注射を複数回行うことも検討します。石灰は消えることも残ることもありますが、無症状であれば残存していても経過観察で問題ありません。

石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)の手術療法
6か月以上にわたり症状が慢性化し、インピンジメントサインが陽性で、石灰病変が大きい場合は手術療法も検討されます。手術では鏡視下石灰切除術、腱板縫合、肩峰下除圧術などを併用します。石を取り出すときに腱板を多少なりとも傷つけないといけないので、修復も同時に行うということになります。当院では手術が必要な方は肩関節外科の専門医が在籍する基幹病院へのご紹介します。
参考文献)
・超実践!肩の外来診療. メジカルビュー社.
・柴田 陽三.肩石灰沈着性腱炎.日本医事新報.2024;5236:48–50.
・永瀬 雄一.肩関節痛で考えるべき疾患とその鑑別法.診断と治療.2023;111(6):749-754.

先生から一言
石灰沈着性腱板炎は強い肩の疼痛が生じる疾患です。痛みが強くて、肩を押さえながら診察室に来る人もいます。注射で早く症状がとれることも多いです。