DISEASE DETAILS 疾患一覧
手首・手指の痛み
ブシャール結節
ブシャール結節とは
手指の近位指節間関節(PIP関節=指の真ん中の関節)に起こる変形性関節症をブシャール結節といいます。骨棘ができて関節がこぶ状に腫れ、痛みや可動域制限、握力低下をきたします。遠位指節間関節(DIP関節)に起こるものはヘバーデン結節で、ヘバーデン結節の約20%にブシャール結節が合併するとされています。
ブシャール結節はヘバーデン結節と同様に中高年女性に多く、加齢、手の酷使、もともとの変形性関節症の素因などが関与すると考えられます。痛みは時間とともに軽くなる(self-limiting)経過をとることもありますが、報告では約半数で変形が進行し、曲げ伸ばしがしにくくなったり、家事・PC作業など日常生活に支障が出ることがあります。

ブシャール結節の原因
ブシャール結節は、加齢などにより関節軟骨がすり減り、関節面の適合が悪くなることで骨棘形成や関節の腫れを生じます。変形には原因が明確でない一次性(特発性)と、外傷や感染などによる二次性がありますが、ヘバーデン結節やブシャール結節は一次性に分類されます。
主な原因は加齢による軟骨の退行性変化であり、そこに遺伝的素因や女性ホルモンの変動、特に更年期以降のエストロゲン低下などが影響します(更年期障害・メノポハンド)。さらに、長年の手作業やパソコン操作などによる慢性的な機械的ストレス、肥満や糖尿病、心血管疾患などの代謝異常、そして軽度の慢性炎症(いわゆる炎症性老化)も発症や進行に関与するとされています。
ブシャール結節の症状
ブシャール結節では、指の真ん中にあたるPIP関節がこぶ状に腫れてきて、触れるとふくらみをはっきり感じます。関節の中で変形が進むと屈曲拘縮やわずかな側方偏位がみられ、以前より指を伸ばしにくい・曲げにくいといった可動域の制限が目立つようになります。日常動作では、物に当たったときや指を曲げたときにズキッと鋭く痛んだり、夜間にピリピリするような突っ張り感が出たりすることがあります。炎症が強い時期には軽い熱感や赤みを伴うこともあり、そのために握る、つまむ、強く曲げるといった細かい手作業がしづらくなります。ヘバーデン結節を同時に持っている場合は複数の関節が腫れて痛むため、手全体の動きがさらに制限されやすくなります。
ブシャール結節の検査
ブシャール結節の診断は、まず視診・触診でPIP関節の腫大や可動域制限を確認し、そのうえで単純X線検査を行うのが基本です。X線では関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘形成、関節輪郭の不整などがみられます。進行例や炎症性変化を伴うタイプでは、びらんや骨吸収像、皮質骨の破壊を示すことがあり、これはいわゆる erosive osteoarthritis(EOA)と呼ばれる病型に相当します。PIP関節で骨陰影が増強し「カモメが翼を広げたような(gull-wing appearance)」像を示すこともあります。
一方で、手指の変形をきたしうる全身性の炎症性関節疾患、関節リウマチ(RA)や乾癬性関節炎が否定できない場合には、血液検査を追加して鑑別します。関節リウマチが背景にある場合には、抗CCP抗体やリウマトイド因子が高値を示すことがあるためです。
ブシャール結節の保存治療
まず疼痛の軽減と関節の保護・安定化を目的とした保存療法が基本になります。初期にはセレコキシブなどのCOX-2選択的NSAIDsで炎症と痛みを抑えます。冷えを伴う症例では末梢循環を改善する目的でビタミンE製剤を併用することもあります。西洋薬だけで痛みが残る場合は、疎経活血湯、桂枝加朮附湯のような漢方薬を処方します。
炎症や疼痛が一時的に強い場合には、関節内へのステロイド注射を行うこともありますが、軟骨障害を避けるため回数は限定します。あわせて、日常生活で指に負担をかける動作(長時間のPC作業、硬い物をつまむ反復動作など)を一時的に控えると症状が落ち着きやすくなります。
運動療法・リハビリテーションも有効で、痛みが和らいだ段階で関節をゆっくり曲げ伸ばしする訓練や手指の筋力維持を行うと、拘縮の進行や変形に伴う機能低下をある程度防ぐことができます。テーピングや指用の装具(ヘバーデンリング)で患部を支えると痛みが軽くなる場合もありますが、皮膚トラブルを避けるため日中のみの装着とします。
ブシャール結節の手術治療
強い痛みや運動制限が保存療法で改善しない場合には、手術を検討します。主な方法は関節形成術・関節固定術・人工関節置換術の3つです。ブシャール結節では関節の可動性が重要なため、固定術は一般的には選択されません。関節形成術は、骨棘や滑膜を切除して痛みを軽減し、ある程度の可動域を回復させる目的で行われます。関節破壊が進行していても靱帯や骨量が保たれている場合には人工関節置換術を検討します。当院では手術が必要なケースでは、手外科医が在籍する基幹病院にご紹介しています。
参考文献)
・MBMed Reha No. 244: 58-63, 2020 特集:手外科リハビリテーション診療 Heberden結節・Bouchard結節の治療とリハビリテーション
・ヘバーデン結節とブシャール結節の痛みに意苡仁湯とセレコキシブの併用が奏効した1症例.ペインクリニック.2023;44(7):646-650.