整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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首の痛み

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群とは

胸郭出口症候群(TOS:Thoracic Outlet Syndrome)は多彩な症状を示す疾患です。肩関節痛、肘関節痛、手関節痛、上肢のしびれ・だるさ、握力低下などの症状があり、さらに副症状として、頭痛、めまい、たちくらみなども自覚することがあります。

発症年齢も10代から中高年まで幅広く、日常生活動作では挙上位を保持する動作が困難であることも特徴です。スポーツ選手では挙上位動作を繰り返すスポーツ(野球など)に罹患率が多いことが報告されています。

頚椎疾患などに類似している症状もあるため、各種検査を行っても明らかな異常が見つからず診断に難渋することがあります。医師にとっても診断が難しい病気のひとつであり、不定愁訴の判断で精神科や心療内科への受診を勧められているケースもあります。

胸郭出口症候群の原因

胸郭出口症候群は圧迫ないし牽引されるものが①神経(腕神経叢)、②動脈(鎖骨下動脈)、③静脈(鎖骨下静脈)などです。またその部位が斜角筋間、肋鎖間隙、小胸筋直下などによって分類されます。症状としてはそれぞれ、①上肢のしびれ・異常知覚・筋力低下 ②冷感・疼痛 ③むくみ・だるさなどを呈します。

割合としては神経性症状が90%以上、血管性症状(鎖骨下動静脈の血栓)が10%未満と報告されており、神経症状がほとんどを占めます。神経血管束へのメカニカルストレスは肋鎖間隙や斜角筋部における神経血管束の圧迫や牽引です。過去の腕神経叢造影による報告では圧迫型18%、牽引型8%、両者の混合型が74%とされており、神経束が絞把・圧迫を受ける部位は、肋鎖間隙75%、斜角筋30%、烏口突起下6%と報告されています。 

また胸郭出口症候群を発症する解剖学的要因には骨性要因と軟部組織性要因が挙げられ、骨性要因は30%,軟部組織性要因は70%とされています。

骨性要因としては

①頚肋の存在、②肋鎖間隙の先天的な狭小(下垂位から挙上位にすることによる鎖骨の後退と後方回旋によるさらなる狭小化)、③第1肋骨疲労骨折や鎖骨骨折後の仮骨形成。腕神経叢腫瘍などによる後天的な狭小化などがあげられます。

軟部組織性の要因としては

①先天的な斜角筋三角底辺距離(inter-scalene-distance;ISD)の狭小化、②最小斜角筋と呼ばれる神経と鎖骨下動脈の問に存在する異常筋の存在、③頚肋から発生する異常線維の存在などがあげられます。

胸郭出口症候群の症状

TOSにおける診断は、多岐にわたる症状の出現部位や日常生活における些細な動作などで症状が増悪している場合が多いことから、詳細な問診が重要です

書字や歯磨き、シャンプー・ドライヤーなどの動作が困難でないか、電車のつり革を持つ動作、洗濯物下し動作、携帯電話の使用が困難でないかなど、口常生活動作で困っている動作がないかを問診します。さらに片頭痛・めまい・たちくらみがないか、さらに野球選手であれば、ボールがすっぽ抜ける、球数が増えると腕が痺れて力が人らないかなどを聴取します。

特に患者さんが普段気にしていないような動作(胸を張って良姿勢を保持することやハンモック肢位での就寝など)で症状が出現している場合もあり、動作指導のみで症状が緩和されることもあります。

胸郭出口症候群の身体診察

Morley test:鎖骨上窩,斜角筋,小胸筋,後方四角腔(quadri lateral space;QLS)を圧迫して痛みやしびれなどの症状が誘発される

Wright test:肩90°外転・肘90°屈曲位で橈骨動脈の脈が触知できなくなる

Roos test:肩90°外転・肘90°屈曲位で手指の屈伸運動を3分間継続すると疼痛やだるさで継続できない

などを行い再現性のあるしびれや疼痛が出現するかを確認します。

胸郭出口症候群の Wright test
胸郭出口症候群の Wright test

Copyright:Physiotutors @Physiotutors

胸郭出口症候群の画像検査

画像診断は頚椎単純X線(頚肋や第1肋骨疲労骨折の検索)、頸椎側面像で第1,2胸椎まで写ってみえる肩下がり(droopy shoulder syndrome)がないかを確認します。特にPancoast腫瘍などの腫瘍性病変は生命予後に関与するためX線やCTで必ず否定する必要があります。

超音波検査では、鎖骨遠位部の鎖骨下動脈2nd partの血流速度(PSV:peak systolic veloc-ity)測定と第1肋骨における前-中斜角筋三角底辺問距離(interscalene distance;ISD)の計測を行います。ISDの解剖学的平均距離は約10mmと報告されていますが、多くのTOS症例ではISDは狭くなっています。超音波検査時に静脈血栓の有無も必ず確認します。

動脈造影を併用した胸郭出口部の3D-CTにおいて上肢挙上位での肋鎖間隙の狭小化を確認し、造影3D-CTで鎖骨下動脈の血管狭窄あるいは閉塞がみられれば(TOSの約45%に存在)診断が確定します。

TOSはその病態が複雑であるため理学所見、画像検査、生理機能検査を行ってもいずれかの検査のみでは決定打とならないことも多いため、症状の再現性と検査の組み合わせによって診断する必要があります。

胸郭出口症候群の治療

まずは保存治療によって症状の改善を試みます

姿勢矯正、生活指導が重要で、肩甲骨周囲の筋力訓練を行ってなで肩、肩下がり、猫背の姿勢を矯正します。長時間のデスクワークの際には途中休憩をはさんで背筋を伸ばすなど胸郭を広げるような体操を取り入れます。装具による肩甲帯挙上位を維持することも時に有用です。

精神的な不安が症状増悪因子となるため、TOSの複雑な病態をしっかり理解してもらうことで症状が改善することがあります。これまで精神的な病、気のせいとしてかたずけられていた症状に病名がつくだけで症状の改善を認めたとの報告もあります。

薬物療法ではロキソプロフェンなどのNSAIDs、プレガバリン、トラマドールなどの薬物が有効です。頚椎牽引療法、温熱療法などの物理療法も有効です。症状が強い場合は斜角筋間ブロックなどの伝達麻酔を併用します。

上記のような保存治療を行っても症状が改善せず、以下を満たす場合に手術療法を検討します
 ・日常生活に支障が出ている症例
 ・3か月以上の投薬または理学療法介人を行ったのちも症状の改善に乏しい症例
 ・明らかな血管の狭窄があり、血管性の症状を有している

手術療法には第一肋骨切除術、頚肋切除術、小胸筋切離術などがあります。

参考文献:

高橋 啓ら,胸郭出口症候群の診断と手術法 MB Orthop. 34(11):1-12,2021
専門医の整形外科外来診療

先生から一言

胸郭出口症候群は、腕の痺れやだるさ、握力低下、頭痛やめまいも伴ってくる多彩な症状を示す疾患です。診断が難しく、X線やCTでも確定診断をつけられないことも多いです。詳細な問診と、身体診察が重要です。造影検査など、侵襲的な画像検査が必要な場合は淀川キリスト教病院の手外科専門外来にご紹介しています。

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