整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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スポーツによる障害

腓骨筋腱障害(Peroneal tendon disorders)

腓骨筋腱障害(Peroneal tendon disorders)とは

足首の外側にある腓骨筋腱に起因する疾患概念です。腓骨筋腱は「長腓骨筋腱」と「短腓骨筋腱」からなります。長腓骨筋腱は、腓骨頭部や腓骨の骨幹部の近位外側の2/3から起こり、外果の後方から足の底を斜めに走り、内側の模様骨および第1中足骨の基部の底側に停止します。短腓骨筋腱は、腓骨の骨幹部の外側の遠位1/2から起こり、第5中足骨の基部の外側の粗面に停止します。

腓骨筋腱には、「短、長(Brevis, Longus)腓骨筋腱」があります。

腓骨筋腱は、「足の底屈、外転、外返し」の作用があります。腓骨の遠位部の後面には、腓骨筋腱の脱臼を防ぎ、安定させるための腓骨筋腱溝があります。

外果の後方では、1つの腱鞘内に両腱が存在しますが、腓骨筋腱の滑車部で別々の腱鞘に分かれます。腓骨筋腱滑車は、踵骨の外側面に存在し、短腓骨筋腱と長腓骨筋腱の間に2つの腱を分けるようにして、長腓骨筋腱が底側へ方向を変える際の支点として機能します。

長腓骨筋腱は、腱性部分が長く、外果の下から腓骨筋腱の滑車、立方骨のトンネルと急なカーブを描く部分が多いため、脱臼や狭窄性腱鞘炎を起こしやすいとされています。

腓骨筋腱障害に含まれる疾患

腓骨筋腱障害には、以下のような疾患が含まれます

①腓骨筋腱脱臼

②腓骨筋腱鞘炎

③腓骨筋腱の変性や損傷、断裂

④腓骨筋腱滑車障害

⑤Os peroneum障害

⑥短腓骨筋腱の第5中足骨付着部炎

①腓骨筋腱脱臼(Peroneal tendon dislocation)

比較的まれな疾患ですが、外傷性腱脱臼の中では最も頻度が多い外傷です。スキーやサッカーなどでの受傷が多く、足関節の背屈位での足部内転の強制や、足部が固定された状態で下腿の外旋が強制されることで受傷します。

腓骨筋の筋力が強く、遊離腱部が長いこと、そして足関節の背屈位で外果の後方で約90°の急激な走行変化があることが脱臼しやすい要因です。脱臼は、この腱を押さえている上腓骨筋支帯が腓骨から剥離したり断裂したりして生じます。外果の後方レベルでより後外側の浅層に位置する長腓骨筋腱の単独脱臼が多く見られます。短腓骨筋腱が脱臼する場合は、亜脱臼が多く、時には後述のような腱内の縦断裂を伴うこともあります。成人の腱溝形成不全を伴った外反扁平足では、非外傷性の脱臼も生じます。

新鮮な外傷による脱臼では、痛み、腫れ、皮下出血が生じます。歩行が可能なため、受傷直後に受診することは少なく、時間がたってから医療機関を受診することが多いとされます。

〇新鮮例:来院時には腱は通常整復されていますが、外側靭帯損傷とは腫れや痛み・圧痛の部位が異なり、外果の後方にあります。足関節脱臼骨折、踵骨骨折などに合併することもあり、腫れなどで見逃されることがあります。

〇陳旧例:日常生活やスポーツ動作で脱臼を起こし、痛み、脱力感、不安定感でスポーツの継続が困難となります。腱の脱臼や弾発音の自覚や再現が可能であったり、外果上に索状のものが触れる場合には、診断は容易です。随意性脱臼が可能な場合もあります。

腓骨筋腱脱臼の画像検査

新鮮例の単純X線やMRIでは、外果に剥離骨折を認めることがあります。MRIでは剥離した支帯、仮性嚢、腱の変性などの所見が見られます。CTは腱溝形成不全などの骨性の評価に有用です。3D-CTでは軟部組織の描出も良く、脱臼している腱も確認できます。超音波検査でも非侵襲的に脱臼した腱やその動態を観察できます。特に、縦断裂や破格筋による腓骨筋腱腱鞘内の亜脱臼のような病態の診断のためには、超音波による動態撮影が不可欠です。

腓骨筋腱脱臼の治療

診断が遅れた陳旧例が多く、症状があれば手術適応です。新鮮例では、外果部をパッドで圧迫した軽度の底屈位ギプスが良いとの報告もありますが、再脱臼率が高いとされます。そのため新鮮例でも、早期復帰を求めるスポーツ選手には手術を推奨するとする報告があります。

手術は、支帯の縫合や再建を行う方法、骨片や骨溝を作成することで骨性制動を行う方法に分けられます。支帯再建術には、アキレス腱を使うJones法、骨膜を使うKönig法、踵腓靭帯を使うPlatzgummer法などがあります。Das De法も仮性嚢(false pouch)閉鎖に着目した上腓骨筋支帯形成術の一つです。骨性制動術には、Kelly改良法、DuVries法に代表される骨切り移動術や、腱溝を作成するZoellner&Clancy法やKollias法などがあります。

②腓骨筋腱鞘炎(Peroneal tendonitis)

腓骨筋腱鞘炎および腱炎は、運動などによるオーバーユースで発症します。足関節の外側靭帯損傷による不安定性が関与していることが多いとされます。長腓骨筋腱鞘炎は、足の母趾列の弛緩性により引き起こされ、第1中足骨の強制背屈により痛みが出ます。MRIや超音波では、腱周囲の腫脹や腱の変性が観察できますが、走行の複雑さから判定困難なこともあります。

治療は、保存療法が基本です。スポーツ活動の制限、アイシング、消炎鎮痛剤により、軽快します。扁平足による過回内や足関節の不安定性などがある場合は、オーダーメードインソール、サポーター、テーピングも有効です。拮抗筋である前・後脛骨筋のストレッチと筋力訓練も行います。ステロイドの注射は、腱の損傷を生じる可能性があるので、行う場合は最小限にします。難治性の慢性例で、腱の変性・損傷、脱臼・亜脱臼、狭窄因子などがある場合には、手術を検討します。

③腓骨筋腱の変性断裂

短腓骨筋腱は、その走行から外果の後方で長腓骨筋腱による後方からの圧迫を繰り返し受けることや、腱の一部が外果に乗り上げるような亜脱臼が多く、ridgeが刃物のように作用して腱に縦断裂を引き起こします。滑車部での断裂もありますが、長腓骨筋腱単独損傷はそれらの部位よりも立方骨トンネルでの損傷が生じます。診断にはMRIや超音波検査時に造影検査とブロックを行いますが、腱鞘内の水腫や変性は認められますが、縦断裂は明らかにできないことも多いです。

腱の鏡視は、診断の確定と治療法の選択のために有効です。骨棘などの狭窄因子の解除、滑膜切除は可能ですが、亜脱臼を伴う腱の縦断裂の縫合などには直視下手術が必要です。

④腓骨筋腱滑車障害

踵骨の腓骨筋腱滑車が大きいことや、スキーブーツ、ハイヒール、きつい靴による圧迫で、長腓骨筋腱の狭窄性腱鞘炎、滑液包炎、外側足背皮神経障害などが生じます。靴の圧迫で滑車部直上の皮膚に脱脂を形成していることもあります。滑液包炎や腓骨筋腱炎を合併している場合は、腫脹を伴います。外側足背皮神経の圧迫がある場合は、たたくとしびれるtinel徴候を滑車部に認めます。CTとMRIが診断には有用です。治療法としては、腱の制動よりも腓骨筋腱滑車の切除および神経剥離術を行うという報告が多いとされます。

⑤Os peroneum障害

「Os peroneum(オスペロニウム)」は長腓骨筋腱が足の外側から足底に走行を変える部位、立方骨粗面において「腱内に存在する種子骨」です。種子骨って何?と思われるかもしれませんが、膝のお皿の骨と同じようなものだと思ってください。本症は頻度は高くないものの、骨折・疲労骨折・分離種子骨障害を生じることがあり、時に長腓骨筋腱の断裂を引き起こします。X線では通常より近位に転位したos peroneumを認めます。断裂の治療としては、骨の摘出を行い、可能であれば腱の端々を縫合します。無理な場合は、両断端を短腓骨筋腱に腱固定(tenodesis)を検討します。

⑥短腓骨筋腱の第5中足骨付着部炎

陸上競技やサッカーなどで、靴による圧迫が原因で発症します。ヒールパッドを入れて踵を上げることにより短腓骨筋腱にかかる負担を軽減することが有効です。通常、2週間程度で軽快します。疼痛部位が近いため、中足骨基部の疲労骨折との鑑別に注意が必要です。

参考文献)

・萩内隆司. 足部・足関節のスポーツ障害、overuse障害の克服. 臨床スポーツ医学:Vol.31, No.7/2014-7

先生から一言

腓骨筋腱障害は足関節捻挫と比べるとあまり知られていない疾患概念です。整骨院で捻挫と言われ、治療されていたけど良くならないといって来院された方が本症であったことが少なからずあります。症状が遷延する場合は整形外科医の診察を受けましょう。

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