整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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けが(外傷)

足関節捻挫

足関節捻挫(足関節新鮮外側靭帯損傷)とは

いわゆる足関節の内がえしの捻挫をさし日常生活やスポーツ活動(サッカー、バスケ、バレーなどジャンプ競技で多い)において発生する足関節外側靭帯の損傷、ないし断裂を指します。全世界で一日当たり10000万人に1人受傷するといわれており、非常に頻度の高い外傷です。足関節外側靭帯は前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靱帯で構成されています。本損傷の8割程度は前距腓靭帯の単独損傷、残り2割程度は前距腓靭帯と踵腓靭帯の複合損傷であり、後距腓靭帯の損傷は稀です。

足関節外側の靱帯構造
足関節外側の靱帯構造(Copyright © 2022 Lineage Medical, Inc. All rights reserved.)

足関節新鮮外側靭帯損傷の原因

スポーツ動作時の切り返し動作、ジャンプでの着地に伴って起こることが多く、外傷が発症契機となります。またスポーツに夢中になっていると、どのタイミング、どのような動作で痛みが出たか気づきにくいこともあります。当院を受診される方でも、はっきりとこの動作が原因です、と覚えている人のほうが少ない印象です。

足関節新鮮外側靭帯損傷の症状

足関節の骨、靭帯周囲に腫脹や圧痛を認めます。重度損傷(断裂)では歩行不能となることもあります。軽症例では歩行およびスポーツも可能なことがあります。靭帯損傷があるのにスポーツを無理に継続することによってより靭帯損傷が高度となるリスクがあるので、本症を疑った場合には疼痛が消失するまでの十分期間の患部安静を取ることが大切です。

足関節新鮮外側靭帯損傷の診断・検査

外傷が生じる機転、触診によってほとんど容易に診断することが可能です。スポーツ動作時の切り返し動作、ジャンプでの着地に伴って起こることが多く、最も多い受傷肢位であるうちがし(足関節内反)での疼痛出現であればまず本損傷を疑います。

足関節腓骨周囲に皮下出血、腫脹、圧痛を伴うことがほとんどです。

足関節外側靭帯損傷時にみられる皮下出血

圧痛点を慎重に見極めることにより前距腓靭帯の単独外傷なのか、踵腓靭帯の合併損傷があるのかを判別することが可能です。またこれまでに捻挫をしたことがあるか(再発か、新鮮損傷か、足関節の不安定性があるのか)、体重をかけたときに疼痛の増強があるか(軟骨損傷を合併しているか?)を確認することも重要です。

従来は靭帯損傷に伴う不安定性の評価としてストレス下レントゲンという、内反させながら撮影するレントゲン技法が用いられていましたが疼痛を伴うため負担が大きいという問題点がありました。近年では組織分解能の高い超音波検査が可能となり、より低侵襲に靭帯損傷の程度を診断することが可能です。小児では腓骨の下端前方における靱帯性裂離骨折となることが多く、就学前児童では骨がまだ出現したいないためレントゲンでの確認が困難となります。

靭帯断裂は、長谷川分類:Grade 1~3に分類されます

GradeⅠ:前距腓靭帯の過伸長または部分断裂

GradeⅡ:前距腓靭帯の完全断裂

GradeⅢ:前距腓靭帯および踵腓靭帯、後距腓靭帯の完全断裂

足関節新鮮外側靭帯損傷の治療

重症度分類により治療方針が決定され、まずは保存治療が選択されます。

Ⅰでは装具による患部安静固定、Ⅱでは短下肢ギプスによる固定が行われます。ギプスを途中で装具に変更することもあります。

固定期間は疼痛や腫脹に応じて2~4週間で、固定除去後から速やかに足関節の可能域訓練を開始します。Ⅲでは保存加療を行わず、速やかな断裂部靱帯縫合を試みることもあります。特に距骨傾斜角が25度を超えるような不安定性を持つ症例が手術の適応です。

基本的には多くは保存加療となりますが、適切な固定を行っても20%程度に足関節の不安定性が残存する可能性がある疾患(甘く見てはならない)ことを知っておく必要があります。スポーツ復帰はおおむね3~6週間が目安となり、所属チーム、活動度によっても異なります。

靱帯が伸びたままになったり、切れたままになると、足関節捻挫後の後遺症を残すことがあります。捻挫は侮れません。スポーツや競技を「休むべき時は休む勇気」が必要です。

参考文献)

・今日の整形外科治療指針 第8版

・専門医の整形外科外来診療

先生から一言

足関節外側新鮮靭帯損傷(いわゆる捻挫)は、「たかが捻挫」と甘く見られがちな外傷です。
しかし初期治療を誤ると足関節の不安定性、慢性的な疼痛が残存しやすく、早期に変形性関節症に移行してしまう症例も存在します。
まずは整形外科専門医の診察により足関節靭帯損傷のGradeを見極め、適切な初期加療を行うことが何よりも重要です。
特に「スポーツ競技を休むべき時は休む!」ことを明言することも専門医の重要な役割だと考えています。
競技を休んでいる間は当院でのリハビリ(理学療法)を通じて、体の知識を学ぶ、けがしにくいトレーニング方法を身に着ける、など今後の競技人生に役立つ工夫をお伝えすることが可能です

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