整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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股関節の痛み

脚長不等

脚長不等とは

脚長不等(Leg length discrepancy)とは、さまざまな原因により「左右の下肢の長さが異なる状態」です。下肢の骨の長さに差がある構造的脚長不等と、骨の長さに差がない機能性脚長不等に分類されます。

健常者でも左右の脚長が等しいのは10%で、90%には1cm未満の脚長不等があるとされています。1cm未満の脚長不等では、患者自身が股関節や膝関節を伸展させて代償的に下肢を延長させたり、屈曲させて短縮させたりすることで、臨床的に無症状であることが多いです。しかし、1cmを超える脚長不等では、脚長不等が大きくなるほど臨床的な諸問題が生じるようになります。

脚長不等が長期にわたると、機能性脊柱側弯症により椎間板変性が進行し、脊椎変形が生じます。下肢延長側の股関節では、立位で骨盤傾斜により機能性臼蓋形成不全となり、変形性股関節症に進行することがあります。

脚長不等の原因と分類

①構造的脚長不等

構造的脚長不等は、先天性と後天性に分けられます。

先天性の構造的脚長不等
先天性大腿骨短縮症や先天性脛骨列欠損症、先天性腓骨列欠損症、点状軟骨異形成症などの骨系統疾患では、下肢短縮を生じます。また、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群やクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群、特発性片側肥大症などでは、下肢延長が見られます。

後天性の構造的脚長不等
骨端線損傷を伴う骨折や大腿骨頭すべり症、骨髄炎や化膿性関節炎、脳性麻痺、二分脊椎、ポリオ、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、ぺルテス病、多発性内軟骨腫症(オリエール病)、多発性骨軟骨腫、神経線維腫症、若年性特発性関節炎などが原因となり、下肢短縮が生じることがあります。また、骨折や感染、手術後の治癒過程で血流が増加し、下肢延長が生じることもあります。

②機能性脚長不等

股関節や膝関節に屈曲拘縮があると、股関節や膝関節を完全に伸展できず、患側の下肢が短くなります。また、尖足があると、患側の下肢が延長されます。関節弛緩により膝関節が内反、外反や過伸展(反張)し、その程度に左右差があると脚長不等を生じます。発育性股関節形成不全で片側の股関節脱臼があると、骨盤傾斜による脚長不等を引き起こすことがあります。

脚長不等の症状

歩行開始前の乳幼児期では、先天性疾患に伴う脚長不等により、欠趾症や裂足などの足部の奇形や下肢変形があり、下肢の太さに左右差があります。また、発育性股関節形成不全で片側の股関節脱臼があると、機能性脚長不等が生じ、脱臼側の膝の位置が非脱臼側より低くなります(Allis sign)。

歩行開始後では、下肢長の短い側の肩が下がる硬性墜下性跛行があり、骨盤傾斜を伴い機能性脊柱側弯症が生じます。機能性脊柱側弯症は、特発性脊柱側弯症とは異なり脊椎の回旋を伴わず、脚長を補正すると改善します。腰痛や股関節や膝関節の疼痛を生じることがあり、腰痛は主に下肢短縮側に、股関節痛は下肢延長側に生じることが多いです。膝関節痛は下肢短縮側と延長側の両側に生じることがあります。脚長不等が長期にわたると、機能性側弯症により椎間板の変性が進行し、脊柱変形が生じます。また、下肢延長側の股関節では、立位で骨盤傾斜により機能性臼蓋形成不全となり、変形性股関節症に進行します。

股関節や膝関節に屈曲拘縮があると、患側の下肢が短縮し、尖足があると患側の下肢が延長する機能性脚長不等が生じます。

脚長不等の検査

病態生理からみた診断のための臨床検査

診察では、下肢長は上前腸骨棘から脛骨内果までの距離である棘果間距離(SMD)を用いて測定するのが一般的です。股関節中間位で計測することが大切であり、左右の股関節の内外転肢位が異なると大きな測定誤差が生じることに注意する必要があります。

全下肢の単純X線撮影を立位で行い、下肢長差を計測します。関節弛緩が強く、立位で膝関節が内反、外反や過伸展(反張)する症例では、臥位でも撮影し、立位でのX線像と比較します。通常の全下肢の単純X線撮影では、膝関節の高さにX線の管球を置いて撮影しますが、管球から離れる部位ほど拡大率が大きくなるため、実際の下肢長差よりX線像での下肢長差が大きくなる欠点があります。

一方、股関節・膝関節・足関節の3か所に管球を動かしてX線撮影を行うことで、より正確な下肢長差を測定することが可能ですが、下肢全体の撮影ができないため下肢変形を評価できない欠点があります。

スロット撮影(スロットラジオグラフィ:SLOT radiography)は、スリット状のX線を連続照射できる装置を平行移動させながらX線撮影し、自動的につなぎ合わせることで、低線量で歪みが小さく高精度な下肢長差の計測が可能です。脊椎から全下肢まで1枚の画像に合成した長尺撮影も可能です。筆者は、スロット撮影により、脊椎から全下肢まで長尺撮影を行い、骨頭上縁からの下肢長差と、骨盤上縁からの下肢長差を計測し、機能性側弯症を含めて評価しています。

脚長不等の治療

①成長終了時の下肢長差の予測

成長終了時の下肢長差を予測し、治療の時期や方針を決定します。先天性脚長不等では、後天性脚長不等よりも成長とともに直線的に下肢長差が増加することが多く、成長終了時の下肢長差を予測しやすいです。下肢長差を予測する方法の例として、Andersonらは、5歳以降、下肢は年3.5cm、大腿骨で年2cm、脛骨で年1.5cm成長すると報告し、これをもとに成長終了時の下肢長差を予測します。Menelausは、男児が16歳、女児が14歳で骨端線が閉鎖し、大腿骨遠位骨端線で年1cm、脛骨近位骨端線で年0.6cm成長すると仮定し、暦年齢で成長終了時の下肢長差を予測する方法を報告しました

成長終了時の脚長不等が1cm以上であれば、前述の臨床症状を生じることがありますが、症状は個人差が大きいため、患者や家族とよく相談して、脚長不等の原因である基礎疾患に応じた治療方針を決定します。

②治療方法

脚長不等が1~3cmであれば、足底板や靴底の加工による補高で脚長を補正します。補高の高さは、脚長不等の50~70%で作製します。足底板は1cmを超えると靴が脱げやすくなり、装着感が悪くなるため、1cmを超える場合は靴底を加工して調整します。

脚長不等が2~4cmであれば、骨端成長軟骨発育抑制術を行います。矯正骨端線閉鎖前の骨成長に手術を行い、骨端線を一時的に固定することで、下肢長の長い側の成長を抑制する方法です。筆者はエイトプレートシステムを用いて固定しています。矯正は原則的に最大2年間行い、脚長不等が残る場合は、抜釘して6カ月後に再度固定します。

脚長不等が3cm以上であれば、大腿や下腿で創外固定器を用いた骨延長術を行います。股関節や膝関節の変形や拘縮、尖足や内反足などの足部変形がある場合は、骨延長術を行う以前または同時に、筋解離や腱延長などの軟部組織の解離や関節拘縮の解離を行います。骨延長部の仮骨形成に応じて、1日0.5~1cmで延長します。大きな延長量が得られますが、手術侵襲が大きく、骨癒合するまでに長期間の創外固定器の装着が必要です。

③合併症の診断・治療・予防

脚長不等の原因となる基礎疾患を診断し、成長終了時の脚長不等の程度を予測して治療することが大切です。脚長不等が大きくなると、骨盤傾斜を伴い機能性脊柱側弯症を生じ、これは脚長を補正すると改善します。

下肢の骨長に左右差がなくても、発育性股関節形成不全による片側の股関節脱臼では脱臼側の下肢が短縮し、股や膝関節の関節拘縮では患側の下肢が短縮し、尖足では患側の下肢が延長する機能性脚長不等が生じます。

④症状経過・検査所見からみた予後判定

脚長不等が長期にわたると、機能性脊柱側弯症により椎間板変性が進行し、脊椎変形が生じます。下肢延長側の股関節では、立位で骨盤傾斜により機能性臼蓋形成不全となり、変形性股関節症に進行することがあります。

これらの情報をもとに、適切な診断と治療を行うことで、患者の生活の質を向上させることができます。

参考文献)

・小児内科 vol. 54, 増刊号 2022. 和田晃房.

先生から一言

うまれつきの構造的脚長不等はクリニックで見ることは通常ほとんどありません。骨折などの外傷、骨端症、もしくは加齢に伴う変形性関節症による脚長不等はクリニックでもしばしば見かけます。各々の原因に応じて治療方針は異なるので、まずはどの程度の脚長差があるのか、原因となっている疾患は何かを突き止めることが重要です。特に未成年の患者さんでは診断が難しいことも多く、小児整形外科の専門医の診察が必要となることもあります。

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