DISEASE DETAILS 疾患一覧
膝の痛み
Hoffa病
Hoffa病とは
膝蓋下脂肪体(Hoffa’s fat pad)における機械的刺激や炎症による病態の総称をHoffa症候群と呼びます。膝蓋下脂肪体(Hoffa脂肪体)は膝関節の前方、膝蓋骨の後ろに位置し、関節の安定性を助ける役割を果たしています。繰り返される機械的刺激などによる外傷性損傷に続発して膝蓋下脂肪体が腫脹し、大腿骨と脛骨の間でインピンジメントを引き起こす状態をHoffa病といいます。
外傷性膝蓋骨脱臼の症例では、膝蓋骨直下の脂肪組織の裂傷、膝蓋下脂肪体全体の浮腫性変化、膝蓋大腿関節近傍の遊離体を高頻度に合併することが知られています。大腿膝蓋関節が整復されている場合、膝蓋下脂肪体の異常から膝蓋骨脱臼を疑うことができます。
Hoffa病の原因
長時間の立位での業務などによる膝関節への圧力や過度の使用が関与することが多いと考えられています。スポーツや激しい運動が関与すると考えられています。膝に対する外傷や繰り返しの負荷が影響する場合もあります。Hoffa病の好発年齢は、一般的に20代から30代の成人に多く見られます。膝に負担のかかる活動やスポーツを行う人々に多く発症しますが、年齢に関係なくみられることもあります。
Hoffa病の症状
膝の前部の痛み、腫れや圧痛がでます。膝を伸ばすときに痛みがでやすく、長時間の座位や膝を曲げた状態での不快感、ないし運動中に膝の不安定感を感じやすくなります。
Hoffa病の検査
血腫や浮腫が膝蓋下脂肪体に生じるため、T2強調像で低信号から高信号まで多彩な信号を呈します。病変の診断には脂肪抑制法の併用が有用です。鑑別診断の対象としては、血管腫、軟骨腫、色素性絨毛性滑膜炎、離断性骨軟骨炎や関節内骨折によって生じた骨軟骨片などが考えられます。
Hoffa病の治療
膝関節の安静やアイシング、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などによる保存加療を行います。補助的に、膝関節内へのステロイド注射が炎症を軽減するために用いられることがあります。理学療法で膝周辺の筋力を強化し、柔軟性を改善することにより症状の改善を期待できます。
慢性期には線維化、石灰化、軟骨化生などが認められ、可動制限も加わることがあります。この場合、内視鏡的切除術が適応となることもあります。
参考文献)
・スポーツ外傷・障害のMRl . 検査のコツと診断のピットフォール⑧. 膝関節一伸展機構障害.
臨床スポーツ医学:Vol,21, No.11(2004-11)