DISEASE DETAILS 疾患一覧
肘の痛み
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
ゴルフ肘(Golfer’s elbow)とは
ゴルフ肘(上腕骨内側上穎炎)は、肘の内側の近くに痛みがでる疾患です。上腕骨の内側上顆にある前腕の回内・屈筋群、特に円回内筋と榛側手根屈筋の共通腱の骨への付着部の炎症です。その頻度はテニス肘の15~20%と言われ、主に30~50代の男性に多く見られます。男女比は2:1で、男性が多いとされています。また、50%の患者さんは尺骨神経の症状を伴うことも知られています。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の原因
腕を過度に使用するスポーツ、ゴルフだけでなく、テニス、野球、ウェイトトレーニングなどのスポーツや工事現場での作業など職業性負荷も含まれます。
他にも職業や趣味において、同じ動きを繰り返すことで前腕の筋肉や腱に過度な負担が蓄積し、ゴルフ肘を引き起こします。例として、キーボードの使用、ガーデニング、工具の使用などがあげられますが、他にも様々な活動が原因となりえます。
ゴルフ肘のリスクファクターは、40歳以上であること、1日に少なくとも2時間以上、繰り返し活動を行っていること、肥満であること、喫煙者であることも指摘されています。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の症状
肘の内側の痛みや圧痛を生じます。痛みは時に前腕の内側に沿って広がることがあります。特定の動作で痛みが悪化することが一般的です。また肘が硬く感じられ、握りこぶしを作ると痛みが出ることがあります。尺骨神経が刺激され、薬指と小指にしびれが出ることがあります。ゴルフ肘の痛みは突然でたり、徐々でたりと様々で、ゴルフクラブを振るなど、特定の動作で痛みが悪化することがあります。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の検査
前腕を回内したり、手関節を屈曲させると、疼痛が生じます。尺骨神経の症状は、Tinelサインや肘屈曲試験、尺骨神経脱臼や尺骨領域のしびれ、筋力低下などをもとに診断します。
レントゲン検査では、変形性肘関節症や遊離体を確認します。稀に上腕骨の内側上穎の屈筋・回内筋の起始部に石灰化が見られることもあります。症状が慢性化してくると、MRIでの異常所見(T2高信号:炎症を反映)が認められることがあります。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の治療
まずは患部への負荷を避けることが重要です。具体的には急に握力を加えて握るような動作を避けることが望ましいとされます。あわせて前腕の回内屈筋群のストレッチングを行います。
患部を数日間、1日3~4回、15~20分間、氷枕で冷やします。皮膚を保護するために、氷嚢を薄いタオルで包んでください。1日2~3回、5分間ずつ、内側の肘を氷でマッサージすると効果的かもしれません。カウンターフォースブレースは、腱と筋肉の負担を軽減します。痛みが強い場合は上腕骨の内側上穎にステロイドの局所注射をしますが、組織を痛めてしまうため頻回の注射は避けなければいけません。
ストレッチと筋力訓練も重要です。腱をトレーニングエクササイズで徐々にならしていきます。痛みがなくなったら、スポーツや業務を徐々に再開します。理学療法士と一緒にゴルフやテニスのスイングを見直し、必要であれば技術の修正を行います。
ほとんどのゴルフ肘は、休息、氷、痛み止めで改善します。手術はめったに必要ありませんが、6〜12ヶ月の保存的治療に反応しない場合、手術となることがあります。上腕骨の内側上穎の回内屈筋群の起始部を取り除き、瘢痕組織を切除し、起始部を修復します。肘関節鏡視下手術で関節包や屈筋・回内筋の起始部を取り除くこともできます。
参考文献)
・上腕骨外側・内側上穎炎の診療と最近のトピックス. MB Orthop. 28(9):9-14, 2015.
先生から一言
ゴルフ肘はテニス肘についでよく見る肘の痛みを伴う疾患です。スポーツだけではなく、工事現場の作業などの職業性負荷が原因となって発症する方が多い印象を受けます。安静、ストレッチ、クーリングで徐々に改善していきますが症状が長引くことも多いです。