整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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腰の痛み

ぎっくり腰(急性腰痛)

急なぎっくり腰(急性腰痛)の多くは良性で、適切な対処で〜3か月で改善します。まずは受診を急ぐサイン(発熱、がんの既往、夜も続く強い痛み、足のしびれ・力が入らない 等)がないか確認。安静は最小限にとどめ、鎮痛と早期の運動・リハで再発を防ぎます。必要に応じてトリガーポイント注射等のブロック注射にも対応。重い病気が疑われる場合は連携医療機関でMRIを撮影し、当院で結果をわかりやすくご説明。整形外科専門医が原因から評価し、最短の回復をめざします。

ぎっくり腰(急性腰痛)とは

急に起こる強い腰の痛みのことを指し、一般には「ぎっくり腰」と呼ばれます。腰痛は日本の調査でも自覚症状としてとても多く、男性で第1位、女性で第2位を占めます。生涯のうち最大で約80%の人が経験するとされ、珍しい症状ではありません。

多くは自然に良くなる良性の経過をたどりますが、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症による圧迫骨折(“いつのまにか骨折”)、骨の腫瘍・転移などが隠れていることもあります。こうした「危険な腰痛」を見分ける目安としてRed Flag(レッドフラッグ)サインがあり、初期の見極めが大切です。

症状の続く期間で目安をつけます。発症から4週間未満が急性、4週間以上3か月未満が亜急性、3か月以上が慢性です。とくに高齢の方では日常生活への影響が大きくなりやすいため、状態に合った説明と計画的な治療・リハビリが重要になります。非特異的腰痛の50~60%は2週以内に軽快し、6週で約90%が改善、一方で全体の約5%が慢性化するといわれています。

腰痛は人類にとって最も多い症状といわれています

腰痛の原因・種類

腰痛は大きく特異的腰痛非特異的腰痛に分けられます。非特異的腰痛は、画像所見で明確な器質的病変を特定できないタイプで、全体の約85%を占めるとされ、いわゆるぎっくり腰、筋・筋膜性腰痛、仙腸関節痛などが含まれます。
一方、胸腰椎圧迫骨折、腰椎椎間板ヘルニア、骨転移を含む腫瘍性病変、解離性大動脈瘤などの循環器疾患、尿路結石などの泌尿器科疾患が原因となる場合は特異的腰痛に分類され、画像検査は主としてこれら重篤疾患の除外を目的に行います。
問診では痛みが体動で誘発されるか否かの確認が重要です。体動で誘発される痛みは急性腰痛症や変性疾患、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症を、体動で誘発されない持続痛は尿路結石や大動脈疾患など内臓由来を示唆します。発症機転(重量物運搬、打撲・捻挫、長時間の不良姿勢、前かがみ作業の継続)、加齢による椎間板の摩耗や関節変形も整形外科的疼痛の背景になり得ます。

参考文献をもとに当院で作成

ぎっくり腰(急性腰痛)の症状

強い腰痛のため動けなくなることがありますが、一般的には1か月程度で改善し、3か月以内に約90%が自然軽快します。重篤疾患の見落としを避けるため、Red Flagサインの有無を確認し、若年・高齢発症、原因不明の持続痛、ステロイド内服や骨粗鬆症の存在、悪性腫瘍の既往、発熱・体重減少、裂けるような激痛、膀胱直腸障害や会陰部知覚低下などが認められる場合は、悪性腫瘍、感染、骨折、硬膜外圧迫症候群、大血管疾患を優先して除外します。所見が揃わない場合は重症度が低いことが多く、非特異的腰痛として保存的に扱います。
評価は病歴の整理から始め、発症様式、増悪・緩解因子、痛みの性質、部位と放散、随伴症状、重症度、時間経過を丁寧に確認します。体動での誘発性や夜間痛の有無、叩打痛、神経学的異常の分布、神経根レベルに一致する感覚・運動・反射の所見を系統的に診ます。

重大な疾患が隠れている兆候(Red Flag)

若年・高齢での初発、原因不明の持続痛、ステロイド内服や骨粗鬆症の背景、担癌・体重減少・発熱、裂けるような痛み、叩打痛の強さ、片側下肢優位の放散痛、膝下までのしびれや麻痺、会陰部知覚低下や膀胱直腸障害、両側下肢麻痺などは、生命・機能予後に影響し得る疾患を示唆します。複数所見が合致する場合は速やかに必要な血液検査や画像検査を追加し、病態に応じて適切な専門治療へつなげます。

参考文献をもとに当院で作成
参考文献をもとに当院で作成

ぎっくり腰(急性腰痛)の検査

レントゲンは初期評価で骨折・腫瘍・感染などの重篤疾患を除外することが主目的です。Red Flagや明らかな神経根所見がなく非特異的腰痛が疑われる場合は、まず対症療法と経過観察を行い、4〜6週間で改善が乏しい、悪化する、あるいは神経学的所見が進行する際に段階的に精査を追加します。重篤病態を疑うときは初期段階からMRIを実施しますが、MRI検査は連携医療機関での施行(他院で撮影→当院で説明)となります。

ぎっくり腰(急性腰痛)の治療

非特異的腰痛の基本方針

過度の安静よりも活動継続(Stay active)が回復に有利です。ベッド上安静は可能なら2日以内にとどめ、以後は許容範囲で普段通りの活動・日常生活を再開します。急性期はNSAIDs、慢性期は運動療法を中核とし、慢性例では認知行動的アプローチを含む集学的治療を推奨します。慢性非特異的腰痛は原則として手術適応外です。

トリガーポイントブロック注射(保険適応)

腰痛の早期改善にはトリガーポイントブロック注射が有効です。ご希望があれば、予約不要で診察室内ですぐに施行できます。

薬物療法

まずはアセトアミノフェンまたはNSAIDs(消炎鎮痛薬)を使います。胃腸や腎臓に不安がある方は、胃腸障害が少ないCOX-2選択薬を検討します。アセトアミノフェンは比較的安全ですが、飲みすぎは肝障害の原因になるため用量を守りましょう。温める治療(温熱療法)も急な痛みの軽減に有効です。痛みが筋けいれんを伴うタイプでは筋弛緩薬を短期間だけ補助的に使うことがあります(眠気・ふらつきに注意)。一般用のロキソプロフェンは入手しやすい一方で胃腸・腎障害や喘息の誘発などの副作用があるため、自己判断で飲み続けず医師の指導下で使用してください。妊娠・授乳中や高齢で合併症リスクが高い方はアセトアミノフェンを優先します。

慢性化や“痛みの感じ方の過敏(痛覚変調性)”が関与する場合は、デュロキセチンと痛みを悪化させない有酸素運動の併用が有効です。効きが不十分なときは弱オピオイド(例:トラマドール)を短期間のみ検討しますが、便秘・吐き気・眠気、そして依存のリスクを必ず評価します。強オピオイド(フェンタニル・モルヒネなど)は原則使いません。三環系抗うつ薬は一部で有効報告がありますが、当院では使用していません。プレガバリン(リリカ、タリージェ)等の神経痛の薬は坐骨神経痛には選択肢ですが、非特異的腰痛だけの場合は通常使いません。

ノイロトロピンや漢方(芍薬甘草湯など)は症例を選んで補助的に用いています。

運動・再発予防

再発予防と自己管理の強化には、体幹安定化エクササイズの指導が有効です。個々の症状と背景に合わせて、安全に運動療法や手技療法を導入します。薬だけに頼らず、早期からの軽い活動・運動療法、認知行動療法やストレス対処を組み合わせることで、再発予防と回復が進みます。

腰痛の再発予防(リハビリテーション)

慢性腰痛の再発予防にはリハビリテーション(運動療法)が基本であり、ガイドラインでも日常生活動作(ADL)の向上や社会復帰の促進などの効果が示されています。脊椎の安定化を目的に体幹筋力を強化しつつ、柔軟性の改善や姿勢・動作の再学習を組み合わせ、痛みの原因となる筋・関節・神経の部位を正確に見極めたうえで、増悪を避けながら適切な強度で継続することが重要です。当院では症状と生活背景に合わせて個別プログラムを作成し、疼痛軽減と再発抑制、生活の質(QOL)向上を目指して、安全に運動を進めます。気になる症状が続く場合や再発を繰り返す場合は、早めにご相談ください。

腰痛の再発予防に有効な治療は何と言ってもリハビリです!
腰痛の再発予防には理学療法士によるリハビリが有効です
参考文献)

・齋藤兄治.第11回 急性腰痛症の鑑別と対処法.泌尿器外科.2018;31(1):63-67.

・厚生労働省. 平成28年 国民生活基礎調査の概況. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/index.html (accessed 2025 Oct 21).

日本整形外科学会,日本腰痛学会 監修;日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会 編. 腰痛診療ガイドライン2012. 東京: 南江堂; 2012.

・松平浩.腰痛.産科と婦人科.2025;92(9):1009-1013.

・井上 泰一,竹下 克志.非特異的腰痛と薬物療法.MB Orthopaedics.2024;37(10):96–100.

監修:三国ゆう整形外科 院長 曽我部 祐輔(整形外科専門医)

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