DISEASE DETAILS 疾患一覧
骨粗鬆症
関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫の異常によって関節の内側にある滑膜に炎症が起こり、関節が少しずつ破壊されていく慢性の全身性の病気です。手指の痛みや腫れ、朝のこわばりが続くなど「なんとなくおかしい」段階で治療を始められると、関節の変形を防ぎ、普段の生活やお仕事を守ることができます。現在は薬の進歩により、「寛解」と呼ばれる症状のない良い状態を目標にすることが可能です。そのためには早期診断と、早期治療が大切です。
このような症状があれば受診してください
・朝起きたときに手指がこわばって動かしにくい
・手の指や足の指、手首などが左右ともに腫れて痛む
・原因不明のだるさや微熱が続く
・手足の関節が前より動かしにくくなってきた
・血液検査でリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陽性と言われた
・家族に関節リウマチの方がいる、喫煙・歯周病などのリスクがある
概要(関節リウマチとは)
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)は「遷延化する破壊性の関節炎」とされ、放置すると関節の腫れと炎症が続き、やがて関節の隙間が狭くなったり骨が欠けたりして変形していきます。関節だけでなく、倦怠感・微熱などの全身症状、間質性肺疾患や唾液腺炎など関節外の臓器障害を伴うこともあります。日本では約1%、およそ80万〜90万人の患者さんがいるとされ、特に30〜60代の女性に多くみられます。関節破壊は発症早期から進むため「早く見つけて早く炎症を止める」ことが何より重要です。現在の国際的な治療方針では、関節の炎症の強さ(SDAI・CDAIなど)や画像所見、合併症を総合的に評価し、「寛解」もしくはそれに近い低疾患活動性を目標に治療を進めます。
関節リウマチの原因
はっきり一つの原因がわかっている病気ではなく、遺伝的な素因に喫煙・歯周病・女性ホルモンの変化・腸内環境などの環境要因が重なって、自己免疫のしくみが乱れることで発症すると考えられています。自己免疫が乱れると、もともと自分の体の一部であるはずの関節の成分を「異物」とみなし、免疫細胞が滑膜に集まって炎症を起こします。炎症が長く続くと、炎症を促すサイトカイン(TNFやIL-6など)が多く作られ、骨や軟骨を壊す方向に働きます。喫煙歴や歯周病は発症や進行のリスクとなるため、生活面の聞き取りも診断の手がかりになります。
関節リウマチの症状
典型的には、手の指の第二関節(PIP)、付け根の関節(MCP)、足の指の付け根(MTP)、手首、肘、膝など多くの関節が左右対称に腫れて痛みます。朝のこわばりは特徴的で、起床直後に手が握りにくい・指が曲がりにくい状態が長く続きます。進行するとレントゲンで関節の隙間が狭くなり、手指が外側に曲がる、手首が変形するなど日常生活に支障が出てきます。全身症状として倦怠感、微熱、食欲低下、体重減少を伴うこともあります。DIP関節(指の一番先)や脊椎の症状が前面に出ることはまれですが、それだけで関節リウマチを完全に否定することはできません。
関節リウマチの検査
診断は一つの検査だけで決めるのではなく、症状・身体所見・血液・画像を組み合わせて行います。血液検査ではCRPや赤沈の上昇といった炎症反応、リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体が参考になります。抗CCP抗体は発症前から陽性になることもあり、陽性の方は症状が軽くても慎重に経過をみる必要があります。画像検査では、X線で関節周囲の骨粗鬆や関節裂隙の狭小化、骨びらんが分かりますが、発症早期には変化が乏しいことも多く、関節エコーで滑膜の肥厚や血流の増加をみたり、MRIで骨髄の浮腫や滑膜炎を評価したりして早期の炎症をとらえます。これらを踏まえて、2010年のACR/EULAR分類基準などを参照しながら総合的に診断します。

関節リウマチの治療
治療の大原則は「早期診断して、早期に炎症を鎮め、寛解に導き、それを安全に維持すること」です。現在の標準的な流れは次のようになります。
まず禁忌がなければ、第一選択としてメトトレキサート(MTX)という従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD)を使います。開始前には胸部X線、肝炎ウイルス、結核などのスクリーニングや血液・肝腎機能の確認を行い、安全に使えるかを確認します。MTXを十分量使用しても3カ月で改善が乏しい、6カ月で寛解に届かないといった場合には、TNFやIL-6、T細胞共刺激などを標的とする生物学的製剤(bDMARD)を追加したり、ほかのcsDMARDを組み合わせたりしてコントロールを高めます。ステロイド(グルココルチコイド)は炎症を素早く落ち着かせる目的で短期間・少量で併用し、可能な限り減量・中止していくのが基本です。
それでも活動性が高い場合や、注射・点滴ではなく経口薬でしっかり治療したい場合には、JAK阻害薬という新しいタイプの分子標的薬を検討します。JAK阻害薬はトファシチニブ、バリシチニブ、ペフィシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブなどがあり、サイトカインが細胞内で情報を伝える「JAK–STAT経路」をピンポイントで抑えることで炎症を鎮めます。多くは1日1〜2回の内服で使用でき、生物学的製剤と同等かそれ以上の効果が報告されている一方で、帯状疱疹などの感染症、血栓症、心血管イベントなどのリスクに注意が必要です。特に高齢者、喫煙歴がある方、心血管リスクのある方では「ほかの選択肢がないときに慎重に使う」という考え方が推奨されており、投与前のスクリーニングと投与中の定期的な採血・診察によるモニタリングが不可欠です。
関節リウマチの手術療法
薬によってもなお関節の破壊や変形が進んでしまった場合には、手の機能や歩行を保つために人工関節置換術や関節固定術などの手術を検討します。ただし現在は早期から適切な薬物治療が行われることが多く、手術に至る方は以前より減ってきています。
関節リウマチと骨粗しょう症
関節リウマチでは炎症やステロイドの影響で骨粗鬆症が起こりやすく、わずかな転倒でも骨折するリスクが高まります。病勢を抑えることに加えて、骨密度検査で骨の状態を定期的に確認し、必要に応じてデノスマブ(プラリア)などの骨粗鬆症治療薬を併用することで、将来の骨折予防につなげます。投与前には低カルシウム血症がないかを確認するなど、安全性のチェックを行いながら進めます。
最後に:リウマチでお悩みの方へ
関節リウマチは、今では「進行して当然の病気」ではなく、「早く見つけて適切に治せば寛解を維持できる病気」になってきました。その一方で、JAK阻害薬を含む分子標的薬はとてもよく効く反面、安全に使うための準備と定期的なモニタリングが欠かせません。疑わしい症状があれば早めに受診し、関節の状態・血液・合併症を総合的にみながら、あなたに合った治療計画を立てていきましょう。
参考文献
・田中良哉:関節リウマチ.薬局 76(2): 226-231, 2025.
・浅野 貴大:関節リウマチの診断、間違われやすい疾患.診断と治療 111(6), 2023.
・浮地 太郎:関節リウマチ.診断と治療 111(2): 75, 2023.