整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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肩の痛み

色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)

こんな症状があれば受診してください

・膝(股関節・足首など)が腫れたまま引かない。ぶつけた覚えがないのに腫れている
・同じ関節が何度も腫れる。重だるい・突っ張る感じが続く
・正座やしゃがみ込みがしにくくなってきた(関節が曲がりにくい/伸びにくい)
・関節の奥で「つまる」「引っかかる」感じがあり、急に動かなくなることがある(ロッキングする)
・歩くときや階段で関節の中がズキッと痛むのに、原因がはっきりしないと言われた
・はっきりした原因がないのに関節の中に血がたまる(関節内出血をくり返す)と言われた
・腫れや痛みが長引き、日常生活やスポーツに支障がある。湿布や安静だけでは良くならない

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色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)とは

色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS:Pigmented villonodular synovitis)は膝などの関節の疼痛、可動域制限、腫脹を生じる疾患です。滑膜由来の絨毛状結節性病変として知られ、特に膝関節に多く発生し、その他にも股関節、足関節、肩関節などの大関節にも発生しやすいです。関節内での発生が多いですが、腱鞘や滑液包などの滑膜を持つ部位にも発生することがあります。現在では腱鞘巨細胞腫:tenosynovial giant cell tumor(TGCT)という病名に置き換わりつつあります。

男女差はなく、20歳から40歳の年齢層に多く見られますが、10歳以下の子どもにも発症することがあります。発症から診断までに時間がかかることが多く、緩徐に進行します。

自然治癒が期待できないため、骨が侵食される前の段階での早期手術が必要です。滑膜切除、骨内の腫瘍掻爬と骨移植、場合によっては人工関節の置換も検討されます。

PVNSには「限局型」と「びまん型」の2つのタイプがある

PVNSは限局型とびまん型の二つに分類されます。限局型は、関節腔内、腱鞘、滑液包の一部に限定して増殖し、びまん型の初期段階とも言われます。一方、びまん型は関節腔内に広がりを見せ、進行すると関節破壊が生じることがあります。

色素性絨毛結節性滑膜炎の原因

従来は発生原因が不明でしたが、骨内浸潤や悪性化、クローン染色体異常などの報告があり、2002年のWHO分類ではDiffuse-type giant cell tumorと呼ばれる線維組織球性腫瘍という腫瘍の一種ではないかと考えられています。他にも炎症説、代謝異常説などが提唱されています。

色素性絨毛結節性滑膜炎の症状

関節が腫脹し、動きの範囲の制限が出ます。特に結節型では、遊離体として関節に挟まりこむことで疼痛や可動域の制限が顕著になります。また、関節内での反復する出血も見られます。しかし、限局型では絨毛形成や血管新生が少ないため、出血が少ないこともあります。さらに、限局型では有茎性腫瘤を形成し、膝関節が動かなくなるロッキング症状を呈し、半月板症状と間違うことがあります。

小児では特に診断が容易ではないため、痛みや腫脹を繰り返し、穿刺で血性であれば本疾患を疑います。

色素性絨毛結節性滑膜炎の検査

X線では、初期には関節裂隙の狭小化や骨萎縮が見られます。進行すると、多発する骨嚢胞や骨破壊像が現れます。びまん型で進行した例では、病変が骨の中へ侵入し、嚢胞状の透亮像として写ることがあります。

MRIは診断に非常に有用です。色素沈着したヘモジデリンはT1/T2強調像ともに低信号として描出され、腫瘤内部にまだらな低信号域として認められるのが特徴的です。増殖した滑膜はT1・T2強調像で低信号、STIR像では高信号として描出されます。造影MRI(ガドリニウム造影)では、増殖した滑膜の血管が強く造影され、高信号として示されます。

関節鏡で関節内を直接観察することも有用です。関節内には、茶色調の結節状あるいはびまん性の滑膜増殖が見られます。病変部を切除して病理検査を行うと、絨毛状に増殖した滑膜組織、間質の肥厚、細胞内のヘモジデリン沈着が確認されます。さらに、マクロファージやリンパ球、コレステロール結晶を取り込んだ泡沫細胞、多核巨細胞の増生といった所見が特徴的です。

当院では、MRIは提携医療機関で撮影し、その結果は当院で丁寧にご説明します。

色素性絨毛結節性滑膜炎の治療

色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)は良性の病変ですが、手術後に再発しやすいことが知られています。基本的な治療は、病変部の滑膜をできるだけ取りきる手術(滑膜切除)です。

限局型では、関節鏡を用いて病変を摘出します。特に膝では膝蓋下脂肪体付近から発生することが多く、この部位を丁寧に観察・切除することが重要です。

びまん型では、関節鏡だけでは取りきれないことが多く、関節を開いて病変や侵食部位を直接切除する手術が選択されることがあります。必要に応じて、骨が削れている部分を掻爬します。ただし、軟骨・靭帯・半月板などを傷つけずに完全切除するのは難しく、再発率は依然として高いとされています。報告では、広範囲に滑膜切除を行っても術後再発は約30%台、関節鏡で取りきれなかった場合は50%程度まで再発するという報告もあります。これは再発しやすい疾患であることを示しています。

再発がMRIで確認されても、必ずしも症状が強いとは限りません。治療は、痛みや腫れなど日常生活への影響(ADL障害)の程度を見ながら判断します。再発例や再発リスクが高い場合には、放射線治療を併用することも検討されます。

PVNSは外科的治療の適応になることが多い疾患です。当院で疑われる場合は、MRI検査も含めて、速やかに手術対応が可能な基幹病院へご紹介します。

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参考文献)

・色素性絨毛結節性滑膜炎. 関節外科 Vol.31 4月増刊号(2012)

・JOSKAS Vol 35, 364-368, 2010. びまん型色素性絨毛結節性滑膜炎に対する滑膜全切除術の治療成績

先生から一言

色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)はまず疑わないとなかなか診断できない疾患です。X線検査で明らかな異常がなくても、原因の明らかではない関節痛や動きの制限が長引く場合は本疾患を疑いMRI検査を確認する必要があります。MRIでPVNSを疑えば、速やかに対応可能な病院にご紹介いたします。

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