DISEASE DETAILS 疾患一覧
けが(外傷)
ハムストリングス(太もも裏)の肉離れ
ハムストリング(大腿後面の筋群:大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)に起こる、筋線維の伸張損傷〜部分断裂〜完全断裂の総称です。
サッカーなど、ダッシュ・減速・切り返しが多い競技でよくみられます。ハムストリングは主に膝を曲げる(膝屈曲)、**股関節を伸ばす(股関節伸展)**働きを担います。
ハムストリングス肉離れの症状
症状(重症度の目安)
Grade 1(軽度:過伸張)
- つっぱり感、張り、運動後の違和感が中心です。
- 筋力低下や可動域制限は軽いことが多いです。
- 触ると局所的な圧痛があることがあります。
Grade 2(中等度:部分断裂)
- 痛みがはっきりして、走る・蹴る・切り返すなどで悪化しやすいです。
- ストレッチで痛む(伸張痛)、**力を入れると痛む(収縮痛/抵抗運動痛)**が明確になります。
- 跛行(びっこ)や、膝が伸び切らない感じが出ることもあります。
Grade 3(重度:高度断裂〜完全断裂)
状況によっては手術が必要になります。
受傷直後から強い痛みが出て、歩行が困難になることがあります。
断裂部のへこみや、近位の膨らみを触れる場合があります。
数日後に広範な皮下出血が出ることがあります。
ハムストリングス肉離れの原因(受傷機転)
肉離れは、筋肉が短くなりながら力を出す場面よりも、**伸ばされながら力を発揮してブレーキをかける局面(エキセントリック収縮)**で起こりやすい外傷です。とくにスプリントの終盤や減速のタイミングでは、脚の振り出しを制動するためにハムストリングへ大きな張力がかかり、損傷が生じやすくなります。
発症の背景にはいくつかのリスク因子が関与します。なかでも重要なのは、過去に同じ部位の肉離れを起こした既往で、治ったように見えても組織の脆弱性や機能回復の不十分さが残ると再発しやすくなります。また、加齢により筋腱の柔軟性や回復力が低下することもリスクになります。さらに、試合中の急な方向転換や加速・減速はハムストリングに急激な負荷をかけるため、受傷につながりやすい動作です。
加えて、柔軟性低下、筋力低下、疲労が重なると筋の耐性が落ち、損傷リスクが高まります。筋力面では、前もも(大腿四頭筋)とハムストリングの筋力バランスが崩れていると、動作中にハムストリングが過伸張されやすくなり、肉離れの誘因となります。最後に、ウォームアップ不足や体調不良などのコンディション不良も無視できません。たとえば冬は筋温が上がりにくく、夏は脱水でパフォーマンスが落ちやすいため、いずれの季節でも肉離れが起こりやすい状況が生じます。

ハムストリングス肉離れの検査(診察・画像)
ハムストリングス肉離れの治療
治療(急性期〜復帰まで)
1) 急性期(受傷直後〜48〜72時間)
- まずは悪化(出血・腫れ)を抑えることが重要です。
- RICER(安静・冷却・圧迫・挙上・医療評価)を基本にします。
- 冷却は目安として2時間ごとに20分程度(皮膚に直接当てない)
- 圧迫で腫れと出血を抑えます
- 併せて、悪化しやすい行為を避けます(No HARM:温める/飲酒/走る・無理に動く/強いマッサージ など)。
2) 回復期(リハビリ)
- 痛みが落ち着いてきたら、段階的に可動域・筋力・動作を戻します。
- 早すぎる復帰や不十分なリハビリは、再発につながりやすいです。
- 競技復帰には、柔軟性と筋力だけでなく、全力スプリントや切り返し・ジャンプなど競技特異的動作まで確認します。
3) 復帰の目安(一般的な期間)
- Grade 1:およそ3週間程度
- Grade 2:最低4〜8週間程度
- Grade 3:重症例では手術適応になることがあり、復帰まで約3か月以上を要することがあります。

参考文献)
・池田浩. 11 サッカー選手の外傷・障害「筋損傷」 (後編). トレーニング・ジャーナル. 2021;43(1):22-24.