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線維性骨異形成症
線維性骨異形成症(FD:Fibrous dysplasia)とは
正常な骨や骨髄が線維性・骨性の組織に置き換わり、病的骨折、機能異常、骨の奇形、痛みなどを引き起こす稀な非腫瘍性の進行性の骨疾患です。単一の骨だけでなく、複数の骨に発生することもあり、単骨性の方が多骨性よりも4~6倍ほど多いとされます。頭頸部の発生頻度は約20%です。
発生頻度は、4,000~10,000人に1人程度で、全骨疾患の約2.5%、全良性骨疾患の約7%を占め、好発時期は20代とされています。
遺伝子変異が原因ですが遺伝性はなく、悪性化は極めて稀で、ほとんどが良性で経過するとされています。進行は緩徐であり、骨が成熟する思春期以降では骨の増大はほとんどありませんが、思春期前の小児では進行が早い例もあるため、注意が必要です。
線維性骨異形成症の原因
GNAS遺伝子のミスセンス変異が原因と考えられています。この遺伝子の変異により骨髄間質細胞の分化と増殖が阻害され、正常な骨や骨髄が線維骨性組織に置き換わります。
線維性骨異形成症の症状
四肢の骨が骨髄が線維性・骨性の組織に置き換わり、病的な骨折、機能異常、骨の奇形、痛みなどを生じます。頭頸部では、病的骨折はまれで、無症状であったり、顔面骨の変形が主訴となることが多いです。その他の症状としては、眼球突出や眼球変位、視神経圧迫に伴う視神経炎があり、この場合、視力低下が進行することがあります。また、発生部位によっては頭痛、鼻閉、聴力障害、嗅覚障害、三叉神経痛などの症状も起こることがあります。
線維性骨異形成症には、皮膚の色素沈着(カフェオレ斑)、内分泌異常(性腺ホルモン過剰、甲状腺機能亢進、成長ホルモン過剰など)を伴うMcCune-Albright症候群や、線維性骨異形成症に筋肉内粘液腫を伴うMazabraud症候群も含まれます。
線維性骨異形成症の検査
画像検査では、単純X線撮影はスクリーニング検査としては役立ちますが、CTが最も有効です。CTでは、骨硬化と低濃度の成分がまだらに存在する例が多く、石灰化のみを認める場合や囊胞成分を含む場合もあります。また、囊胞内に液面形成が認められる場合は、悪性化の可能性があると報告されています。
MRIについては、特徴的な所見はなく、診断にはあまり役立ちませんが、囊胞成分の同定には有用です。骨シンチグラフィーは罹患骨のスクリーニングに役立ち、PET/CTも罹患骨で異常集積を認めることが多いとされます。
血液検査では、多骨性線維性骨異形成において、McCune-Albright症候群のスクリーニングのために、下垂体成長ホルモン、副腎糖質コルチコイド、甲状腺ホルモン、性腺ホルモンなどの産生過剰がないかを調べます。また、悪性化を伴う場合には、ALP値の増加が認められることがあります。
組織学的検査については、骨生検による組織学的診断が、化骨性線維腫や骨Paget病など他の骨疾患との鑑別が困難な場合や悪性化を疑う所見がある場合に限り、患者や家族に生検のリスクと必要性を十分に説明した上で行います。遺伝子検査については、罹患骨組織の遺伝子検査によるGNAS変異の同定は、画像検査や病理検査で診断がつかない場合にのみ考慮されます。
線維性骨異形成症の治療
通常は経過観察です。局所の疼痛に対しては、アセトアミノフェンやNSAIDs、トラマドールなどの鎮痛薬の使用や、点滴によるビスホスホネート製剤の投与が有効です。また抗RANKL抗体製剤であるデノスマブの効果が期待されていますが、現時点で疼痛緩和や病勢の進行抑制に対する有効性は不明です。
また、病的骨折を防ぐために、十分なカルシウムとビタミンDの摂取、適度な運動、適切な体重の維持も重要です。
顔面骨線維性骨異形成症で視力障害や聴力障害を伴う場合は、手術治療の適応となります。鼻閉症状や整容面の問題についても、術後の機能障害や変形のリスクが低い場合に手術治療が適応となります。さまざまな報告があり、コンセンサスが得られている一定の手術方法は存在しません。
放射線治療は悪性転化を生じるリスクがあるため禁忌とされています。また、非常にまれではありますが、経過中に悪性化を生じることもあるため、フォローアップが必要です。フォローアップについては、無症状であれば小児症例では2年ごと、成人症例では5年ごとの画像フォローが推奨されています。
参考文献)
・JOHNS Vol. 37 No. 2 2021.骨および軟骨疾患.線維性骨異形成症. 岸下定弘