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肩の痛み
肩関節唇損傷
肩関節唇損傷とは
外傷(打撲、捻挫、肩関節脱臼)、スポーツ(野球、ラグビー、アメフト)、仕事などで繰り返される肩関節への負荷により、肩関節が脱臼しないよう堤防のような役割をしている関節唇が引っ張られ、関節窩から剥がれてしまうことで損傷します。
剥がれた関節唇が上腕骨頭と関節窩の間に挟まってしまうと肩を動かしたときに痛みを感じたり、関節唇が損傷することで肩関節不安定性が生じ、肩が抜けるような不安感を感じます

肩関節唇損傷の分類・症状
肩関節唇損傷は2つのタイプに大きく分類できます
①Bankart損傷
肩関節の不安定性を訴えることが多い、関節前下方の関節唇損傷です
また関節唇に加えて、下関節上腕靱帯(inferior glenohumeral ligament;IGHL)の緩みを認めることも多く、肩関節の不安定性を増大させています。
肩関節の初回脱臼後は保存療法で治療しますが,スポーツないし日常生活で何度も脱臼が再発しし、反復性肩関節脱臼と診断されてしまうと打球の制動のため手術療法が必要となります。
②SLAP(superior labral anterior posterior)損傷
打撲、捻挫、脱臼などの外傷、使い過ぎ(overuse)により生じる肩関節上方の関節唇損傷です。
野球などのスポーツによるものも多くみられ、Bankart損傷と比較するとリハビリテーションで症状の改善が得られることも多いです。
SnyderらはSLAP損傷をさらに以下の4つに分類しました
TypeⅠ:上方関節唇に毛羽立ちがあるが、剥離がない
TypeⅡ:上方関節唇が肩甲骨関節窩から剥離している
TypeⅢ:上方関節唇にバケツ柄断裂を認める
TypeⅣ:上方関節唇のバケツ柄断裂が上腕二頭筋長頭腱(LHB)にまで広がっている

参考文献)
Snyder SJ, et al:SLAP lesions of the shoulder. Arthroscopy 6 : 274–279, 1990.
Zahab S. Ahsan et al:The Snyder Classification of Superior Labrum Anterior and Posterior (SLAP) Lesions. Clinical Orthopaedics and Related Research : volume 474, 2075–2078, 2016.
肩関節唇損傷の検査
医師の問診では、スポーツ、仕事での肩の使用状況や症状が出現する時期、転倒や打撲などの発症の原因、痛みが出る肩の姿勢を詳しく聴取します。
理学所見では、Obrienテスト、Clunkテストなどの疼痛誘発テストを行います
レントゲン画像では不安定性の結果による肩関節の変形所見を認めることもあります
MRIで上方関節唇、前後の関節唇の剥離所見を認めれば診断できます
肩関節唇損傷の治療
まずは投薬、リハビリテーションによる保存治療を3~6か月行います
腱板の機能訓練、肩関節ストレッチ、肩甲骨のポジション矯正、野球などのスポーツのフォームチェックを中心にしたリハビリを行います。
また疼痛のコントロールのために関節内注射、鎮痛薬処方、外用薬処方を併用します
それでも改善を認めない場合、手術療法を検討します
Snyderの分類に応じて手術方法は変わります。デブリードマン(痛んだ組織を除去する)、医療用アンカーを用いた関節唇固定、上腕二頭筋長頭腱の修復などがあげられます。
通常の関節唇損傷であればほぼ全例で症状が改善するといわれますが、投球傷害としての関節唇損傷ではスポーツへの完全復帰率は50~90%にとどまるとの諸家の報告があります