尾骨骨折（Coccyx fracture）とは

尾骨骨折は、脊椎の最も下にあるしっぽの部分、つまり尾骨（尾てい骨）の骨折です。尾骨骨折による痛みは数ヶ月間続くことがあります。尾骨骨折はX線検査だけでは診断が難しく、見逃されることもあります。

尾骨は3～5つの部分からなる三角形の骨で、末梢の3つはサイズが小さく、通常は一つの骨です。尾骨の前面には前仙尾骨靭帯と恥骨尾骨筋の繊維が付着しています。後面の両側には、仙骨の角と関節して後仙骨孔を形成する尾骨の角があり、第5仙骨神経の後部が位置しています。

尾骨の側面は非常に薄く、仙骨坐骨靭帯の付着点となり、靭帯の前にある尾骨筋、靭帯の後にある大臀筋の繊維の付着点となります。恥骨尾骨筋の腱は尾骨の先端に付着し、直腸を保護し、尾骨を介して支えます。

尾骨骨折の原因

最も多いのは外傷による骨折で、しりもちをついて転倒したり、階段で滑って転倒したときに生じます。ホッケーなどの接触スポーツで強打することでも起こります。出産中に、難産や器具を使用した出産特に、稀に起こることがあります。骨折リスクの高い骨粗鬆症があると、硬い椅子に長時間または繰り返し座ることだけでも、骨折が発生することがあります。または痛みを生じる外傷が明らかではない場合は、骨粗鬆症による骨折や、他の疾患を考える必要があります。

尾骨骨折の症状

尾骨骨折の検査

病歴として、しりもちをついたなどの外傷がないかを確認します。身体検査では、尾骨の圧痛の有無と場所を確認します。立位および座位の両方でのX線検査が行い、尾骨の角度変化を比較することで、骨折部の可動性を判断することがあります。 X線のみでは骨折を診断できないことも多く、CT検査を適宜行います。

尾骨骨折の治療

尾骨骨折は自然に癒合することがほとんどですが、治癒に8〜12週間ほどかかります。鎮痛剤は痛みや腫れを和らげるのに役立ちます。座っている間、尾骨にかかる圧力を軽減するために、ドーナッツ型のクッションが有効です。痛みがでにくい座り姿勢を取るようにすることで、体重が坐骨結節を通じて分散され、その結果、尾骨の痛みが減少します。また、寝る時はには横向きかうつ伏せで過ごし、物を持ち上げる際の前屈みを避けることなどを心がけましょう。排便時に疼痛が強く出やすいので、水分を摂取し、便秘を防ぐために食物繊維を多く摂取するように心がけましょう。

尾骨骨折後のリハビリテーションとしては、脊椎を支える筋肉を強化し、靭帯を伸ばすストレッチ、骨盤底の運動、特に恥骨尾骨筋のリラクゼーションが有効です。

手術が必要になることは稀ですが、骨折部が癒合しない場合や、変形して癒合した場合に強い痛みが残る場合には、尾骨を除去する手術が行われることがあります。周囲の組織損傷を伴う複雑な骨折や、骨が皮膚を突き破る可能性がある複合骨折の場合には、尾骨の骨接合術を検討することもあります。

参考文献）

・Physiopedia, US. Coccyx Fractures.