整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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膝の痛み

有痛性分裂膝蓋骨

有痛性分裂膝蓋骨とは

 分裂膝蓋骨(Bipartite Patella)は報告によって異なりますが、人口の0.2~1.7%にみられ、そのうち1~2%程度が有症状を呈する有痛性分裂膝蓋骨であるとされています。分裂膝蓋骨があっても疼痛がないことの方が大部分であると言えます。大橋らの報告によれば、有痛性分裂膝蓋骨の好発年齢は12~14歳であり、スポーツ競技者に多くみられ、77%が男性、23%が女性でした。さらに、両側例は25%に認められました。発症が多い競技は多岐にわたり、跳躍競技(バスケットボール、バレーボール)や片脚動作を多用する競技(サッカーや野球)に多くみられます。

有痛性分裂膝蓋骨はスポーツをしている子供に多い疾患です

有痛性分裂膝蓋骨の原因

分裂膝蓋骨は、一般的に骨の成長不全(多骨化核の融合不全)によって分裂像を呈すると考えられています。通常、膝蓋骨は3~5歳の間に骨化が始まり、複数の骨化部位が徐々に融合して中央の骨化中心となります。二次成長期には、骨化が中央から膝蓋骨の周辺へ広がり、副骨化核が出現することがありますが、これら副骨化核間の癒合がうまく進まないと、2部または3部に分かれた膝蓋骨となり、付属骨と膝蓋骨本体は線維軟骨により覆われます。

 痛みがでるようになる(有痛化)要因としては、膝蓋骨本体と分裂した骨の間に生じる直接的外力や、膝伸展機構のオーバーユース(スポーツなどによる使い過ぎ)による牽引ストレスが考えられています。河野らの報告では、8~12歳の分裂膝蓋骨症例において、Sinding-Larsen-Johansson病あるいはOsgood-Schlatter病を合併していた症例は67例中36例(53.7%)であり、膝伸展機構へのオーバーストレスとの関係が示唆されています。成人で有痛化する場合には、外傷による不安定性や痛風結節がきっかけとなり、該当部位に疼痛や発赤を伴うことがあります。

有痛性分裂膝蓋骨の症状

膝蓋骨上外側部に限局した疼痛がみられ、深くしゃがみ込む動作やアイススケート、スキーなど高強度の運動時に痛みが生じます。膝蓋骨の分裂部位を打診すると、ほとんどの場合で疼痛を生じます。分裂膝蓋骨は多くの場合、外傷をきっかけに発見されます。通常、分裂した2つの骨片は線維性に結合していますが、外傷によりこの連結が損なわれると、正常に癒合しません。LaPrade医師は、特にアイスホッケー選手やサッカー・アメリカンフットボールなど膝に接触を受ける競技の選手によく見られると報告しています。

有痛性分裂膝蓋骨の検査

膝関節の単純X線前後像により、多くの場合、膝蓋骨近位外側部に分離がみられます。分裂膝蓋骨の分類としてはSaupe分類がよく知られています。Oohashiらの報告では、分離部が上外側部の2部である症例が83%と最も多く、次いで外側部の2部が12%、上外側部と外側部の3部が4%、上外側部の3部が1%でした。

分裂膝蓋骨はレントゲンで確認できます

 MRIにおいては、有痛性分裂膝蓋骨では骨髄浮腫、軟骨信号、線維性信号、液性信号が分離部にみられます。画像所見と一致して分離部に圧痛やスポーツ活動時の疼痛がみられる場合、有痛性分裂膝蓋骨と診断されます。ただし、画像上のみでの分裂膝蓋骨も存在し、すべてが有症状とは限らないことに留意すべきです。Ogdenらは、膝蓋骨下端部には副骨化核が存在しないと報告しており、大橋らの報告でも膝蓋骨下端部の多骨化核癒合不全による分裂像はみられなかったとしています。したがって、膝蓋骨下端部の裂隙とその部位に限局する痛みは、分裂膝蓋骨に由来するよりも、膝蓋骨疲労骨折やSinding-Larsen-Johansson病の可能性が高いと考えられます。

有痛性分裂膝蓋骨の治療

有痛性分裂膝蓋骨の多くは、分離部への牽引ストレスを軽減する保存療法が第一選択となります。McMahonらは、初期に2~3週間の固定あるいは6週間の活動制限と大腿四頭筋ストレッチを行い、段階的にスポーツ復帰を果たしたと報告しています。森戸らは、6~14歳の有痛性分裂膝蓋骨例に対して、平均1.45カ月のギプス固定により疼痛が軽快し、骨癒合が得られたと報告しています。鶴田らは、平均年齢12.9歳の症例に対し、スポーツ活動制限、理学療法、装具療法、生活指導によって、平均5.3カ月で51.2%の骨癒合が得られたとしています。特に、Saupe and Schaer分類のⅢ型では骨癒合率が35%と低かったと報告されています。

 鶴田は、若年者の場合は骨癒合を目指すべきであり、転位が進行する場合や15歳以上の場合には、早期のスポーツ復帰を目的として手術療法の選択も考慮すべきと述べています。

有痛性分裂膝蓋骨の手術療法

保存療法で症状の改善がみられない場合、骨片摘出術、外側広筋切離術、骨接合術などの観血的治療、あるいは関節鏡下での外側膝蓋支帯切離や骨片摘出術が検討されます。Kalliniらの報告によれば、20歳以下の有痛性分裂膝蓋骨において、手術例は保存例と比較して罹患期間が長く(21.5カ月 vs. 7.6カ月)、年齢が高く、女性に多く、競技レベルが高い特徴があったとされています。

 関節鏡による報告では、79%が外側膝蓋支帯切離術、16%が骨片摘出術、5%が両者併用であり、術後の疼痛は改善し、平均2.6カ月で競技復帰が果たされています。2015年のsystematic reviewによれば、93.8%(90/96膝)が保存療法後に手術を受けており、手術手技としては65%が骨片摘出術、20.5%が外側支帯切離術であったとされています。ただし、骨片が大きい場合や関節面に面する場合には、骨片摘出術により膝蓋大腿関節の不適合が生じる可能性が指摘されています。

 有痛性膝蓋骨症例の競技復帰についての報告では、疼痛なく競技復帰した例は手術例で85.5%(100/117膝)、保存療法例で38.5%(5/13膝)であり、症状が一部残存しつつ競技復帰した例は、手術例で14.5%(17/117膝)、保存療法例で53.8%(7/13膝)と報告されています。さらに、手術療法の中では、分離部の骨片摘出術が最も競技復帰の成績が良好であったとされています。

有痛性分裂膝蓋骨に対するリハビリテーション 

保存療法・手術療法いずれにおいても、患部の疼痛や治癒遅延の要因となる牽引ストレスを考慮したリハビリテーションが重要です。有痛性分裂膝蓋骨の多くは膝蓋骨近位外側部に分離部を認めるため、外側広筋や腸脛靱帯、大腿直筋の過活動や柔軟性低下が牽引ストレスを増加させると考えられています。したがって外側支持機構の柔軟性を高めるようなリハビリテーションが極めて重要といえます。

 外側支持機構には、外側広筋、外側膝蓋支帯、腸脛靱帯、外側膝蓋大腿靱帯が含まれ、内側支持機構と比べて腱や靱帯成分が多いです。これらのストレッチは徒手的な直接ストレッチに加え、膝関節屈曲や股関節を含めた複合的な肢位で行います。さらに、動作時の膝関節に関わるマルアライメント(いわゆるknee-inやknee-out)も牽引ストレスの一因となるため、足部、股関節、体幹機能も含めた多方面からのアプローチが必要です。

 加えて、発症に至った環境要因への介入も重要です。本疾患の好発年齢は骨化完成前であり、競技動作の未熟さや同一競技による局所ストレスの蓄積が発症につながると考えられます。そのため、疾患への理解、練習量や内容の調整が不可欠です。

参考文献)

・膝蓋骨疲労骨折・分裂膝蓋骨. 矢口春木. 関節外科 41(suppl-2): 97-107, 2022.

・Bipartite Patella | Knee Pain | Knee Specialist Minnesota. Robert LaPrade.

先生から一言

有痛性分裂膝蓋骨は、成長期の子どもに多く、膝蓋骨が分裂した部分にスポーツなどの負担がかかることで痛みが出ます。まずは安静やリハビリテーションなどの保存療法を行い、多くは改善します。痛みが続く場合は手術も考慮しなくてはなりません。早期の診断と治療が大切です。また疼痛が強いときは勇気をもってスポーツをしっかり休むことも大切です。

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