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骨梗塞
骨梗塞(こつこうそく:bone infarction)とは、骨の内部に血液を送る動脈の流れが途絶えることで、骨組織が壊死してしまう病態です。一般に、股関節に生じる大腿骨頭壊死などの関節近傍の病変とは区別され、主に大腿骨遠位部や脛骨近位部など、長管骨の骨幹端から骨幹部にかけてみられます。「骨壊死」という言葉は比較的小さな病変を含めて広く使われますが、「骨梗塞」は通常、このような骨幹端部から骨幹部に及ぶ広範囲の骨壊死を指します。病変は単発のこともあれば多発することもあり、画像上は内軟骨腫などの良性骨腫瘍とよく似た外観を示すことがあります。
骨梗塞の症状
骨梗塞は、骨幹端や骨幹部に広範囲に生じる場合でも、自覚症状を伴わないことが多いのが特徴です。とくに、病変が関節面に及んで陥凹や変形を生じない限り、無症状のまま経過することが一般的です。そのため、他の部位の外傷や健康診断などを契機に撮影されたX線検査で偶然発見されることも少なくありません。
骨梗塞の多くは良性の経過をたどりますが、極めて稀ではあるものの、陳旧化した骨梗塞を母地として骨肉腫や未分化肉腫などの悪性腫瘍が発生することがあるため、長期的な視点で経過をみることが重要です。
骨梗塞の原因とリスク要因
骨梗塞は、何らかの原因で骨への血流が障害され、虚血状態に陥ることで二次的に生じます。この点は、脳梗塞や心筋梗塞と同じです。
背景にはさまざまな基礎疾患や生活習慣が関与しており、代表的なリスク要因として、ステロイド薬の使用、アルコールの多飲、減圧症、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病が挙げられます。さらに、骨折や脱臼などの外傷、糖尿病や膵炎といった代謝・消化器疾患、鎌状赤血球症などの全身性疾患が関与することもあります。
一方で、明らかな既往歴や誘因が認められない症例も存在します。肉体的に負荷のかかる職業やスポーツによる日常的な身体負荷や過去の外傷が発症に関与していた可能性も示唆されています。
骨梗塞は脳梗塞・心筋梗塞とどう違うの?
骨梗塞は、骨の中の血流が悪くなって骨組織の一部が傷んでしまう状態で、仕組み自体は脳梗塞や心筋梗塞と同じ「血流障害」です。ただし、脳梗塞や心筋梗塞は脳や心臓という生命維持に重要な臓器に起こるため、突然の麻痺、意識障害、胸痛など強い症状が出て、緊急治療が必要になります。一方、骨梗塞は骨の中に起こるため、すぐに命に関わることは少なく、痛みなどの症状がほとんどないまま、レントゲンやMRIで偶然見つかることもあります。

骨梗塞の検査
骨梗塞は、初期には単純X線検査(レントゲン)で異常を見つけにくく、他の症状の精査でMRIを行った際に偶然発見されることもあります。病変が進むと、単純X線検査では、骨内に「smoke-ring(煙の輪)」と表現される境界明瞭な不規則石灰化像や硬化像がみられます。
MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す辺縁に囲まれた、地図状に蛇行する病変として描出されるのが特徴です。さらに悪性腫瘍が疑われる場合には、造影MRIや核医学検査を追加し、皮質骨の破壊や周囲への腫瘤形成がないかを慎重に評価します。診断では、石灰化を伴う他の骨腫瘍、特に内軟骨腫や軟骨肉腫との鑑別が重要となります。確定診断には病理組織検査が必要であり、壊死した骨梁、脂肪組織、不整な石灰沈着などを確認します。


骨梗塞の治療
骨梗塞は良性病変であり、診断が確定していて無症状の場合には、原則として特別な治療を行わず、保存的に経過観察するのが一般的です。一方で、画像所見のみでは悪性病変との鑑別が難しい場合や、将来的なリスクが懸念される場合には、手術が検討されることもあります。
また関節面の陥凹や変形を伴わない段階では、経過観察が望まれますが、病変が進行して関節面の変形を来し、人工関節置換術などの外科的治療が必要となった場合には注意を要します。骨梗塞部は脂肪変性により骨質が脆弱化しているため、インプラントの早期ゆるみや周囲骨折のリスクが高まる可能性があります。そのため、手術に際しては、固定性を高める目的でステム付きインプラントの使用や骨セメントによる強固な固定を検討することが推奨されます。
参考文献)
・三輪真嗣, 土屋弘行, 野島孝之. 無症状で受診した脛骨骨梗塞. 日本医事新報. 2022; (5130): 10-11.
・村山雅俊, 橋知幹, 井浩和. 広範囲骨梗塞を伴った膝骨壊死に対して人工膝関節全置換術(TKA)を施行した1例. 整形外科と災害外科. 2018; 67(3): 486-489.