整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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股関節の痛み

特発性大腿骨頭壊死症

特発性大腿骨頭壊死症(Femoral Head Avascular Necrosis)とは

特発性大腿骨頭壊死症は、「非外傷性に大腿骨頭の無菌性、阻血性の壊死をきたし、大腿骨頭の圧潰変形が生じ、二次性の股関節症に至る」と定義される疾患です。少し難しいですが、骨折や感染以外の要因で大腿骨が溶けてくる病気ととらえるとわかりやすいと思います。

大腿骨の骨がとけ、股関節の疼痛がでる難病です

特発性大腿骨頭壊死症の原因

大腿骨頭壊死症の中で、骨壊死を生じる基礎疾患が明らかなものは「二次性大腿骨頭壊死症」に、その原因が明らかでないものが「特発性大腿骨頭壊死症」に分類されます。特発性大腿骨頭壊死症はステロイド関連、アルコール関連、狭義の特発性に細分されます。

特発性大腿骨頭壊死症の病態は大腿骨頭の阻血性壊死であると考えられており、「ステロイド投与」や「アルコールの多飲」と骨頭壊死の発生との間に関連があることが知られていますが、その発生機序についてはまだ解明されていません。

大量飲酒が特発性大腿骨頭壊死の原因の一つです

特発性大腿骨頭壊死症のリスク因子

本邦では、「特発性大腿骨頭壊死症調査研究班」によって全国規模の疫学調査および大規模医療施設における定点モニタリングが実施されています。2015年に実施された全国疫学調査では、年間有病率が人口10万人あたり18.2人、年間新患数は2,100人と推定されています。好発年齢は、男性では40代、女性では30代と60代に二峰性のピークがあるとされています。

ステロイド関連の特発性大腿骨頭壊死症は女性に多く、その原疾患では全身性エリテマトーデス(SLE)が最も多いです。それ以外には、気管支喘息、ネフローゼ症候群、腫瘍性疾患などがあります。経ロステロイド内服歴を有する者のオッズ比は20.3と高く、ステロイド内服により大腿骨頭壊死症のリスクが約20倍に上昇することが報告されています。アルコール関連は男性に多く日本酒換算で1日に2合(純アルコール量として40g)を10年以上継続していたかどうかが、1つの目安です。また、喫煙も特発性大腿骨頭壊死症のリスクを上昇させることが知られています。

特発性大腿骨頭壊死症の症状

骨壊死が発生しただけの時点では、自覚症状がないこともあります。大腿骨頭に圧潰が生じた時に痛みが出現し、この時点が大腿骨頭壊死症の発症とされます。発症初期では股関節の荷重時痛を認めます。また、股関節周囲の痛みではなく、大腿から膝にかけての疾痛を訴える場合もあります。

特発性大腿骨頭壊死症の検査

診断では、腫瘍、腫瘍類似疾患、骨端異形成症などの疾患を除外する必要があります。また、一過性大腿骨頭萎縮症や大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折、ペルテス病などが鑑別疾患として挙げられます。大腿骨頭以外に、上腕骨頭、手の月状骨にも同じように骨壊死が発生することがあり、注意が必要です。

単純X線像では、壊死領域の周囲に帯状硬化像を認めます。また、骨頭の圧潰が生じると、関節面の不整像や軟骨下骨の骨折線(crescent sign)を認めます。

MRIが早期診断に有効です。T1強調像の帯状低信号域(band像)が特徴的ですが、骨髄浮腫を認める場合には帯状低信号域が不明瞭となり、診断や壊死領域の判定が困難になる場合があるため、必要に応じてMRIを再度撮像することがあります。

治療方針を決定するためには、病型(Type)および病期(Stage)分類を行う必要があります。病型は壊死範囲の局在によって分類され、単純X線像とMRIの両方またはいずれかで判定します。病期は大腿骨頭の圧潰と関節症性変化の有無について、骨頭の正面と側面の2方向X線像で評価を行います。

特発性大腿骨頭壊死症の治療

クリニックでの治療は困難な指定難病です。私は本疾患を疑ったとき、もしくは診断したときは速やかに股関節外科専門医にご紹介しています。以下は、一般的な治療について述べます。

Stage 1または2で、病型がType Bまでの場合は保存療法が適応となります。体重コントロールや長距離歩行・重量物運搬作業の禁止などの身体活動の制限を勧めることが多いですが、その有効性についてのエビデンスは乏しいとされています。骨頭の圧潰を認める場合には、症状緩和および圧潰進行の抑制を目的として免荷を行います。

青壮年で病期がStage 3Bまでの場合は関節温存手術が適応となる可能性があります。手術は、関節温存手術(骨切り術、骨移植術など)と非温存手術(人工骨頭置換術:BHAや人工股関節全置換術:THA)に大別されます。術式は症例の年齢、病期、病型に加えて、職業、生活様式、家庭状況などの社会的背景も十分に考慮して決定していきます。

壊死部が荷重部に占める割合が大きいほど圧潰の危険性が高くなります。そのため、人腿骨頭の圧潰をきたす可能性が低いType Aでは経過観察、可能性が高いType Cでは関節温存手術が適応となり、Type Bは注意深い経過観察が必要です。骨頭の温存が望めない場合や、すでに圧潰が進行した場合、関節症性変化が強い場合にはTHAやBHAが適応となります。特発性大腿骨頭壊死症は比較的若年で発生し、活動性が高いことが多いため、将来的に再手術が必要となる可能性を考慮して術式を選択することが大切です。

参考文献)

・各種難病の最新治療情報トピック:特発性大腿骨頭壊死症. 池 裕之ら.

先生から一言

特発性大腿骨頭壊死症は大量飲酒やステロイドなどが原因と考えられていますが、発症要因については不明な点が多く残っている指定難病です。早急な診断と治療介入が後遺症予防のために重要であるため、疑った場合は速やかに股関節外科専門医にご紹介いたします。

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