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けが(外傷)
膝関節半月板損傷
膝関節半月板損傷(Meniscus injury)とは
膝の半月板は膝関節の中にあり、大腿骨と下腿骨の間のCの字型をした組織です。膝関節の衝撃を吸収するクッションの役割をします。半月板が損傷すると、膝のいたみ、ポップ感、引っかかり感、抜ける感覚、膝がまがったまま動かせなくなるロッキングなどの症状がみられます。半月板損傷は若年でスポーツを行っている子供から、中高年者まで幅広い年齢で見られます。
半月板の断裂形態
①縦断裂(Transverse tear)
②水平断裂 (Horizontal tear)
③バケツ柄状断裂 (Bucket handle tear)
④変性断裂 (Degenerative tear)
などの分類があります。ほかにも様々な断裂形態がありますが、本稿ではこの4つについて述べます。
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若年では前十字靱帯損傷に伴った ①縦断裂 ③バケツ柄断裂がしばしば認められます。特に前十字靱帯損傷例では長期的に内側半月板損傷のリスクが高くなるといわれています。中高年者では ②水平断裂 ④変性断裂(弁状:フラップ断裂)いろいろな断裂形態が入り混じった混合型が多くみられます。また変形性膝関節症の変化(軟骨摩耗、骨棘形成、骨嚢胞)を認めることもあります
①縦断裂
スポーツやけがによる前十字靱帯損傷に合併して多く認められる断裂形態です。中後節移行部付近から後節にかけて断裂し、脛骨側の不完全断裂から大腿骨側に次第に達して完全断裂に至ることが多いとされています。
レントゲン検査では必ずしもあきらかな異常所見はなく、MRIでは線状の縦断裂が認められます。前十字靱帯損傷と合併する損傷で,血行の良いRed-red zoneの小さな安定型縦断裂であれば保存療法のみで治癒する可能性があるといわれています。断裂部が血流の多い(半月板の修復が期待できる)Red-Red zone、Red-White zone の場合は縫うことによって修復が期待できるため半月板縫合術を積極的に検討します
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②水平断裂
半月板の後節(図を参照)に多い断裂形態、中高年の方に多いですが、若年者でもしばしば認めます。無症状の場合もあるため、診察時には詳細な問診・理学所見をとって半月板損傷を疑うことが重要です。運動時の痛み、膝の最大屈曲での痛みを伴うことがあります。MRIでは水平ないし斜め下に向かう線状の断裂像を認めます。
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水平断裂が進行してくると最終的には弁状断裂や縦断裂を合併して複合断裂となることがあります。また水平断裂の半月移行部付近が紡錘形となり,関節外に連続して半月板嚢腫(ふくろ)を形成することもあります。治療としては半月板の不要な部位の切除、もしくは切除+部分縫合を検討します。断裂した半月板がひらひらと浮動したフラップとなり、不安定な部分は切除(トリミング)します。膝関節内に自分の静脈血より作成したフィブリンクロットを注入するあらたな治療法も報告されています。
③バケツ柄状断裂
膝関節の骨の間に断裂した半月板の中央部が挟まりこむロッキングを起こし,バケツ柄状断裂となった場合は膝が突然伸びなくなるロッキングが生じます。日常生活でも突然膝が曲がったまま伸びなくなり、救急車で搬送される、というシーンも少なからず見受けられます。屈曲は伸展と比べては制限が少ない場合もあるが,多くは困難となり、ロッキングしていない場合であっても、膝のなかで何かがずれるように感じることがあります。MRIでは頼間に転位した内側半月板を後十字靱帯の前方に認めます。矢状断像では後十字靱帯が2つ存在するように見える 「Double PCL sign」を認めることがあります。手術療法では半月板縫合術がなどが検討されます。
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④変性断裂
半月板の変性(加齢などに伴う)を有する中高年者に多くみられます。肥満がリスクとなります。水平断裂が進行して,脛骨側の損傷部が翻転して発症する場合をしばしば認め、膝関節の疼痛、膝の引っ掛かり感、可動域制限などの症状が出ます。レントゲンでは変形性膝関節症の変化として骨棘形成、関節裂隙狭小化、骨嚢胞などを認めることがあります。MRIでは、半月板の変性を反映した輝度変化、半月板の一部欠損像などを認めます。
手術療法としては、縫合しても半月板の修復は期待しにくいため、半月板切除が検討されますが、切除量は最小限にすることが望ましいと考えられます。特に半月板変性が強く、O脚変形をともなう変形性膝関節症では、半月板損傷が症状の原因ではなく単なる結果となっている可能性もあり、むやみに半月板切除を行うと変形性関節症を進行させる可能性があるため、注意が必要です。
先生から一言
特に若年者における膝の半月板損傷は正確に診断されず、ただの関節炎として放置された結果、断裂部位が拡大してしまうことがあります。当院では早期にMRIを施行し半月板損傷の診断をつけ、むやみに保存治療を長引かせないように留意しています。必要に応じて速やかに手術を含めた専門治療が可能な病院にご紹介します。膝の痛み、動かしにくさ、ひっかかり感など気になる症状があれば早めに受診しましょう。