整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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首の痛み

筋性斜頸

筋性斜頸とは

斜頸は、頸椎に関連した姿勢異常の一種で、頸の側屈や回旋を呈する症状の総称です。乳児期に見られる斜頸の中で最も一般的なのは筋性斜頸で、その発生率は0.3~2%とされています。男女差は明らかではありません。

左筋性斜頸

引用:小児内科 Vol. 53 No. 2,2021‒2

筋性斜頸の原因

筋性斜頸は、頸椎周囲筋である胸鎖乳突筋(SCM)の拘縮が基本的な病態です。筋の伸展性が著しく低下し、受動的な伸長が得られなくなるため、短縮したSCMによって頭蓋骨が固定され、斜頸位が形成されます。病因は不明ですが、骨盤位や初産で多く見られることから、子宮腔の狭小との関連が指摘されています。分娩時に頭部が回旋しても、続く体幹の回旋が遅れることで、SCMに負荷がかかると考えられています。この過程で、阻血や浮腫が発生し、筋の線維化が進行することが推測されています。

筋性斜頸の症状

筋性斜頸は、生後すぐ、もしくは早期に姿勢異常から気づかれることが多いです。頭部は患側に側屈し、下顎下端は健側の肩を指すように前方に突出し、健側に回旋します。新生児期から乳児早期では、斜頸位よりも頸部の腫瘤が注目されることが多いです。腫瘤は生後数日で明らかになり、約3週間で最も大きくなりますが、その後徐々に縮小し、数ヶ月で消失します。

幼児期以降になると、片側のSCMによる固定の結果、頭蓋骨が変形して斜頭症(plagiocephaly)を引き起こします。患側が凹側となる顔面側弯とともに、患側の頬部や頬骨の平坦化による顔面の非対称が徐々に強まります。

さらに年長になると、SCMの固定により患側の肩が挙上し、代償的な脊柱側弯が生じます。学童期以降まで筋性斜頸が放置されると、これらの変形は恒久的な骨格変形として残る可能性があります。

筋性斜頸の検査・診断・鑑別を要する疾患

筋性斜頸は、先天性で1方向への顕著な向き癖(斜頸位)が観察され、新生児期から乳児早期には片側の腫瘤や硬結を伴うSCMの短縮があれば診断できます。この時期のエコー検査では筋腹の腫大と内部エコーの不均一性が認められます。幼児期以降では頸部腫瘤が消失している場合でも、徒手的に斜頸位の矯正を試みることで頸椎可動域の制限や、短縮して緊張したSCMの筋肉の浮き上がりや斜頭症の存在から診断が可能です。

頚椎X線検査、CT、MRIなどの画像検査も有効です。頸椎X線像ではKlippel-Feil症候群などの椎体異常による骨性斜頸が鑑別可能です。

斜頸の鑑別診断には多くの疾患が挙げられますが、頭頸部の回旋運動は主に環軸関節によって行われるため、上位頸椎周囲に異常が認められる場合が多いです。発症や症状から先天性と後天性、さらに疼痛性と非疼痛性に分類することで、疾患を絞り込むことができます。環軸関節回旋位固定(atlantoaxial rotatory fixation)は小児で比較的多く見られる症状です。症性斜頸は、CTやMRIで環軸関節周囲の腫脹や膿瘍が認められることがあります。環軸関節回旋位固定(図3)は、いわゆる寝違えから生じるとされていますが、原因が特定できない場合も多く、炎症性斜頸の遺残変形も含まれていると考えられています。3D-CT、特に環椎をボリュームレンダリングで透過像として表示すると、環軸関節の脱臼がよく描出されます。

筋性斜頸の治療

筋性斜頸の約80%は自然治癒し、手術に至るものは5%程度とされています。ストレッチなどの理学療法については、効果が明確に確認されているわけではなく、「行うべきである」という意見と「行わないほうがよい」という意見の両方があります。しかし、乳児期に過剰なストレッチを行うと筋に侵襲を与える可能性があるため、頸部腫瘤が明らかな場合はストレッチを行わない方がよいという意見が多いです。指導的経過観察法としては、向き癖の反対側に明かりやおもちゃを置いたり、反対側で話しかけたりすることで、自然に患児が患側を向くように誘導し、自動運動によるセルフストレッチが推奨されています。他動的ストレッチについては、少なくともSCMの腫瘤が消退する生後6カ月以降に、愛護的に行うことが許容されると考えられています。

手術の適応となるのは、著明な可動域制限(側屈・回旋が30°以下)や顔面の非対称が見られる場合です。手術の時期としては、斜頭症の治癒が期待できる3~4歳まで、遅くとも就学前までが望ましいとされています。一方で、初診が遅れた場合でも、斜頸位の軽減や可動域、肩こりの改善を目的に、どの年齢でも手術適応があるとされています。手術方法としては、一般にSCMの遠位のみ、あるいは遠位と近位の両端の腱切離・切除術が行われています。

また、子宮内姿勢異常に関連していることから、先天性股関節脱臼や先天性内反足の合併頻度が高いとされています。一方で、学童期以降まで放置された場合、斜頸、斜頭、側弯症が進行し、恒久的な骨格変形として遺残する可能性があります。このような例では、美容的な問題に加え、二次的症候として肩こりや頭痛などを訴えることが多くなりますので、速やかに小児整形外科の受診が勧められます。

参考文献)

・筋性斜頸. 日本医事新報No. 5178 2023. 7. 22.

・引用:小児内科 Vol. 53 No. 2,2021‒2

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