DISEASE DETAILS 疾患一覧
スポーツによる障害
シンスプリント
シンスプリント(Shin splints)とは
下肢の代表的なスポーツ障害のひとつで、下腿のすねのうちがわ(下腿遠位の後内側部)に痛みを生じます。ランニングアスリートの6〜16%に発症するといわれ、非常に頻度の高いスポーツ障害です。はっきりとした疾患の定義はなく病態は様々で、長趾屈筋腱付着部、ヒラメ筋付着部、後脛骨筋付着部の牽引ストレスによる微細損傷、同部の脛骨骨膜炎などが原因になると考えられています。
シンスプリントの原因
筋肉が骨の付着部を繰り返し牽引することによる炎症説、骨の表面の膜である骨皮質の脆弱化による変性説がありますが正確な原因はわかっていません。発症にはアスリートの内的因子(年齢、体型、筋力、下肢バランス、筋肉や関節の柔軟性など)と外的因子(路面の硬さ、シューズ、練習量・内容など)が複雑に絡み合っていると考えられています。
シンスプリントのリスクファクター
特に発症リスクが高いとされるのは、ランニングを始めたばかりのランナー、運動の期間、頻度、または強度を急に増加させた場合です。さらに、山などの不整地や、コンクリートなどの硬い表面で走るとリスクが高まります。また、扁平足の人も発症リスクが高いとされています。
シンスプリントの症状
典型的な症状は、運動後に生じるすねの内側、もしくは外側の痛みです。痛みのある場所を押さえると激痛があり、ピンポイントな痛みよりも広い範囲で痛みが出る印象があります。安静だけで良くなることも多いですが、徐々に慢性的な痛みに変わってきます。痛みがあるのに無理して運動を続けると脛骨疲労骨折を起こすため、注意が必要です!。治療期間の予測や競技復帰のタイミングを考えるうえで脛骨疲労骨折との鑑別は重要ですが、見分けるのが難しいケースも多々あります。
© Intermountain Health
シンスプリントの検査
シンスプリントの特徴的な画像診断はなく、骨腫瘍や疲労骨折を除外するために行われます。単純X線画像では異常所見を認めないことが多く、MRI所見でも骨膜浮腫や骨髄浮腫が報告されていますが、異常所見が認められないことがよくあります。疲労骨折を強く疑うときはMRI検査が必要です。
シンスプリントの治療
痛みの急性期にはRICE(患部安静、アイシング、圧迫、挙上)を行います。
下肢に負担のかかるスポーツ動作は休み、症状の改善に合わせて徐々にスポーツ復帰を行います。安静期間の目安は2週間〜1ヶ月です。休むべき時はしっかり休むことが大切です。積極的に安静をとることの重要性は軽視されているように感じます。オーダーメイドインソールも有用です。当院ではスポーツインソールを作成可能な装具会社と医療提携を行っております。
合わせて体に負担のかかりにくいフォームへの矯正、筋力強化、ストレッチ、練習内容の見直しや修正が欠かせません。具体的なリハビリとしては下腿三頭筋のストレッチ、足関節や母趾の関節可動域訓練、足の動的アライメントの確認と矯正、後脛骨筋の硬結やスパズムの改善、腰と下肢の矢状面アライメントのチェックがあげられます。シンスプリントはスポーツ指導経験の豊富な理学療法士によるリハビリが特に有効な疾患のひとつであり、当院の得意分野のひとつです。
予防には、適切なバイオメカニクスの獲得や段階的な運動活動の開始といった患者教育が重要です。また、オーバートレーニングを回避することにも焦点を当てます。血中ビタミンDとカルシウム濃度の改善はストレス骨折の発生率を低下させることが示されており、栄養指導も必要です。
リハビリを中心とした保存治療で疼痛が改善することが多いですが、3カ月以上痛みが改善しない難治症例に対しては、外科的手術、体外衝撃波治療(ESWT)などが検討されます。しかし国際衝撃波治療学会の指針ではシンスプリントに対するESWTは、医学的根拠がまだ確立していません。
先生から一言
シンスプリントは陸上を始めとする部活動をしているお子さんにとても多いスポーツ障害です。無理して運動を続けると疲労骨折を起こすこともあり注意が必要です。
治療のためにはスポーツ指導経験の豊富な理学療法士との連携が欠かせません。まずは当院にご相談ください。