整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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腰・背中の痛み

妊娠関連腰痛、産後腰痛

妊娠関連腰痛、産後腰痛とは

妊娠中や産褥期において、もっとも多い身体症状の一つが腰痛です。調査によれば、妊産婦の約30〜90%が妊娠中に腰痛を経験し、産後1年以内では67%、2年後でも21.1%が腰痛を訴えており、慢性化することもあります。

周産期の腰痛は、「妊娠関連腰痛(PLBP)」と「骨盤帯痛(PGP)」に大別され、これらを総称して「腰骨盤痛(LBPP)」と呼びます。腰骨盤痛は日常生活の制限、不眠、心理的ストレスを引き起こす疾患です。

妊娠中の腰痛は生活の質を大幅に低下させます

妊娠関連腰痛、産後腰痛の原因

周産期の腰骨盤痛は、主に以下の3つの身体的変化によって引き起こされます。

① 内分泌系の変化
妊娠中はリラキシン、プロゲステロン、エストロゲンといったホルモンが増加します。中でもリラキシンは関節を弛緩させ、仙腸関節や恥骨結合の可動性が増すことで、骨盤帯痛や腰痛の原因となるせん断力が増加すると考えられています。

② 筋骨格系の変化
腹部が拡大することで腹筋群が伸展され、筋力が弱まり、その分腰部の筋力に負担がかかります。また、重心の変化により、頭部前方位、胸椎後弯増加、腰椎前弯増加、骨盤前傾といった姿勢変化が生じ、仙腸関節や脊柱起立筋に負荷がかかることで腰痛を誘発します。

③ 血管系の変化
仰臥位で拡大した子宮が大動脈や大静脈を圧迫し、心拍出量や末梢血流量が低下することで血流が悪くなり、腰痛の要因となる可能性があります。

妊娠関連腰痛、産後腰痛の症状

妊娠関連腰痛は妊娠後期(平均22週頃~)に発症することが多く、鈍い痛みが第12肋骨下部から腎部にかけて広がり、下肢に放散する場合もあります。腰椎の動きが制限され、前屈時に痛みを感じることが特徴です。

骨盤帯痛は妊娠初期から発症し、妊娠後期にピークを迎えます。仙腸関節や恥骨結合(妊娠中にひらく関節)の痛みは腎部に刺すような鋭い痛みを伴い、大腿部に放散することがあります。姿勢の変化や長時間の同一体位で悪化しやすいです。痛みは通常、産後6か月以内に軽快しますが、約10%では1〜2年続いてしまうことがあるため、適切な治療を行うことが大切です。

骨盤帯痛と妊娠関連腰痛は併発することも多く、症状が重なるため鑑別が困難な場合もあります。

腰痛とうつ病との関連

妊娠関連腰痛(PLBP)は産後うつと、骨盤帯痛(PGP)は妊娠中のうつ病と、それぞれ強い関連が指摘されています。「妊娠中の痛みは仕方がないもの」という誤った認識をもたれていることも多く、約93%の患者が治療を受けていないという報告もあります。当科では、薬物療法、リハビリテーション(理学療法)を中心に、整形外科として妊娠関連腰痛・産後腰痛に対する集学的な治療を行います。必要に応じて精神科など他科の受診を勧めることもあります。

妊娠関連腰痛はうつ病とのかかわりも深く、適切な治療が大切です

妊娠関連腰痛、産後腰痛の鑑別疾患

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、関節炎(腰椎・仙腸関節・股関節)、疲労骨折(仙骨・腸骨・大腿骨など)、坐骨神経痛、恥骨結合離開、尿路感染症、静脈血栓症、関節リウマチ、妊娠関連骨粗しょう症、産科合併症(早産、胎盤剥離、子宮筋腫、絨毛羊膜炎など)などが鑑別すべき疾患として挙げられます。病歴の聴取、発熱や体重減少、膀胱直腸障害などの全身・神経学的所見を確認します。

画像診断には、レントゲン検査のみならず、妊娠中でも使用できるMRIが一般に推奨されます。

妊娠関連腰痛、産後腰痛のリハビリテーション

有効な治療として、まず運動療法が挙げられます。ヨガやウォーキング、水泳などの軽い運動は、妊娠関連腰痛の軽減に効果があるとされています。一方で、骨盤帯痛(PGP)に対しても、関節の安定性を高め、痛みを感じにくくさせる(疼痛閾値の低下)可能性があります。ただし、重症心疾患や前置胎盤、切迫早産などのハイリスク妊婦に対しては、運動は禁忌とされており、十分な注意が必要です。

当科では、妊娠中・産後のいずれにおいても安全性に配慮しつつ、腰痛を改善するために必要な筋力訓練、ストレッチ、マッサージを行っております。日時予約制なので待ち時間も少なく、医療保険の適応ですので、三割負担で治療を受けられます😊。薬に頼らず治したい方には特におすすめいたします。女性の理学療法士をご希望の方は、受付でお伝えください。

当院では女性の理学療法士が在籍しており、腰痛のリハビリを行っています

妊娠関連腰痛、産後腰痛に対するそのほかの治療

骨盤の安定性を補助する手段として骨盤ベルトの使用が推奨されており、PGPに対して有効である可能性が示唆されています。胎児への悪影響も報告されていないため、比較的安全な対策と考えられます。

骨盤ベルトは骨盤部痛に対して有効な装具です

加えて、日常生活動作教育も重要です。妊娠関連腰痛においては、痛みを誘発するような姿勢や動作を避け、適宜休憩をとりながら良い直立姿勢を保つことが推奨されます。骨盤帯痛の場合は、関節に過度な負荷をかけないよう、片足立ちや跳躍動作を避け、股関節を大きく外転しないようにすること、ベッドで体位を変える際には両膝を揃えて曲げるなど、具体的な日常動作への配慮が求められます。また、クッションや枕を活用することで、姿勢をサポートし、負担を軽減する工夫も効果的です。

薬物療法としては、まずアセトアミノフェンが第一選択とされており、胎児への安全性が高く、授乳中にも使用可能である点が特徴です。一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、妊娠中、特に妊娠後期において胎児動脈管収縮や腎機能障害などのリスクがあるため、原則として使用は避けられるべきです。シップなどの外用剤は内服に比べると比較的安全に使用可能と判断し、処方を検討しています。オピオイド(麻薬に類する鎮痛薬)、ガバペンチノイドや抗うつ薬は安全性が十分に確立されているわけではなく、当院では使用を避けています。

神経ブロックについては、局所麻酔薬の使用量が臨床的に適正であれば、妊娠中でも安全に実施可能とされています。しかしアレルギーなど予測不可能な副作用も考えられるため、当科では妊娠・授乳中は、できるだけ避け、副作用の少ないリハビリテーションをおすすめしています。

参考文献)

・周産期の腰骨盤痛 : 機序から診断・治療まで. 佐藤史弥ら.ペインクリニック 44(2): 148-155, 2023.

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