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リウマチと関連疾患
RS3PE症候群
RS3PE症候群は、1985年に提唱された比較的新しい疾患概念です。主に高齢者の方に多くみられ、関節炎を起こす「関節リウマチ」や「リウマチ性多発筋痛症」との鑑別が非常に重要となります。病名(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema)が示す通り、治療によって治りやすい(寛解する)こと、血液検査でリウマチ因子などが陰性であること、左右対称に関節の腫れ(滑膜炎)が起こること、そして指で押すと痕が残る強いむくみ(圧痕性浮腫)を伴うことが大きな特徴です。

記事監修:曽我部 祐輔 医師 (三国ゆう整形外科 院長/日本整形外科学会認定 整形外科専門医)
RS3PE症候群の症状
主に高齢の方で、ある日突然、急激に発症することが多い傾向にあります。手指や手首、肩、膝、足首の関節に痛みや腫れが生じるほか、微熱やだるさといった全身の症状を伴うことも少なくありません。とくに特徴的な症状として、手の甲や足の甲などの末梢部分に、指で強く押すと凹みがそのまま残るほどの強いむくみ(圧痕性浮腫)が現れます。このむくみは、腱を包む組織に炎症が起きる「腱鞘滑膜炎」が原因で生じていると考えられています。

RS3PE症候群の重要な注意点:悪性腫瘍との関連
RS3PE症候群において特に注意すべき点は、悪性腫瘍(がん)の合併が多いということです。 本疾患は「傍腫瘍症候群(がんが原因で全身に引き起こされる症状)」としての一面があると考えられており、悪性腫瘍の合併率は31~54%と高く報告されています。そのため、診療においては悪性腫瘍のスクリーニング検査が極めて重要です。 特にステロイド治療の効果が乏しい(抵抗例)場合は、背後に悪性腫瘍が潜んでいないか、より慎重な検査と除外診断が必要となります。
RS3PE症候群の検査
現時点では、この疾患に対する完全に確立された診断基準はありません。そのため、症状や各種検査の結果、そして他の病気ではないことを慎重に確認しながら総合的に診断を行います。
血液検査が特に重要な検査で、炎症の程度を示すCRPやMMP-3という数値が上昇しますが、関節リウマチの特徴であるリウマトイド因子や抗CCP抗体は陰性となります。また、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が高値を示すことも知られています。
X線検査においては、関節リウマチで見られるような骨の破壊(骨びらん)は通常認められません。その代わり、関節のエコー検査を行うと、特徴的な所見として伸筋腱や屈筋腱の腱鞘滑膜炎が確認されます。
RS3PE症候群の治療
RS3PE症候群の治療の第一選択となるのは、少量のステロイド薬(プレドニゾロン換算で1日10~20mg)の内服です。この疾患はステロイドが非常によく効くことが多く、症状の改善を見ながら徐々に薬を減らし、薬を完全にやめることができることもあります。
しかし、初期の治療効果が不十分であったり、薬を減らす過程で症状が再燃してしまうこともあります。治療が難渋するケースでは、関節リウマチの治療に準じてメトトレキサートなどの抗リウマチ薬の併用が必要になります。さらに、前述した通り「悪性腫瘍(がん)」が隠れていないかの全身スクリーニングも必須となるため、本疾患の治療および全身管理は難しく、高度な専門性が求められます。
そのため当院では、この疾患を「見逃さずに早期発見する」という診断の窓口としての役割を担うことを重視しています。問診やエコー検査などを通じてRS3PE症候群を疑い次第、速やかに連携する基幹病院や専門医療機関へご紹介し、安全で最適な治療をスムーズに受けられる体制を整えております。
参考文献)
・柳下瑞希, 坪井洋人, 松本功. 類縁疾患, 鑑別診断が必要な疾患 (6) リウマチ性多発筋痛症, RS3PE症候群, 血管炎症候群, Behcet病, サルコイドーシス. 日本臨牀. 2022, 80(増刊号4), p. 274-279.
・Laidler NK, Delaney T. Remitting seronegative symmetric synovitis with pitting edema (RS3PE) with painful erythematous nodules. BMJ Case Rep. 2020;13(4):e234197. doi:10.1136/bcr-2019-234197