DISEASE DETAILS 疾患一覧
首の痛み
線維筋痛症
線維筋痛症(Fibromyalgia)とは
線維筋痛症は、1970年代半ばに欧米で提唱され始め、1980年ごろに日本でも確認された疾患です。全身に耐えがたい痛みを伴う疾患であり、体幹部中央部に痛みを感じることが多いですが、四肢にも痛みを訴えることがあります。線維筋痛症は女性に多く、好発年齢は40~60歳とされています。症状を訴えても「不定愁訴」と片付けられやすく、多様な症状があるため診断が難しいことが特徴です。
線維筋痛症と精神疾患との関連
線維筋痛症には精神科疾患を合併しているケースが多く見られると報告されています。合併しやすい精神疾患には、身体表現性障害、気分変調性障害、大うつ病性障害、パーソナリティ障害、広汎性発達障害、解離性障害、統合失調症などが挙げられます。これらの精神疾患が合併する場合は、精神科医との連携を行い、疼痛の治療にあたる必要性があります。
線維筋痛症と気象痛との関連
線維筋痛症患者の58%が「気象痛(気象関連痛)」を訴え、天候の変化によって痛みが悪化することが報告されています。そのため、診察時には「お天気で痛みや気分に変化がないか?」も確認する必要があります。
線維筋痛症の原因
線維筋痛症は中枢神経系の異常による疾患と考えられています。動物実験では、長期的な精神的ストレスによって中枢神経系に「神経炎症(neuroinflammation)」が起こることが証明されています。さらに、筋緊張や固有感覚の過興奮が長期間続くと、ミクログリアを介して痛みを引き起こすことが示されています。線維筋痛症の痛みは、神経障害性疼痛や炎症性疼痛とは異なる新しいメカニズムによるものと考えられており、「痛覚変調性疼痛」として注目されています。
線維筋痛症の症状
全身に耐えがたい痛みを伴い、多様な痛みが主に頚部から肩甲骨周囲や背部に始まり、筋肉や関節周囲の付着部にも痛みが広がる特徴があります。特に、体幹部中央部に痛みを感じることが多いですが、四肢にも痛みを訴えることがあります。
さらに、気象痛や睡眠障害など、日常生活に影響を及ぼすさまざまな症状も合併することが多いとされています。他の随伴症状としては疲労感・易疲労性、睡眠障害(入眠障害、熟睡障害、中途覚醒、早期覚醒、レストレスレッグス症候群、睡眠時無呼吸症候群)、過敏性腸症候群、しびれ感、不安、緊張、天候や肉体活動による症状の影響、頭痛、抑うつ、意識消失発作などが挙げられます。
線維筋痛症の検査・診断
米国リウマチ学会は1990年に診断基準を発表し、3カ月以上持続する全身の痛みがあり、18カ所に設定された圧痛点のうち11カ所以上に圧痛が確認できる場合に、線維筋痛症と診断されます。圧痛の確認には、正式には圧痛計を使用し4kg/m²の圧力を加えますが、圧痛計がない場合は診察者の母指の爪が白くなる程度の力で押さえることを基準としています。
2010年には新たな診断基準が提唱されました。この基準では、WPI(広範痛指数)とSS(症状重症度)スコアの合計点が13ポイント以上をカットオフ値としています。ただし、より正確な診断が求められる治験などでは、1990年の診断基準が用いられています。
関節リウマチや脊椎関節炎との鑑別が重要
線維筋痛症との鑑別が必要な器質的疾患としては、脊椎関節炎や早期関節リウマチが挙げられます。脊椎関節炎の初期像は線維筋痛症と類似しているため、疼痛部位の腫脹、皮膚疾患、付着部炎、関節の腫脹、仙腸関節の炎症性変化、骨硬化変化などの特徴的なレントゲン所見を精査することが重要です。また、MRIや 骨シンチグラフィーも有用とされています。
線維筋痛症のうち、約5%に脊椎関節炎が合併していることが報告されています。さらに、5年以上の長期経過の中で、関節リウマチへ移行する割合は約2%、脊椎関節炎の診断率は初診時の8%から10%に増加し、神経疾患が1%、統合失調症が5%といった割合で各種器質的疾患へ発展する可能性があるとされています。
線維筋痛症の治療
新しい慢性疼痛診療ガイドラインにおいて、「プレガバリン(リリカ) 300~600 mg/日、デュロキセチン(サインバルタ) 60 mg/日を投与することで鎮痛効果が示されています。薬物療法は、副作用などの有害事象、鎮痛効果、QOL の向上などとのバランスを考慮して行います。
ガイドラインでは、集学的治療は薬物療法単独より QOL や痛みを改善する傾向があると報告されており、線維筋痛症の治療戦略として集学的治療が推奨されています。すべての線維筋痛症患者に対し、運動療法と集学的治療を実施することが望ましいと考えられます。薬物療法に運動療法などを組み合わせた集学的診療が効果的で、欧米では学際的痛みセンターが充実している一方、日本ではまだ保険収載されていません。
線維筋痛症による慢性疼痛の治療を行っても、痛みそのものが完全に消失しないことが多いため、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)や QOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指すことが重要 です。
線維筋痛症の診断や治療を行う際には、精神科疾患にも精通する必要があります。また、環境調整を行い、生活環境を整えることで、痛みに関連した行動を減らすことが大切です。さらに、線維筋痛症患者には閉塞性睡眠時無呼吸症候群が合併していることが多く、睡眠の質が症状に深く関与していることが示唆されています。
三国ゆう整形外科での線維筋痛症に対する検査・治療
当院では、線維筋痛症と鑑別が必要な関節リウマチ、脊椎関節炎を除外するための検査を行います。具体的には疼痛部位のレントゲン検査、血液検査を行います。線維筋痛症が強く疑われるケースでは、提携している専門医療機関に速やかにご紹介いたします。デュロキセチン、トラマドール、ミロガバリンやプレガバリンなどの有効な薬剤の投与も場合により行います。
参考文献)
・痛みの治療 線維筋痛症の診断・治療. 三木健司. 臨牀と研究 101(6): 706-712, 2024.
・戸田克広.日本医事新報 (5207): 52-53, 2024.

先生から一言
線維筋痛症は整形外科のみでは治療が困難な疾患です。当院では関節リウマチ、脊椎関節炎などの疾患を除外するための検査、診察を行います。線維筋痛症が疑われた際は、提携病院にご紹介して、専門的な治療を受けていただけるようにしております。