整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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けが(外傷)

動物咬傷(Animal biting)

動物咬傷(ペット咬傷)とは

動物、ペットにかまれて傷ができることを指します。

動物による咬傷の加害動物として多いのは、犬と猫です。他にも、蛇、サル、ねずみなどのげっ歯類、またヒトによる咬傷も報告されています。 世界では、年間に数千万件の犬による咬傷事故が発生しています。

日本では、環境省の統計によれば、令和2年(2020年)における犬による咬傷事故は4602件報告されており、そのほとんどが飼い犬でした。

日本で最も多いのは飼い犬による動物咬傷です

危険な感染症を引き起こす動物咬傷

動物咬傷は侮られがちな怪我ですが、高確率に創部の感染を引き起こします。包丁などの刃物で切った傷よりも圧倒的に感染率が高く、しかも重症化しやすいので甘く見てはなりません。

創部感染症の主な病原微生物は、動物の口腔内細菌叢と人の皮膚常在菌です。Streptococcus属やStaphylococcus aureusなどの好気性菌、Fusobacterium属、Bacteroides属などの嫌気性菌が関与し、複数の菌種による混合感染がおこります。特に、犬の咬傷ではPasteurella canisやCapnocytophaga canimorsus(脾臓を摘出していると重症になりやすい)が、猫の咬傷ではPasteurella multocidaが、人ではEikenella corrodensが特徴的な菌として知られています。その他の病原微生物としては、猫ひっかき病を引き起こすBartonella henselae、狂犬病ウイルスによる狂犬病などがあります。

動物咬傷のチェックポイント

感染が生じていないかを観察することが最も重要です。表面上は小さな傷でも深部に感染が波及していることがあり注意を要します。「見た目の傷が小さく見える」ことが動物咬傷を侮ってしまう大きな要因となります。感染を放置すると深部の組織が感染で溶かされてしまい、骨がおかされたり、血中に細菌が移行して敗血症となることがあります。

傷から出血が続いている時は止血する必要があります。血管、神経、指の腱などの重要な構造物が損傷していないかの確認も行います。骨折や異物が混入している疑いがある場合は、レントゲン検査を行います。

顔面における複雑な咬傷、骨・腱・関節に達する深い咬傷、神経や血管の障害を伴う咬傷の場合は特に詳しい画像検査や大病院への紹介を検討します。

動物咬傷の治療

最も大切なことはアルコールでの消毒ではなく、「噛まれた傷をすぐに水で洗うことです」。大量の水でしつこく洗い流して傷口の細菌を少しでも減らすことを意識してください。

水で洗うのが何よりも大切!

そして傷パワーパッドやケアリーブなどで傷を密閉しないように注意してください。感染がある場合は密閉すると逆効果になり、細菌が培養しているのと同じことになります。

傷を密閉するのは、細菌を培養しているのと同じです!

当院では、創部を十分に洗浄したのち、その深達度を評価します。異物は取り除き、壊死組織を取り除くデブリードマンを行います。傷があってもすぐに縫合せずに開放創のままにしておき、感染がひどくならないことを確認してから縫合することもあります。

抗菌薬の予防投与は、免疫不全や無脾症などの基礎疾患がある場合や、顔面や手の咬傷、猫咬傷など洗浄やデブリードマンが困難な場合、腱、骨、関節に達する咬傷、浮腫を伴う咬傷などで考慮されます。感染を治療するための抗菌薬としては、アモキシシリン・クラブラン酸、もしくはST合剤とクリンダマイシンが併用されます。

破傷風の予防として、被害者の破傷風トキソイドの接種歴を確認し、予防の必要性を検討します。小児の場合、DPT-IPVワクチン、DPTワクチン、DTワクチンの接種歴を確認します。

狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物に咬まれることで発症します。日本では狂犬病は存在しないため、動物咬傷による狂犬病発症の心配はないと考えられています。狂犬病のリスクがある国で動物咬傷を受けた場合、狂犬病ワクチンの接種が必要です。感染症を専門に取り扱う病院を受診する必要があります。

参考文献)

・咬傷関連感染症. 福島慎二. 小児内科 Vol. 55 No. 4,2023‒4

・Harper MB:Infection following bites. In Long SS,Pickering LK, Prober CG:Principles and Practice of Pediatric Infectious Diseases, 3rd ed, Elsevier, pp525‒530, 2008

先生から一言

動物咬傷は日常的に遭遇する頻度の高い外傷です。
見た目の傷が小さく見えることが多く侮られがちですが、深刻な感染症を引き起こすことも少なくありません。
感染がひどくなる前にすぐに整形外科を受診しましょう。

私は自分自身が猫にかまれてひどい感染を起こした体験から、重症化する前に治療を行うことの必要性をしっかり患者さんに説明するようにしています。

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