DISEASE DETAILS 疾患一覧
腰の痛み
側弯症(脊柱側弯症)
脊柱側弯症(側弯症)とは、正面から見て真っ直ぐであるはずの背骨(脊柱)が左右に10度以上曲がり、さらにねじれ(回旋)を伴っている状態を指します。 小児の側弯症は発症する年齢によって、9歳以下で発症する「早期発症側弯症」と、10歳以降で発症する「思春期側弯症」に分けられ、そのほとんどが思春期に発症するタイプです。
側弯症は背骨が曲がるメカニズムによって、大きく「機能性側弯症」と「構築性側弯症」の2つに分類されます。これらは進行リスクや治療方針が全く異なるため、最初の診察で正確に見極めることが非常に重要です。
機能性側弯症は、姿勢の悪さ、左右の脚の長さの違い、腰痛など、背骨以外の何らかの原因によって一時的に背骨が曲がって見えている状態です。基本的に背骨のねじれは伴いません。進行していく病気ではないため、大元の原因となっている症状を取り除くことで側弯も改善します。
一方で構築性側弯症は、背骨そのものにねじれ(回旋)を伴う変形が生じている状態です。こちらは成長とともに進行する可能性が高いため、定期的な診察による経過観察が欠かせません。進行がみられる場合には、タイミングを逃さず適切な治療を行う必要があります。
なお、この構築性側弯症のうち、さまざまな検査を行っても明らかな原因が特定できないものを特発性側弯症と呼びます。実は、側弯症全体の中で最も割合が多いのが、この特発性側弯症です。

背骨が曲がる・歪む?側弯症の症状
腰や背中の痛み(腰背部痛) :背骨がねじれながら曲がることで、背中の一部が後ろに盛り上がります。これにより、その周辺の筋肉に持続的な負担がかかり、痛み(疼痛)が生じることがあります。成人期になると、背骨の変形がさらに進むことで痛みが強くなるケースもあります。
心理的・社会的なストレス :見た目の変化が進行すると、ご自身の身体に対するイメージが低下し、心理的なストレスを抱えやすくなります。実際に、患者さんの25~43%が孤立感や抑うつ感を覚えたり、趣味や交際の機会が減ってしまったりするという報告もあります。外見へのコンプレックスから、人が集まる場所への参加を避けてしまうのは、決して珍しいことではありません。
肺機能の低下 :側弯症が重度まで進行すると、胸郭(胸の骨格)が変形して肺が圧迫されるため、肺活量などの肺機能が低下し、息苦しさを感じることがあります。
側弯症の診察とチェック方法
発見のきっかけ(学校検診やご家族の指摘)
多くの場合、学校の定期健康診断で側弯症の疑いを指摘されて受診に繋がります。また、ご家族やご友人が、姿勢の違和感や背中の膨らみに気づいて受診されるケースも少なくありません。
既往歴(これまでの病歴)の確認
側弯症の多くは原因不明の「特発性側弯症」であり、他の病気を伴わないことがほとんどです。しかし、まれに他の病気(全身疾患)の一症状として側弯症が現れることがあるため、心臓病や内臓疾患など、これまでの病歴をしっかり確認します。
視診(見た目のチェック)
背骨の変形に伴う特徴的なサインがないかを観察します。主に「左右の肩の高さの違い」「腰のくびれの非対称」「肩甲骨周辺の盛り上がり(ハンプ)」などを確認します。また、体に「カフェオレ斑」と呼ばれる茶色いシミがある場合は、神経線維腫症という別の病気が隠れている可能性も考慮します。
前屈テスト(アダムステスト)
側弯症の検査として最も一般的な方法です。両手を合わせてお辞儀をするように前屈みになることで、背中や腰の左右どちらかが不自然に隆起していないか(ハンプの有無と程度)を評価します。
※注意点:胸椎(背中)と腰椎(腰)の両方がS字に曲がる「ダブルカーブタイプ」の場合、左右のバランスがとれてしまい、前屈しても隆起が目立たないことがあります。そのため、重症化するまで気づかれないケースもあり、注意が必要です。

機能性側弯症と構築性側弯症
①機能性側弯症:脊柱が外的要因の代償として変形している状態です。そのため、外的要因を排除することで側弯が改善することがあります。原因としては腰痛、腰椎椎間板ヘルニア、股関節の変形など脚長差に起因する骨盤の傾斜などがあります。
②構築性側弯症:神経疾患や筋ジストロフィーなどの筋疾患を原因とした側弯症(神経筋原性側弯)、椎体奇形を原因とした側弯症(先天性側弯)、Marfan症候群などがあります。中でも最も頻度が高いのは特発性側弯症で、思春期特発性側弯症とも呼ばれ、側弯症の原因となる疾患がない側弯症です。背景となる疾患を治療しても側弯は改善しないため、側弯の治療が必要です。
思春期特発性側弯症の発生頻度は、女子が男子の5~7倍であり、女子の1~2%程度で発生します。側弯症の発症と進行は成長期に一致するため、女児では小学4~6年生に発症し、中学2~3年生まで進行する可能性があります。成長期が終了すると、重度側弯症以外は進行しないとされています。
思春期特発性側弯症の発症要因・リスク
思春期特発性側弯症がなぜ起こるのか、その原因は医学的にまだ完全には解明されていません。現在は、遺伝的因子と生活習慣因子が複合的に関与する多因子遺伝病と考えられています。
これまでの研究では、クラシックバレエの経験や低BMI(やせ)が側弯症患者において有意に高頻度でみられることが報告されており、これらの因子がリスクに関与する可能性が指摘されています。一方で、鞄の持ち方や重量、食事内容、睡眠時間・姿勢、勉強時間・姿勢といった日常的な生活習慣と側弯症との間には関連がないことが明らかになっています。牛乳・乳製品・魚介類・肉類などの食品摂取量についても、側弯症との明確な関連性は認められていません。
「姿勢が悪いから背骨が曲がったのですか?」とご質問をいただくことがありますが、姿勢の悪さが側弯症を引き起こすという科学的根拠はないので、ご安心ください。

脊柱側弯症の画像検査
側弯症の確定診断は、X線写真による脊柱変形の確認によって行います。正面・側面の2方向撮影が必須であり、Cobb角10°以上の側弯が確認された場合に側弯症と診断されます。
Cobb角(コブ角)は、側弯カーブの大きさを定量的に表す指標です。対象とするカーブの頭側・尾側において最も傾斜の強い椎体(終椎)を特定し、その上縁と下縁がなす角度として計測します。構築性側弯症では椎体回旋を伴うため、左右の椎弓根の形態差からも変形の程度を評価することができます。
Risser sign(リッサーサイン)は、腸骨稜の骨端線における骨化の進行度を0〜5段階で評価する指標です。骨成熟の程度を反映するため、思春期における側弯症の進行予測や治療方針の決定に有用です。なお、側面像では腰椎分離症の合併に特に注意が必要です。



腹壁反射の消失など神経学的所見に異常がある場合、男児に側弯が認められる場合、あるいは椎体奇形を伴う場合には、頸椎から腰椎にわたる全脊椎MRI撮影が推奨されます。これらのケースでは、脊髄腫瘍・脊髄空洞症・脊髄係留症候群といった脊髄異常を合併している可能性があるためです。
X線検査で椎体奇形が確認された場合、あるいは視診から神経線維腫症が疑われる場合には、CTによる椎体の精密評価が必要です。
Cobb角が80°を超える重度の側弯症では、胸郭変形に伴う肺機能の低下が生じるため、肺機能検査による呼吸機能の評価が必要となります。
側弯症の早期発見のため ~整形外科医による検診の重要性~
内尾らは学校健診において「従来の学校医による検診では脊柱側弯症の生徒が十分検出できないが、整形外科医による運動器検診によって検出率が向上する」と述べています。
本研究から学校医による健診のみでは治療の必要な重症例を含む脊柱側弯症の生徒が十分に検出されていない現状が明らかとなった.一方,整形外科医による検診では高率に検出することができたが,全生徒を検診することはマンパワーの点から現実的でない.改めて学校医や養護教諭へ側弯症検診の重要性や診察手技について啓発・教育を行うことや,一定の検診精度を担保できる計測機器の導入も検討すべきである.と述べています。
当院に受診されるお子さんも学校検診で指摘されたことはないけれども背骨が曲がっていることをご両親が気づき、診察・レントゲン検査で側弯症と診断したことが何度かあります。少しでも気になれば整形外科医の診察を受けることが重要です。

脊柱側弯症の治療
小児の側弯症治療の目的は、短期的には変形の進行を防ぎ、長期的には脊柱の変性を回避することにあります。思春期側弯症の治療法には、定期的な観察・装具療法・手術(矯正固定術)の3つがあります。なお、早期発症側弯症の治療は専門性が高く複雑であるため、診断がつき次第、速やかに専門医へ紹介することが望まれます。
定期的な観察 :側弯の進行と成長は密接に関連しています。第二次性徴期の急成長期(Growth spurt)には側弯が急速に悪化することがあるため、Cobb角20°以下の軽度な側弯症であっても、4〜6ヶ月ごとにX線検査で変形の推移を評価します。また、成人期に進行する側弯症については、長期にわたる継続的な観察が必要です。
装具療法 :骨が未成熟な時期に、観察の過程でCobb角の悪化が確認された場合、あるいは悪化が予測される場合に装具療法が適用されます。一般的にはCobb角20〜25°を目安に開始し、治療中も4〜6ヶ月ごとにX線で変形の推移を確認します。
手術 :装具療法によっても進行を抑えられず、重度の変形が続く場合には手術が必要となります。乳幼児や学童期には非固定手術(Growing rod法やVEPTR法など)が、思春期以降には矯正固定術が適用されます。矯正固定術はCobb角40〜50°以上の重度例が対象で、脊椎インプラントによる固定と骨移植による骨癒合を目指します。手術には高度な技術と精度が求められ、脊髄モニタリングやナビゲーションシステムを活用しながら安全に行われます。
専門医にご紹介するタイミング
早期発症側弯症 早期発症側弯症はさまざまな疾患が関連するケースが多く、多くは小児病院での検査をきっかけに発見されます。偶然発見された場合は特発性側弯症であることが一般的ですが、病態の詳細には不明な点も多く残っています。自然に改善・消失することがある一方、急速に進行する場合もあるため、診断が確定した時点で速やかに専門医へご紹介します。
思春期側弯症 骨が未成熟な時期(Risser 0〜3)は定期的な経過観察を行い、Cobb角が20〜25°まで悪化した場合に専門医へご紹介します。骨成熟が近い時期(Risser 4以上)であっても、Cobb角が30°を超える場合は専門医への紹介が必要です。
参考文献
・出村 諭.脊柱側弯症の病態・治療に関する研究的取り組み.金沢大学十全医学会雑誌 134(2):32-35, 2025.
・内尾 祐司ら. 脊柱側弯症検診の現況と学校運動器検診の効果. 日整会誌 J. Jpn. Orthop. Assoc. 97(3) 2023.
・渡辺航太. 脊柱側弯症. Spinal scoliosis. 小児内科 vol. 54 増刊号, 624-629, 2022.
・© 1995-2023. The Nemours Foundation.

先生から一言
当院に受診されるお子さんも学校検診で指摘されたことはないけれども背骨が曲がっていることをご両親が気づき、診察・レントゲン検査で側弯症と診断したことが何度かあります。
少しでも気になれば整形外科医の診察を早めに受けることが重要です。