「突き指」という言葉は、様々な外傷を含む

つき指とは、「指先にボールや物が直撃し、指を突き出した形で受ける怪我」のことです。軽度の場合は打撲や捻挫で済みますが、重症になると骨折、脱臼、軟骨損傷、靭帯や腱の断裂に至ることもあるため、早めに正しい診断と治療を受けることが重要です。正式な医学用語ではありませんが、骨折や脱臼などのレントゲン変化がない指の外傷が「突き指」と診断されることが多いように思われます。しかしレントゲンで骨折や脱臼がないからといって、「ただの突き指」だと安易に診断してはいけません。

突き指の症状

指の腫れ、痛み、変形、動かしにくさ（可動域制限）などが挙げられます。怪我をした経緯やどのようにして怪我をしたのか受傷機転を詳しく聞くことが大切です。痛みが少ないと軽度と見られがちですが、そのために骨折や腱の断裂を見逃してしまうこともあるので注意が必要です。

突き指をしたときに起こりうる外傷

一言に「突き指」といっても一つの疾患ではなく、その中に様々な外傷を含みます。例えば以下のような外傷があります。

末節骨骨折、DIP関節の槌指（マレット指）、中節骨骨折、関節の脱臼、中節骨基部掌側骨折、基節骨骨折、関節の側副靱帯損傷、掌側版損傷、関節包損傷、屈筋腱断裂（指を曲げる腱の断裂）、伸筋腱皮下断裂（指をのばす腱の断裂）など、非常に多彩です。「たかが突き指」とあなどっていると思わぬ骨折や靱帯損傷が隠れていることがあります。指の外傷は繊細で、診断や治療に経験が必要です。

突き指の検査

X線撮影で骨折、脱臼の有無を確認します。正面、側面、斜位像で小さな剥離骨折がないかを含めて子細に観察します。特に小児では、骨端線の損傷を認めることもあるので注意が必要です。靭帯や関節包、軟骨の損傷が疑われる場合は、MRIを追加します。

突き指に対する応急処置

応急処置としては、一般的にRICE（安静、冷却、圧迫、挙上）を行います。指をアルミ製の副子で固定することもありますが、変形や不安定さが目立つ場合は隣の指と一緒に固定することがあります。バディーテーピング固定と呼びます。

保存療法は、新鮮な打撲、捻挫、腱の断裂（腱性槌指）や転位がない骨折、中等度の靭帯断裂が適応となります。一方、手術療法は、転位がある骨折や軟骨損傷、腱の断裂、不安定な靭帯断裂が適応となります。指の外傷の治療は、医師の実力の差が出やすい分野だと思います。

突き指に対する治療

いわゆる「単なる捻挫」と診断された場合でも、油断は禁物です。疼痛や腫れが強い場合はしっかりとギプスやシーネによる外固定を行わないと、痛み、腫脹、可動域制限などの思わぬ後遺症を残すことがあります。また骨折や靱帯損傷、腱損傷がある場合は、手術が必要かどうかを速やかに判断することが大切です。以下に各々の疾患に対する治療について述べます。

◎末節骨骨折
頭部の骨折：基本的に保存療法を行います。偽関節となっても問題がないことが多いです。
頸部から基部の骨折：転位がなければ保存療法ですが、4週以上の固定が必要になることもあります。大きな転位がある場合は手術が必要です。

◎槌指（マレット指）
腱性槌指：新鮮な例では伸展型スプリントという装具やシーネで固定します。固定期間は6～8週間です。
骨性槌指：骨片が終止腱に付着しているため、確実に骨癒合させる必要があります。骨片の大きさ位に応じて手術加療を積極的に検討します。

◎中節骨骨折：転位がない場合は保存療法として3週間アルフェンス固定を行います。転位が大きい場合は手術療法が必要です。
◎PIP関節背側脱臼：牽引により容易に整復でき、基本的に保存療法を行います。
◎中節骨基部掌側骨折：関節面の1/3以下で転位がほとんどなければ、手指伸展位のアルフェンス固定を行います。
◎基節骨骨折：骨幹部骨折では、指を屈曲させて整復し、MP関節を屈曲させたまま固定します。

参考文献）

・日本医事新報 (5068): 43-44, 2021.