整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗鬆症外来

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けが(外傷)

Jones骨折

Jones(ジョーンズ)骨折とは

Jones骨折は第5中足骨近位骨幹部の疲労骨折で、1902年にJonesが自身の骨折の報告を行ったことにより命名されました。スポーツ選手に多く発生し、保存療法に抵抗するのみならず、手術を行ってもなお再骨折が多いと報告されており難治性です。日本人Jリーガーに対する調査では15.4%(21/136人)と高率に発生するとの報告されています。男性に多く高校生・大学生に好発します。

第5中足骨基部は第4中足骨や立方骨に強固に固定されており、繰り返すステップや切り返し動作により、足の外側から底側にかけてストレスがかかり、最終的に骨折に至ります。完全骨折の症例も大きな外力であることは少なく、自重で切り返したときに骨折することが多いです。

完全骨折症例においてX線でくちばし様の硬化像が見られるにもかかわらず、手術の前の問診でその半数以上は完全骨折になる前に痛みを感じていないことが多く、不全骨折という状態を認識することもこの疾患を知るには重要です。常に不全骨折の状況にある選手は軽微な外力で完全骨折に至ります。痛みなく経過し、いきなり完全骨折になる経過からすれば、サイレントキラーであり、早期発見をして予防を行うことが重要です。

Jones骨折の原因

カット、ステップ、ジャンプをするスポーツに多く発生し、特にサッカーで人工芝が広く活用されるようになって発生頻度が増加しています。しかし、その病態や難治性であることは一般整形外科医の中でもまだ認知度が低く、今後も広く啓発が必要と考えられます。

股関節の内旋制限がJones骨折のリスクファクターであり、内旋角度の左右差を確認します。また、爪先立ちになったときに足趾MTP関節での荷重が外側にシフトする選手は外側荷重になりやすいと言われており、骨折のリスクファクターとなります。

Jones骨折の症状

第5中足骨の外側・底側の運動時の疼痛があります。一旦休むと、痛みが次の練習までに改善することも多く、疲労骨折による痛みと認識されていないこともあります。

不全骨折の場合は外側皮質に不全骨折線が入っていても、圧痛がない場合があります。不全骨折の選手は無症状でプレーを継続し、痛みがない時期には受診しないため、検診で初めて見つかることが多いとされています。

Jones骨折の検査

他の疲労骨折の既往や、練習の環境(サッカーなどでは人工芝の利用、スパイクのポイント形状など)も確認し、その素因の排除に役立てます。凹足(回外足・内反足)の存在などは疲労骨折の素因の確認に必要です。

診断はX線検査で行うことが一般的ですが、骨折部の転位が少なく外側皮質のわずかな骨折線が見える程度のこともあります。骨折線は通常近位1/3付近の外側~底側より入るため、撮影法は一般的な足2方向=正面・斜位30°に加え、斜位60°もしくは正側面(第4・5中足骨が重ならないように指示のうえ)を必要に応じて追加するとより有用です。

CTでは転位が少なくても、明確に骨折線が見えます。補助診断として行いますが、多くの場合、吸収像を伴い、髄腔が狭小化していることが多いです。また、術前計画として全長測定によりscrewの長さを決定したりするのにも有効です。

またMRIはSTIR撮影での高輝度像は疲労骨折早期に出現するため、疲労骨折の早期発見に役立つという文献は多いです。しかし、コストも高いため、ハイレベルの選手やプロ選手などに限られることが多いです。

Jones骨折の治療

完全骨折の場合、保存療法でも時間をかければ骨癒合は望めますが、頻繁に再骨折が起こるため、競技レベルでのプレー復帰を希望する場合は、手術を検討します。手術の一番の目的は早期骨癒合による早期復帰ではなく、再骨折を防ぐことです。
Jones骨折では1984年にTorgが提唱した完全骨折の分類が使われています。近年不全骨折の病態が少しずつ明らかにされてきており、立石らはこれを改変したstage分類を報告しました。

Stage 0・Ⅰ・Ⅱにおいては、基本的に保存療法の適応となります。ただし保存療法でいったん骨癒合した症例でも、再発する症例もあり、継続した再発予防が重要です。

Stage Ⅲ(完全骨折)に至ると、手術を行うことが多いです。一度完全骨折になると、骨癒合が得られてもスポーツ活動を再開するとともに再発することが多く、スポーツ活動を継続する選手には基本的には完全骨折のタイミングで手術を行うことが望ましいです。

術式としては、わが国では現在、髄内固定術が一般的でスクリューによる固定を行います。骨折部への骨移植の有効性については結論が明らかではありません。また骨折の癒合促進のために超音波骨折治療器(LIPUS)の併用が有効です。

術後は約3カ月でのスポーツ復帰が目途となります。骨癒合前のスポーツ復帰は、遷延治癒や偽関節のリスクが高いため勧められません。手術してもなおスクリューが入ったまま再骨折をすることがあります。術後はストレッチ、周囲の筋力訓練などの再発予防リハビリテーションを必要に応じて行います。

参考文献)

・関節外科 Vol.41 10 月増刊号(2022). 第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)Fifth metatarsal stress fracture(Jones fracture). 立石智彦

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