DISEASE DETAILS 疾患一覧
肩の痛み
リトルリーグ肩(Little Leaguer’s Shoulder)
リトルリーグ肩とは
リトルリーグ肩とは、主に野球選手やソフトボール選手の中学生や高校生に見られる肩の成長板の障害を指します。投球動作をしたときに肩の前方に鈍い痛みがあり、ボールを速く投げることができなくなります。運動をしていないときでも、肩周囲を押すと痛みがあります。
骨端線閉鎖前の10~13歳の野球少年に発症しやすく、13歳以下の肩の投球時痛は、リトルリーグ肩の可能性を考慮する必要があります。
野球肩とリトルリーグ肩の違いは?
野球肩は野球選手に見られる肩の症状や障害の総称であり、リトルリーガーズショルダーはその中の一つです。同じ意味ではありません。肩のインピンジメント症候群や回旋筋腱炎など、異なる種類の障害が含まれます。これらは主に成人の野球選手に見られ、リトルリーガーズショルダーとは異なる治療アプローチが必要とされる場合があります。
リトルリーグ肩の原因
成長期に投球動作を繰り返すことで、肩に起きる障害の一つです。
投球動作に伴う過度なストレスや反復的な使用により、肩の成長板に微細な骨折や障害が生じ、上腕骨近位骨端線(epiphysis)の離開が起こります。
原因としては、 投げすぎや投球フォームが悪いことが挙げられます。
スポーツの経験年数には関係はなく、 長時間の練習や肩・肘にケガの既往のある方はリスクが高いといわれています。
リトルリーグ肩の症状
コッキング期での肩の外旋と加速期での肩の急激な内旋で大きな回旋力(ねじれ力)が肩関節に加わり、さらにフォロースルー期では遠心力が加わり、上腕骨が遠位に引っ張られる強い力が働きます。
軟骨組織である骨端線は力学的強度が弱いため、投球動作による繰り返す回旋力および引っ張り力により骨端線の離開が生じます。
リトルリーグ肩の検査
身体診察では、肩関節の外旋(上腕下垂位で肘関節を90°屈曲させ、下垂中間位から外旋して肩に疼痛が生じれは陽性)・内旋抵抗テスト(下垂中間位から内旋して肩に疼痛を生じれば陽性)で陽性になるか確認します。
レントゲン検査では、両側の肩関節単純X線正面像を撮影し健側と比べ、骨端線が広がっていないかを確認します。
Ⅰ型(骨端線外側部の離開)・Ⅱ型(骨端線全体の離開)・Ⅲ型(骨端線全体の大きな離開)に分類されます。
リトルリーグ肩の治療
投球回数を制限する、適切な投球フォームを身につける、十分な休息を取る、筋肉のストレッチやウォームアップを行うなどが指導の中心となります。
強い症状があるときは投球動作は数カ月禁止する必要があります。
投球禁止期間は、Ⅰ型(1~2カ月)・Ⅱ型(2~3カ月)・Ⅲ型(4~6か月)が目安になります。
Ⅰ型・Ⅱ型は投球動作禁止の間もバッティングは可能です。
患側の肩以外の脊柱や股関節・足関節などの柔軟性および可動性低下を認めることが多く、肩関節への負担を減らすためにも中止期間中にストレッチや各種運動療法をおこない、コンディショニング向上を図ります。
当院では肩関節のみならずフォームや体の使い方のチェックも併せて柔軟訓練、ストレッチング、筋力訓練も併せた集学的なリハビリテーションを行います。
参考文献)
・ CINCINNATI CHILDREN’S HOSPITAL MEDICAL CENTER.
先生から一言
リトルリーグ肩は、野球少年に診られる方の疼痛です。最近は野球人口が減ったためか、外来で目にすることは昔より少し減ったような気がします。疾患が減ることそのものはよいことかもしれませんが、野球好きとしては、野球人口が減ってすそ野が狭くなっていくのは少し寂しくも感じます。