整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・骨粗しょう症外来・ペインクリニック

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手首・手指の痛み

STT関節症

STT関節症(手舟状骨・大菱形骨・小菱形骨関節症)は、手首の親指側にある手舟状骨(しゅうじょうこつ)、大菱形骨(だいりょうけいこつ)、小菱形骨(しょうりょうけいこつ)からなる関節の軟骨がすり減ることで発症する変形性関節疾患です。主な症状として、親指の付け根や手首周辺の痛みや腫れが生じ、瓶のフタを開けるなどの「つまむ」「握る」動作によって痛みが悪化するのが特徴です。

1968年にCarstamらによって報告された本疾患は、手首において2番目に多い変形性関節症の部位です。手関節のレントゲン写真の15〜29%で所見が確認され、50歳以上を対象とした調査(697手中63手、約9%)でも関節症の変化が報告されています。単独で発症する割合は11〜16%と推定されており、単独例で手術に至るケースは少ないものの、約40%という高い確率で母指CM関節症を合併するほか、背屈介在節不安定症(DISI)や有頭月状骨の関節症などと併発しやすいという傾向があります。

治療においては、まず安静のための装具固定やステロイド注射などの保存療法から開始して痛みの緩和を図ります。多くはこれらの治療で症状をコントロールできますが、進行して日常生活に大きな支障をきたす場合には、関節の固定術や舟状骨の一部を切除する関節形成術などの手術療法が検討されるなど、病状や合併症の有無に応じた専門的なアプローチが必要となります。

STT関節症の症状

多くの場合、手関節の橈側(親指側)に痛みを伴い、その痛みは徐々に強くなることがあります。手首の外傷歴がないにもかかわらず、親指の付け根付近(解剖学的嗅ぎタバコ入れ)に圧痛が生じることが大きな特徴です。つまみ動作や握る動作の際に痛みを訴えたり、握力やつまむ力が著しく低下したりする患者さんが多く見られ、美容師のシャンプーやヘアカット時など、手関節への特定の負荷によって疼痛が増悪するケースも報告されています。一方で、関節が動かない場合や他の手根骨で負荷が分散されている場合などには、症状が全くない、あるいは非常に軽い症状にとどまることもあります。

痛みによって、蓋をあけにくくなるなどの症状がでます

STT関節症の原因

典型的な患者層は50歳以上の高齢女性です。発生機序に関する明確な定説はまだありませんが、STT関節の主要な安定化機構である舟状大菱形骨靭帯をはじめとする靭帯機能不全による関節不安定性や、解剖学的変異、手根配列異常などが関連していると報告されています。また、重機オペレーターやドライバー、振動工具を使用する作業員、またはピアノの演奏などが発症の要因となることも指摘されています。さらに、家族性の関節過弛緩(関節が柔らかい体質)を持つ人は特に発症しやすい傾向にあります。若年層での発症は非常にまれで、通常は外傷に関連して起こります。

STT関節症の検査

診断のための検査として、単純X線検査、CT検査、造影剤を使用しないMRI検査などの画像診断が行われます。X線検査では関節裂隙の消失や骨硬化像の有無を確認し、側面像などでDISI変形(Scapholunate Angleの増大など)の有無を評価します。さらに動態撮影を行い、有頭骨の背側脱臼などの手根不安定性がないかを確認することも、その後の治療方針を決定する上で非常に重要です。身体診察においては、STT関節や周辺の靭帯・腱の圧痛、フィンケルシュタインテストのサインなどを確認します。必要に応じて手関節鏡検査が施行され、靭帯の正常性や手根骨間の開大などを直接観察して病態を詳細に把握します。ただし、画像上の所見と実際の痛みが必ずしも一致しない場合があるため、総合的な診断が求められます。

STT関節症の保存治療

治療の主な目標は、STT関節症による痛みのコントロールと、手首および手の機能維持です。初期の治療としては保存療法が選択され、関節内へのステロイド注射、経口の抗炎症薬の服用、患部の安静、そしてサムスパイカ(親指)スプリントによる固定が推奨されます。

STT関節症の手術治療(基幹病院へ紹介)

保存療法で改善が見られない場合は手術療法が検討されます。手術の選択肢としては、骨癒合が得られれば除痛効果が高いSTT関節固定術や、良好な除痛と可動域拡大が期待できる大菱形骨・小菱形骨近位切除術および靭帯形成術などがあります。さらに、手根中央関節に不安定性がない症例に対しては、舟状骨遠位部を数ミリ切除して長掌筋腱などの腱球を充填する「舟状骨遠位部切除関節形成術」が有効な選択肢となります。この術式は低侵襲で合併症が少なく、早期の職場復帰や筋力・可動域の改善が見込めるという利点がありますが、適応を誤ると術後にDISI変形が進行するリスクがあるため留意が必要です。患者さんの手根不安定性の有無や、母指CM関節症の合併の有無に応じて、最適な術式を慎重に選択することが重要です。

参考文献)

・北川光, 吉田健治, 熊谷拓也, 他. STT関節症に対して舟状骨遠位部切除関節形成術を行った1例. 整形外科と災害外科. 2025;74(3):621-624.

・Marcuzzi A, Ozben H, Russomando A. Treatment of scaphotrapezial trapezoidal osteoarthritis with resection of the distal pole of the scaphoid. Acta Orthop Traumatol Turc 2014;48(4):431-6. 

・Cobb T, et al. Arthroscopic resection arthroplasty for treatment of combined carpometacarpal and scaphotrapeziotrapezoid (pantrapezial) arthritis. J Hand Surg Am. 2011;36:413-419.

監修:三国ゆう整形外科 院長 曽我部 祐輔(整形外科専門医)

最終校正日:2026年8月5日

先生から一言

母指CM関節症は、家事などの日常生活にも支障が生じる、変形性関節症です。鎮痛薬、漢方薬、装具、注射などの治療が有効です。これらの治療で症状が改善しない場合に手術を検討します。

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