整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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股関節唇損傷

股関節唇損傷(Hip Labral Tear)とは

股関節を構成する寛骨臼(股関節を構成するくぼみの部分)と大腿骨が接する部位の軟部組織である関節唇がダメージを受けた状態のことです。股関節唇は、股関節のソケット部分にある軟骨の輪です。股関節は、大腿骨の頭(大腿骨頭)が球で、骨盤の一部(寛骨臼)がソケットである、球とソケットの関節です。股関節唇は、股関節が脱臼しないように安定化させ、関節液を関節内に貯留させ、摩擦なく動かせるようにします。

股関節唇の裂傷の程度は様々です。時には、股関節唇に微小な裂傷が生じたり、端がほつれたりすることがあります。これは通常、股関節唇に加齢などの要因で徐々に摩耗が加わることで起こります。股関節唇の一部がソケットの骨から分離したり、裂けたりすることもあり、通常は外傷によって起こります。

股関節唇損傷の原因

股関節運動によって寛骨臼と大腿骨頭がぶつかり合うことで生じる“Femoroacetabular Impingement(FAI)”が原因となります。股関節唇は、インピンジメントの結果として、または加齢に伴って徐々に裂けていきます。特定のスポーツや職業での繰り返しの股関節の動きや過度の使用、外傷による股関節の損傷、股関節の加齢に伴う摩耗、股関節の形状の異常(股関節形成不全や骨の異常な形状が股関節のインピンジメントを引き起こすこと)などがあり、これらは股関節唇への負荷を蓄積させて断裂を引き起こします。また、変形性関節症も原因となります。変形性関節症と股関節唇の裂傷の関係は双方向で、関節炎による軟骨の侵食が股関節唇の裂傷に寄与することがあり、股関節唇の裂傷は数年後に関節炎を発症することがあります。

股関節唇の裂傷の原因は、裂傷の位置によって異なることがあります。前方の股関節唇裂傷は通常、バレエ、ゴルフ、サッカー、アメリカンフットボール、ホッケーなどのスポーツでの反復動作によって引き起こされます。後方の股関節唇裂傷は通常、転倒、事故、または高衝撃のスポーツ損傷などの外傷によって引き起こされます。

バレエなどのスポーツが原因となります

股関節唇損傷の症状

特に歩いたり走ったりした時、股関節、鼠径部、または臀部の痛みが生じます。夜間安静時でも疼痛を感じることがあります。股関節のこわばりや可動域制限、動かした時に股関節でクリック音やロックされる感覚があることもあります。股関節唇裂傷は症状を引き起こさないこともあり、何年にもわたって気づかれないことがあります。

ランニング中に股関節痛を感じやすくなります

股関節唇損傷の検査

身体診察で、関節の腫れや炎症の兆候、股関節の可動域、痛みを引き起こす動作を評価します。X線検査で股関節の形状や整列アライメント異常、変形性関節症性変化を確認します。さらに、MRI検査で股関節周囲の軟部組織、特に股関節唇の損傷を確認します。補助的に超音波ガイド下の関節内注射をを行い、それが痛みを和らげる場合、原因が股関節唇の裂傷である可能性が高いと考えることができます。

股関節唇損傷の予防

股関節唇損傷の予防は難しいとされます。その理由は、多くの裂傷が股関節の形態異常(FAIがある場合)、変形性関節症や予期せぬ怪我によって引き起こされるからです。

スポーツやその他の身体活動中の注意事項としては、身体活動中やその後に股関節が痛む場合は、痛みを我慢して「そのままプレイ」しないでください。 激しい活動の後には、休息をとり、疲労を回復させる時間を取ってください。 スポーツをする前や運動をする前には、ストレッチとウォームアップを行い、身体活動の後にはクールダウンとストレッチを行ってください。

股関節唇損傷の治療

股関節唇にダメージを与える動作やスポーツを中止し、消炎鎮痛剤や湿布などの使用します。ステロイドと麻酔薬を股関節に注射することで、一時的に痛みと炎症を和らげることもできます。下肢のリハビリテーションも有効です。保存治療で多くの症状は改善に向かいますが、痛みが強く日常生活に支障をきたしている場合は、手術によって股関節唇の修復や骨の形成手術を検討します。


股関節唇の裂傷を修復する最も一般的な手術は関節鏡手術です。関節鏡と呼ばれる特別なカメラ装置の助けを借りて、股関節唇の裂傷を特定したのち、ほつれた股関節唇の断片を取り除いたり、裂傷を縫合したりします。股関節唇の裂傷が股関節のインピンジメントによって引き起こされた場合、骨の形を形成して股関節が滑らかに動くようにします。

参考文献)

・スポーツ整形外科学

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