DISEASE DETAILS 疾患一覧

股関節の痛み
変形性股関節症
受診の目安(こんな症状が続くときはご相談ください)
- 足の付け根や鼠径部の痛みが続く
- 立ち上がりや歩き出しに股関節が痛む
- 階段の上り下りで足の付け根に強い痛みが出る
- 歩行時に体が左右に揺れる、または不安定に感じる
- 靴下を履く、爪を切るなどの動作がしにくい
- 股関節が硬くなり、深くしゃがみ込むのがつらい
- 左右で脚の長さが違うように感じる
- 周囲から歩き方が不自然(跛行)だと指摘された
- 痛みで以前より続けて歩ける距離が短くなった
- 足が上がりにくく、何もない場所で転びやすい
- 股関節の痛みで仕事や家事、運動に支障が出ている
変形性股関節症とは
変形性股関節症は、関節軟骨の変性・摩耗とそれに伴う骨の変化によって、股関節の痛みや動かしにくさを生じる病気です。原因が特定できないものを一次性、他の疾患や形態異常に続発するものを二次性と分類します。日本では80%以上が寛骨臼形成不全(生まれつき股関節の受け皿が浅い状態)に由来する二次性とされ、壮年期以降の女性に多くみられます。発症しやすいのは40~50代で、仕事・家事・育児が忙しい年代のQOL(生活の質)に影響しやすい疾患です。近年は、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)と呼ばれる骨形態の問題が、一次性の一因として注目されています。

変形性股関節症の症状
関節症の初期は、立ち上がりや歩き始めに股関節の違和感や痛みを自覚します。軟骨の摩耗と関節の変形が進むと、歩行などの動作時に痛みが出やすくなり、場合によっては安静時にも続くことがあります。可動域が低下すると、爪切りや靴下の着脱といった深く曲げる動作が難しくなります。
変形が進行すると、患側の脚が相対的に短くなり、中殿筋の筋力低下により跛行(足を引きずる歩き方)やふらつきが生じることがあります。痛みの部位は鼠径部(足の付け根)が最も多く、殿部・太もも・膝周囲・下肢に広がることもあります。
なお、腰椎の病気でも似た症状が出ることがあり、股関節は腰と密接に関係します。股関節と脊椎が互いに影響し合う状態をヒップスパインシンドローム(HSS)と呼び、一方の変形が他方の負担を増大させます。高齢者に多い骨盤の後傾は寛骨臼形成不全のような状態を招きやすく、骨粗しょう症による背骨の微小骨折から股関節症が急速に進行するリスクもあります。

変形性股関節症の原因
日本では変形性股関節症は、発育性股関節形成不全(DDH)に続発する二次性の股関節症が主な原因です。幼少期からの形態的な問題が背景にあり、40〜50代の女性に多く発症するのが特徴です。また、近年は骨同士が衝突しやすい大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)も新たな原因として注目されています。
その他の原因には、関節リウマチや大腿骨頭壊死、外傷などがあるため、適切な診断には幼少期からの治療歴の確認が欠かせません。危険因子には肥満や重労働、高強度のスポーツ歴が挙げられ、形成不全の程度や持続する痛みは進行を早める要因となります。
変形性股関節症の検査
問診では股関節疾患の既往や幼少期の治療・手術歴、家族歴を確認し、古い手術痕が手がかりになる場合もあります。続いて身体診察では、可動域や歩行の状態、筋力を評価し、外転筋力低下に伴うトレンデレンブルグ徴候の有無を確認します。さらに、股関節を屈曲・外転・外旋して痛みを誘発するPatrickテストが陽性となることがあり、鼡径靱帯・長内転筋・縫工筋に囲まれたScarpaの三角(直下に大腿骨頭が位置)に圧痛を認めることがあります。
画像検査はX線が基本で、関節裂隙の狭小化、骨棘、骨硬化、骨嚢胞、寛骨臼や大腿骨頭の変形、両者の位置関係を確認します。必要に応じてCTで骨形態を詳細に評価し、MRIで早期の関節唇損傷や軟骨変性、関節水腫を把握します。なお、痛みが強いにもかかわらず画像変化が乏しい場合には、痛みの感じ方が過敏になる中枢性感作が関与している可能性も考慮します。

変形性股関節症の保存治療(手術以外)
治療は、体重管理と運動、補助具、薬・注射の組み合わせで行います。肥満は関節の負担になるため減量を心がけ、杖などの歩行補助具を活用して荷重を減らすことが大切です。杖は痛む側と反対の手で持つと効果的で、脚長差がある場合は足底板が有効です。
薬物療法はアセトアミノフェンやロキソプロフェン等の抗炎症薬、必要に応じてデュロキセチン等を検討します。関節内へのヒアルロン酸やステロイド注射は短期的な鎮痛に有効ですが、感染リスクに配慮し慎重に実施します。
当院のリハビリテーション
当院の股関節リハビリテーションは、痛みのコントロールと筋力強化による関節の安定化を段階的に進めます。ガイドラインで推奨される運動療法を中心に、大殿筋や大腿四頭筋を鍛えるスクワットやストレッチ、転倒予防のロコトレを個々の状態に合わせて処方します。安全を最優先に正しいフォームを指導し、生活習慣の改善や足底板の活用も支援します。手術が必要な場合も術前から術後まで一貫した計画を共有し、日常生活へのスムーズな復帰をサポートします。

変形性股関節症の手術治療
保存治療で十分な改善が得られない場合は、症状と進行度に応じて手術を検討します。主な選択肢は、関節温存手術(股関節周囲骨切り術)、人工股関節全置換術(THA)、股関節鏡手術の三つです。
当院では、手術が必要と判断される方に対しては、適切なタイミングで基幹病院や人工関節センターへご紹介し、術前評価から術後リハビリまで連携してサポートします。
手術についてもっと詳しく
関節温存手術は、寛骨臼形成不全など骨配列の異常を矯正して関節の負担を減らし、症状の緩和と病期進行の抑制を目指します。適応を満たす若年~中年で活動性の高い方に有効で、報告では長期成績も良好です。股関節鏡手術は、FAIや関節唇損傷が主体で関節面の損傷が軽い場合に検討され、痛みやスポーツ機能の改善が期待できますが、効果持続に関しては症例により差があり、寛骨臼形成不全を伴う場合は成績が低下しうるため慎重な適応判断が必要です。
人工股関節全置換術(THA)は、末期で日常生活に強い支障がある場合に有力な選択で、痛みの除去と機能改善に優れ、長期成績も確立しています。インプラントは一般に、若年で骨質が良好・活動性が高い方ではセメントレス型、高齢で骨がもろい方ではセメント固定型を検討します。近年はナビゲーションやロボット支援の導入により、設置精度向上や合併症リスク低減が期待されています。
予防・再発予防(今日からできること)
まずは体重管理が重要です。5から10%の減量で股関節の負担は大きく軽減します。週2から3回は筋力維持と可動域ストレッチを継続し、痛みに応じて調整しましょう。日常生活では無理なねじれを避け、正しい立ち座りを意識します。靴の工夫や杖の適切な使用も有効です。腰や膝、骨粗しょう症のケアを並行して行うことが、全身の負担軽減と再発防止につながります。
参考文献)
・大江 隆史,岸田 俊二.第4回 ロコモの要因とは?(3)変形性股関節症・変形性膝関節症.整形外科看護.2025;30(1):90-93.
・岩佐 諦,山本 幸祐,三木 秀宣.変形性股関節症患者における筋萎縮および脂肪変性とQOLの関連.Hip Joint. 2025;51:51-55.
・岡上 裕介.『変形性股関節症診療ガイドライン2024改訂第3版』を読み解く.ペインクリニック.2025;46(2):191-197.

先生から一言
変形性股関節症は、股関節の痛みを引き起こす代表的な病気です。 この病気の治療には、減量や、リハビリテーションによって股関節まわりの筋肉を鍛えることが大変効果的です。当院では、痛み止めのお薬だけに頼るのではなく、積極的なリハビリを組み合わせる方針をとっています。そうすることで、可能な限り人工関節の手術を回避し、ご自身の関節で生活を続けていただけることを目指しています。患者さんお一人おひとりの症状や生活背景に合わせて、そのつど最適な治療計画をご提案いたします。どうぞ安心してご相談ください。