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リウマチと関連疾患
乾癬性関節炎(PSA)
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん:PsA)は、皮膚の赤みやフケのようなカサカサ(乾癬)に伴い、関節や腱の付け根に痛みや腫れが生じる病気です。
近年では、これを単なる「皮膚や関節だけの問題」としてではなく、全身に影響を及ぼす「乾癬性疾患(Psoriatic Disease)」として捉え、総合的に治療していく考え方が主流となっています。食生活の変化などを背景に、日本でも患者数が増加傾向にあるため、決して珍しい病気ではありません。
記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)

こんな症状があれば受診してください:乾癬性関節炎のサイン
1つでも当てはまれば、早めに当院へご相談ください。
指・手の症状
・指先に近い関節(DIP関節)が腫れて痛い
・指(または足の指)が1本まるごと腫れる(ソーセージ指)
・朝、指がこわばって動かしにくい(動くと少し楽)
かかと・足の痛み(付着部炎)
・かかとの後ろ(アキレス腱の付け根)が痛い
・足の裏の踵〜土踏まずが痛い
・朝がつらい/安静でも続く
腰・背中の痛み(脊椎炎)
・腰や背中が朝に悪化して、動くと改善する
・3か月以上、腰痛が続く
皮膚・爪の変化(乾癬・爪乾癬)
・乾癬(皮膚の赤み・かさつき)
・爪がデコボコ/厚い/浮く/はがれる
(※皮膚が軽くても、関節が強く痛むことがあります)

目・お腹の症状がある方は急いで受診するようにしてください
・下痢・腹痛・血便が続く(炎症性腸疾患が関連)
・目の充血・痛み・まぶしさ・見えにくい(ぶどう膜炎)
乾癬性関節炎の症状・特徴
症状は多彩で、末梢関節炎に加えて、体軸病変、付着部炎、指趾炎(ししえん)、爪病変、皮膚乾癬といった複数の表現型が同時にみられる点が特徴です。末梢病変では、手指のDIP関節炎や、指全体が腫れ上がる指趾炎(ソーセージ指)が代表的所見です。付着部炎も頻発し、とくに踵(かかと)のアキレス腱付着部などが好発部位となります。さらに約30%で脊椎炎を伴い、朝方に増悪して動くと軽快する「炎症性腰背部痛」を訴えることがあります。
また、関節外病変としてぶどう膜炎や炎症性腸疾患(IBD)を合併することがあるほか、肥満やメタボリックシンドロームなどの併存症、抑うつを含むメンタルヘルス不調、中枢性感作に関連する疼痛の遷延などを認めることもあります。
乾癬性関節炎の原因と背景
発症には遺伝的素因に加えて免疫学的機序が深く関与しており、とくにIL-17/IL-23経路が皮疹や付着部炎の病態形成に重要とされています。25〜35歳前後での発症が多く、男女比はおおむね2:1で男性に多い傾向があります。皮膚症状が先行する例が多数(約70〜80%)を占める一方、約10%では関節炎が先行するため、皮疹が明らかでない段階で乾癬性関節炎を発症するケースも存在します。
乾癬性関節炎の検査と診断のポイント
血液検査においてリウマチ因子(RF)や抗CCP抗体が通常は陰性であり、CRPなどの炎症反応も約半数の患者様で正常範囲内に留まることです。そのため、画像診断と合わせて診断することが重要となります。
単純X線では、骨の破壊(骨びらん)と骨の増殖という相反する変化が同時に見られることが特徴です。また、MRIや関節エコーを用いることで、骨髄浮腫や滑膜炎、さらには臨床的には捉えにくい付着部炎を高い感度で検出することが可能です。
治療のゴール(T2T:目標達成に向けた治療)
乾癬性関節炎における治療の最終目標は、痛みや腫れの軽減にとどまらず、関節破壊の進行を防ぐことで患者様の生活の質(QOL)を最大化することにあります。この目的を達成するため、寛解または低疾患活動性を到達目標に据え、定期的な評価を通じて治療内容を最適化する「Treat to Target(T2T)」の概念が治療の基本軸となります。
実際の治療プロセスにおいては、基礎的な介入として症状改善に不可欠な生活指導(肥満やメタボリックシンドロームの管理)を実施します。薬物療法としては、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や免疫調節薬(MTX、PDE4阻害薬など)による内服治療を基本としつつ、病状に応じて生物学的製剤(IL-17/23阻害薬、TNF阻害薬など)による注射療法を選択します。とくに生物学的製剤の活用により、劇的な病状の改善が見込めるケースも少なくありません。これらを患者様の状態に合わせて総合的に組み合わせることが重要です。
薬物治療についてさらに詳しく
初期は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を基本とし、必要に応じて関節内ステロイド注射を併用します。多関節炎や炎症反応高値、構造的損傷などの予後不良因子がある場合は、早期からメトトレキサート(MTX)などの従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)を導入します。csDMARDsで効果不十分であれば、生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬など)へ移行し、さらに必要に応じてPDE4阻害薬やJAK阻害薬を選択肢として検討します。
近年は、関節・脊椎・皮膚など症状の分布(表現型)に応じた個別化が進んでいます。皮膚症状が強い場合にはIL-17またはIL-23を標的とする薬剤を優先し、ぶどう膜炎を合併する場合には抗TNFモノクローナル抗体の選択が推奨されるなど、治療の順序付けがより明確になっています。JAK阻害薬は有効性が高い一方で、心血管イベントや血栓症などの安全性リスクを踏まえた慎重な評価が前提となり、一般に生物学的製剤の次段階の選択肢として位置付けて検討します。
参考文献)
・辻 成佳.乾癬性関節炎.炎症と免疫.2024;32(1):44-48.
・宮川一平,田中良哉.乾癬性関節炎.日本臨牀.2024;82(8):1274-1280.
・Gossec L, Baraliakos X, Kerschbaumer A, et al. EULAR recommendations for the management of psoriatic arthritis with pharmacological therapies: 2019 update. Ann Rheum Dis. 2020;79(6):700-712.